テラーノベル
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現実逃避行
いわく掲示板より
(スレ主)「『呪いの遊園地が存在した件』」
(民)「kwsk」
(スレ主)「▓▓市▓▓街の『ドリームランド(ドリラン)』が、実は呪われた遊園地だったらしい」
(民)「これは流石に嘘松」
(民)「自作自演乙」
(スレ主)「『あるもの』を持ってないと呪われるらしいんや」
(民)「さっさと教えろナス」
(スレ主)「『縺ィ縺代>』や」
(民)「でなおせ」
(スレ主)「おかしいな…ちゃんと打ってるやで」
(スレ主による証拠写真が貼られるが、文字がぼやけている)
(民)「流れ変わったな」
(民)「これもうわかんねぇな…」
(民)「呪われてると言わざるを得ない」
長期休みがやってきた。この蒸し暑い季節は家の不快感を増幅させるばかり。今までの疲れをパッと飛ばせるよう旅行の予定をたてていた。今日はその日。友達と合流して目的地に向かいながら、家の事は忘れるように駄弁りまくっている。スマホはポッケに。
小さい頃から、長期休みに入れば行っていた「ドリームランド(略称ドリラン)」というところは、面白い遊具やお店がこれでもかというほど並んでおり、何年通っても飽きが来ないtier1の遊園地。まだ言ったことがないという友達を引き連れて今年もやってきた。もう▓▓生なので親は来ていない。お金に余裕はそんなにというのはデメリットだが、家族特有のカタさがない友達との旅行はデメリットを大きく上回るメリットだ。
しかしここの遊園地、親が居た時は引っ張られていたので実感はなかったがとても迷子になりそうだ。何にせよゴチャゴチャしている。友達ともはぐれそうになる。今はまだ、しっかり手をつなぐことにした。
(主)「すまん、手を握っても?」
(2)「んだよー、『昨日好き』か?」
(3)「いっつも思うんやけど語呂悪ない?」
(4)「確かにな」
(2)「まぁ良いぜ」
(3)「ひゅ〜ひゅ〜」
(4)「やめろ…気持ち悪いぞ」
(主)「感謝するよ。これほど人がいるとな…」
(3)「迷子のお知らせかけたるわ」
(2)「だっさー」
(4)「でもそうなった時は、かけたほうが効率は上がるな」
(2)「みんなで握ろうぜ」
(3)「せやな」
(4)「ああ」
そんなこんなでぎっちり繋いで園内を歩き回った。
「(2)」はスマホでマップを開き、それを見ながら走り回っている。
(2)「あれ乗ろうぜ!!」
(3)「はやいわ…待ってぇな」
(主)「俺も…少し…」
(4)「お前ら、はぐれたいのか?」
(3)「あいつと一緒にせんとってくれる?」
(2)「まだー?」
(主)「今行く…!」
(4)「ってあれは、凄く濡れるやつでは…!?」
(3)「あはは。暑かったし丁度ええわ」
(4)「いや、自分はいい…」
(主)「貴様ぁ、逃げる気か?そうは問屋が卸さないぞ。俺も濡れたくはない。痛み分けといこう」
(4)「服の変えもないのに…!!」
(3)「安心し、この暑さならすぐ乾くわ」
(2)「これすっげぇ高いよな〜」
(3)「馬鹿と煙は高いとこ好きやもんな、納得やわ」
(2)「馬鹿じゃねぇし!お前ら高いところどうなんだよ」
(3)「怖くはないわ」
(4)「好ましくはない…」
(主)「そういうの、大好きだ」
(3)「もう一人おったみたいやね」
(4)「テストの点、こいつ(主)いいとは言えないしな」
(主)「ゔっ…」
(2)「おっ、俺らの番きたぜ〜」
(3)「はよ涼みたいわ」
(4)「ゔぅ〜…」
(主)「唸るな、怖いのか?つくづく子供じみてる」
(4)「みんな子供だろうが…」
(2)「ベルト締めたか?飛ばされても助けれねぇからな!」
(3)「ほな行きますえ〜」
一番高い所に登ったあとの少しの余裕で、見渡して次どこに行くかを考えておこうと思っている。これこそ絶叫に耐性がある人の特権だ。
(2)「くるぞくるぞ…」
(3)「いい風吹いとるわ〜」
(4)「あぁ、ああ…」
(主)(次はあれに…)
……
(4)「フっぐァゔぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙ぁあ゙ぁ゙あ゙ァ゙あ゙ァ゙あ゙あ゙!!!!!」
(2)「ひゃっほ〜〜〜〜!」
(3)「あ〜〜〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜」
(主)「はははははは!!!」
………
……
…
均等にびしょびしょになった。上半身はお陀仏だ。折角セットした髪が、とか風邪引きそうとかブツブツ言いながら歩く。
(主)「そう言えば見たいところがあるんだが」
(4)「絶叫は嫌だ、絶叫は嫌だ…」
(2)「どこ?」
(3)「全然ええよ」
(主)「感謝する。疲れたから少し鑑賞アトラクションなんてどうだろう」
(4)「!行こう」
(2)「もう一回絶叫いこうぜ〜」
(3)「ええやないの」
(4)「余計なこと言うな、(2)の野郎」
(主)「まぁまぁ、疲れたろう。絶叫には行かないよ。割とすぐそこにあるから並びに行こう」
………
(主)「お前らは、家に帰りたくないな、と思うことはないのか?」
(3)「……自分は学校楽しすぎて帰りとおない思っとるわ」
(2)「あるぜ。友だちと遊んでる時は何より楽しいし帰りたくないぜ。だけど家だってくつろげて最高じゃねぇか?」
(主)「俺はまさに今思っているところなんだ」
(4)「遊園地は人が多すぎる…」
(主)「どうせ家に帰ってもしんどいことのほうが多い。俺は俺のエネルギーに合わない量の疲労を毎日感じている。それなら、帰らないでこういったところにずうっといたいじゃないか」
(2)「病んでんのか?相談のるぜ?」
(主)「病んでなんかないさ。精神科に診てもらったわけでもないのに。それに、ここには沢山思い入れがあってな。俺には一際輝いて見える場所なんだ」
(3)「ちいこい時から通ってる言うとったもんな。そらずうっとおりたいわな」
(主)「そろそろ…着いたようだな。すぐ乗れるみたいだ、良かったな」
各々乗り込んで、互いの顔が見えなくなったら俺は笑顔を解いた。楽しい場で皆にこんな顔は見せるまい。気持ちを整理する時間が欲しくてこれに乗ることにしたのだ。構造物をぼーっと眺めながら物思いにふけっていた。
…家は本当に好きじゃない。それは自分の勝手都合な事なのだが、小さくて可愛いくらいの弟がいる。あるあるかもしれないけれど家族は弟を愛してやまない。それは俺を蔑ろにする程だった。ご飯を出してくれないとか学校に行かせてくれないとかではないが、最低限という感じがする。こうやって遊べるのはバイトを頑張っているからだ。学校に行かせてくてれるんだから贅沢言うな、と思うかもしれない。それでも家で孤立する感覚は耐え難いもの。このドリランの暖かで賑やかな雰囲気が俺を離さぬものにするのだ。この機械たちもこちらに笑顔で手を振っているではないか。何年も変わらない面子が、弟の産まれる前の幸せな家庭を思い出させる。
ほんとうに帰りたくない。
俺も自分勝手に、いきたい。
「…………」
(主)「いつ見ても『▓▓(ドリランのキャラ名)』の顔は面白いな」
(3)「いいかげんハゲも替えなあかんな」
(主)「それが良いんだろう、分かってないな」
(4)「あまり人も乗らないようだったし、修繕は後回しにされがちなんだろうな」
(2)「意外なやつ選ぶよなぁ、お前」
(4)「ツウらしいというか。挟むのに持って来いなアトラクションだった」
(主)「そうだろう。休憩できるだけでなく面白い、知る人ぞ知る穴場なのだ」
(3)「そうやね」
(主)「時に、頃合いもよろしくなってきたところで、皆に是非観てほしいものがある。ドリラン以外にも言えることだが、遊園地でパレードを観なくて何を観みるのか?侮ることなかれ、とりわけここのパレードは格別!ドリランにやってきたお客様方を完全に夢に引き込むにはコレを観なくては!!」
(2)「おおぉ」
(4)「熱烈」
(3)「よっ、待ってたで〜」
「(3)」が「(主)」の肩を思っきし持ち、バシバシ叩く。ひとり「(主)」の様子を伺う「(3)」。暗がりの中微かに「(主)」の沈む顔を目撃していた。
(3)「ほんまジブン、『ドリラン』よな?のこと余さず教えてくれるから、今人生でいっちゃん楽しくてしゃあないわ。おかげて家帰りとおない」
(主)「…楽しめてくれてるようで何よりだよ」
(3)「ちょっとええか?」
すると「(3)」は「(主)」を軽く抱き寄せ、耳元で小声で話す。
(3)「なぁ…ジブンなんかあるんやろ?家か?」
(主)「っ…急に耳元で喋るな!それと、何も…」
(3)「『おんなじ』人間ってな、自分めちゃめちゃ分かりやすい思てんねん」
(主)「は…?」
顔が離れたかと思うと、他2人に笑顔で告げた。
(3)「パレードまであとちょっとあるんやし、ちょっと『(主)』借りてくわ!」
(2)「はぁ〜?なんでだよぉ〜、告白でもするのかよ!」
(3)「ただションベンついてくだけやで」
(4)「絶対違うだろ、嘘つく顔してるぞ」
(3)「寂しがり屋のためにちょっくら案内してくるわ、おおきに!」
(2)「ちぇ、話すのが不器用な人間が残されてつまんねぇの」
(4)「喧嘩は買わない」
(2)「そこのソフトクリーム買おうぜ、あのチャレンジロングソフト」
(4)「こぼした時掃除するの俺だろ?!はぁ…お願いだからこぼさず食べてくれ」
(2)「大丈夫だって!」
………
比較的静かな木陰に並んで座って、「(3)」はいつにもなく真剣な表情でいた。「(主)」の片手をそっと握り、中断されていた話を再開する。
(3)「自分もな、家嫌いやねん。特に親が」
(主)「そんなふうには微塵も見えなかったのに…」
(3)「家で『身に着けさせられた』世渡り術や。悲しいことに自分の親は毒親っちゅうやつでな、すんごい過保護やねん」
(主)「親に構ってもらってるんじゃないか、幾分もマシでは…?」
(3)「よう言えるわ。ええことなんか1個もない。プライベートなんかないし、外出すら許さんで」
(主)「じゃあ今なぜ…」
(3)「家出やね」
(主)「?!」
(3)「流石に、5日くらいで帰ることになるやろうけどな。過保護パワーで虱(しらみ)潰しよ…捕まった後は家から出させてもらえんやろなぁ。…………普通なら、やけど」
(主)「あ…軽はずみだった、すまん…。」
(3)「自分の話ばっかしとったってしゃあないがな。ジブンどうなん?」
(主)「俺は…家族がこっちを向いてくれなくなったってだけだ。弟ばかり構って、格差が激しいっていう…」
(3)「それは…」
(主)「やはり大したことでは…」
(3)「えんらい辛かったなぁ!!泣けてまう!今までよう頑張っとったな。偉いわジブン」
強めに頭を撫で回された。誰かに久々に撫でられたので、内側の寂しさが少し溢れてきた。
(3)「ん、ジブンが泣くんかいな、あはは。胸貸すで」
今度は向かい合わせで、ぐっと抱き寄せ密着させられる。拒否する間もなく。親より断然小さい体であったがそれ以上に、心からの優しさが俺を包むには十分すぎた。
(3)「なぁ………」
強く抱きしめられる中でまた、囁かれる。とても優しい声色で。揺らぎそうになる。ここで「捨てて」しまっては変えられない。しかし、確かに「優しい」。
(主)「………………捨てる…。捨てるから…」
(3)「よう切った。これでもう大丈夫や」
今交わされた2人だけの秘密の約束をパレードを知らせる放送がかき消した。
………
「(3)」が「(主)」の手を引っ張り、2人の所に走って戻ってきた。
(3)「間に合ったわ〜」
(2)「イチャラブカップルが帰ってきたぜ!備えろォ!」
(4)「やめてくれ、うるさい」
(主)「カップル??」
(2)「あっ、ほら、きたぞ!」
輝く幻に目が眩む。数々のキャラクターがこの瞬間を支配し、誰もがこの夢に浸かっていたいと思わせる。地に足を踏み入れた瞬間まかれた種が、芽生えて、成長して、根を張り、項垂れる背筋を正すように現実にキスをして、思考を泡にする。誰一人として観客はいない。私たちの笑顔が、思いが、パレードを真の完成にする材料であるから。一役者としてこの時間を楽しんでほしい。
(主)「……………ぐすっ、うぅ…」
(3)「どぉしたん。なぁ………もう悩むことないやろ?」
(主)「(んぅ……ずびっ)、そうだが…やはり…」
(3)「大丈夫、もうじき終わるんよ。なーんもかも。心配いらへん」
(主)「…まだ…まだぁ……!」
(3)「まだ…?」
…………
………
……
(4)「楽しんだな。そろそろ閉園するだろ」
(2)「おっ、もうそんな時間かよ。やっぱ経つのってはえ〜な」
「(4)」はスマホを「(2)」に見せる。
(2)「んじゃ、みんな帰ろうぜ」
「(2)」はひとりさっさと出口に走り出す。それに続こうとするが、「(4)」はほかの2人がついてこないことに気づいた。
(4)「ちょっと待て『(2)』!…お前らはなんで来ないんだ」
「(3)」は俯く「(主)」の手を引いている。問われると「(3)」はすこし間を置いてから答えた。
(3)「帰りたくないねん」
目に光が入っていなかった。なんというか、帰りたくないという子供の駄々こねというより人生の諦めの方が近いと思った。さっきまであんなに楽しそうだったのに。ドリランなんてまた来れるだろ。
(3)「『(主)』も自分もな、家、辛いねん。やけどそこしか帰る場所ないねん。帰らなあかんねん。でもな…ここに来たら家の心配はいらんのよ。いわく掲示板のドリランについてのスレの話…知っとる?自分スマホとか持ってきてないんよ、今日はハナから帰る気無かったし。ここドリランではな、時間を確認できるもの…いわば時計やね。それを持ってこんかったらドリランに囚われるっちゅうこっちゃ。時計は現実を想起させるから、夢から覚めるためのトリガーみたいなもん。………めっちゃええ話やと思わへん?!あんな地獄みたいな家帰らんでいいねんで。時間を忘れて、自分はドリランで楽しく『生きる』んや」
訳が分からない。それって死ぬのと何が違うんだ?もう学校は良いのか?そもそもそんな話が本当なのか…?色んな考えが「(4)」の頭を巡ったが、あれを説得することは無理だと思った。手を引かれる「(主)」は……あ、こっち見た。
(主)「俺は…俺は…
………………………………………
やっぱり帰りたい!!!!!!!」
距離は少しあったけど壁は一切ないし、よく聞こえた。泣きまじりの鼻声で、心からの叫びだった。
(主)「俺だってドリランのいわくに惹かれてここに来た。命を捨てるつもりだった!!だけど……いざやるとなると、当たり前だが怖い…!親だって、可能性は残ってる!まだお父さんお母さんに会いたいという心は残ってたんだよ…!!」
ポッケにあるスマホを取り出す。
(主)「俺は夢から覚めるんだ……!!!!!!」
(3)「………チッ、捨てたんとちゃうかったん…!」
バシン!!!!
「(3)」が「(主)」のスマホをはたき落とし、踏んづける。踏ん切りつかなくてかけていた保険が、崩れてなくなった。
(主)「あっ………………………」
閉園放送は数え切れないほど繰り返された。ついに、スタッフがやってきて「(4)」、「(2)」に退園するよう催促をしてきた。
(4)「は……?あいつらには何も言わないんですか!?」
2人を指を差しながら問うたが、スタッフは首をひねるばかり。なにもない、だれもいない、と。
(2)「なんでだよ!ポンコツ!なぁ…!どけ!」
後から「(2)」がスタッフを押しのけて2人に駆け寄る。
手を引こうとしたが、すぐに無駄なあがきだと知らされた。
(主)「ああ………すまない………すまない………」
(3)「これでいいんよ。あんたもその気やったんやろ、『助かった』やん。どうせすぐに分からんなるから、まぁ今だけ泣いときいな。一人で逝くのはごめんや。寂しいもん」
(2)「くそ…くそ!都市伝説は信じてないのに…!!時計!時計だぞ、ほら!!!」
明るさ最大でスマホのデジ時計を見せる。
(3)「無駄や。1回死んだもんは帰ってこーへん。遅かったな?先々走って行かんかったらよかったのになぁ。」
「(4)」はもう出されたみたいだ。声がこっちに来る。もうそろそろ自分も引きずり出されるんだろう。
(相談に乗るって言ったのに………なんで……)
(3)「お前みたいなやつ、反吐出んねん…助けるとか話聞くとか、結局ガキにはなんも出来へん!!暖かい環境に全身置いとって、恵まれとって、こっちの何がわかるん!?嘲笑ってるん!?鬱陶しいことこの上ない!!!あのな……最後に1個ジブンに教えたるわ。1回、人生諦めるって決めた人間はな、何やっても余計凹むだけなんよ。」
泣きながら退園するしかなかった。仲のいい友達が、仲のいいと思っていた奴が、あんなふうに思っていたなんて。カゲを抱えていたなんて。
だけどもう、「(▓)」も、「(▓)」も覚えていない。楽しかったな、ドリラン。明日はなにしよう。
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