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『上ヒ嘉ぁぁぁぁぁ!!!』


東には、どう見えているんだろう。


『ぉ前と″⊇レニ彳テってナニωナニ″ょ!!!』


実際は、どんな光景なんだろう。


そんなの、どうでもよかった。


歯に引っかかった小腸をぶら下げながら向かってくる玉城も、


赤黒く染まるイチモツを揺らしながら走ってくる照屋も、


いつもの彼らにしか見えなかった。


「……イカれたのは、お前たちじゃなくて、俺の方かもな」


比嘉は足を止め、笑った。


「なあ……」


大柄な二人が、比嘉に飛び掛かってくる。


「遊ぼうぜ?」


大柄な二人が、比嘉に飛び掛かってくる。


両手にスパナとバールを持った比嘉は、それを力いっぱい2人の脳天に振り落とした。



◇◇◇◇


「やっぱお前は、簡単には死なねーよな」


脳天に重い工具を振り落とされて、それでも顔を上げたのは、照屋の方だった。


比嘉は頭蓋骨が割れているくせに、ニヤニヤ笑っている照屋を見下ろした。


「じゃあ、これはどうだよ……!」


照屋の顎先に向けて、2回目の打撃を与えた。


『ぶふっ!!」


下あごが外れたのだろうか。ブラブラとぶら下がっている顎はまるで壊れた腹話術人形だ。


「悪いな。恨むなら……」


比嘉はバールを再び高く振り上げた。


「渡慶次のアホを恨めよ!」


それを照屋の眉間に打ち込んだ。


メキッと音がして、顔が割れる。


「……はは、見せてやりてえ」


比嘉は笑った。


「お前今、超おもしれー顔してるよ……」


その笑ったうちの端に、何かしょっぱいものが流れ込んでくる。



「………ッ!!」


比嘉は両目から大粒の涙を流しながら、潰れた照屋の顔を見つめた。


「地獄で会おうぜ。照屋……!」


照屋が倒れ込むのと、比嘉が座り込むのは同時だった。


「……ッ!………!」


比嘉は倒れ込んだ2人の前に座り込みながら、手の甲で涙を拭った。



これで、ゾンビは全滅。

作戦は次のステップに行ける。


自分もサポートに回らなければ。

こいつらを本当に助けるために……。


比嘉が立ち上がろうとしたそのとき、下から手が伸びてきた。


「……ッ!!」


胸倉を掴まれたと思ったら、もう一つの手で後頭部を抑えられた。



「……んゥッ」


短い声が出る。


比嘉の薄い唇に、熱い舌が入り込んできた。


「んんっ!!」


必死で突き飛ばす。


『レよレよ……』


顔の端から溶け始めている玉城が、ニヤニヤとこちらを見上げる。


『女子きナニ″ょ、上ヒ嘉。ずっと女子きナニ″っナニ……!』


玉城は尚も比嘉の唇を奪おうと、顔に角度を付けて迫ってきた。


「ああ……」


比嘉は左手でスパナを握りしめた。


「俺もだよ、玉城……!!」


その口にスパナを思い切り突き刺す。


『了ヵ″ッ……カゞぁぁぁぁッ!!』


玉城の眼球が左右外側に開く。


「……ッ……!!」


比嘉はそれでも押し込み続けた。


ブチッ。ブチ……ッ。


スパナの先が、喉奥を突き破る感触が、手に伝わってくる。


それでも手を緩めない。

逃げようとする玉城の胸倉を、今度は比嘉が掴んだ。


『カゞぁぁぁぁッ!!』


悲鳴を体育館に響かせた後、玉城は絶命した。



◆◆◆◆


「……死んだ?」


東は二人の下敷きになるように足を投げ出して座っている比嘉に駆け寄った。


「これで、私たちのお仕事終わりじゃん!?やった!」


東は絶命している玉城と照屋を交互に見てから飛び上がった。


「じゃあ、どこかに隠れてようよ!あいつらがゲームクリアしてくれるまでさ」



「……うるせえな。まだだよ」


比嘉は目にかかった銀色の髪の毛を避けもしないで笑った。


「え?」


「まだだって」



比嘉はバールとスパナをカランカランと音を立てながら、倒れている2人の脇に転がすと、「よいしょ」と呟きながら立ち上がった。


「何のためにお前を連れて来たと思ってんだよ」


そう言いながら、比嘉は東の腰を抱き寄せた。


「え……比嘉……?」


スカートを捲り上げながら、太腿を撫でる。


「ちょっ……やだ、ここでするのぉ?」


東は頬を赤く染めながら比嘉を見上げた。


自分よりも一回りも二回りも大きな二人を倒したのは、正直、かっこよかった。


「まあもう一度くらいなら抱かれてもいいかな……なんて!」


「ふっ」


比嘉はなぜか笑うと、東のポケットの中に入っていたそれを取り出した。



「1本ちょうだい?」


「は?」


東は比嘉を睨んだ。


「もしかしてそれが欲しかっただけ?」


「そーそ」


比嘉はそう言うと、1本咥えておいしそうに吸い込んだ。



――なんだ。期待して損した。


東は口を尖らせた。



「ガキの頃さ」


そんな東を振り返りもせず、比嘉は白い煙を吐きながら言った。


「煙草の真似するとき、吸い込むんじゃなくてプハーって吐き出してたよな」


「そう?覚えてない」


東がそっけなく答えると、比嘉は振り返って東に顔を寄せた。


「煙草は吸うものです。おわかり?」


「わかるわ。そんぐらい」


東が睨むと、比嘉は東が持っていた電動のこぎりを触った。


「のこぎりは切るものです。アンダースタン?」


「――は?」


東は比嘉を見つめた。


「まあ、こうなるかなとは思ったんだよ。2人相手に無傷はないだろーなって」


比嘉はそう言いながら尚も煙草を吸い続けた。


「でもキスされるとは思わなかったなー」


かき上げた銀色の髪の毛の下の目が、金色に光った。



「……比嘉……あんた、感染して……?」


金色の2つの目が、東を見つめた。



「――俺を殺せ。東」



「やだよ……!どうして私があんたを殺さないといけないの……!」


東は比嘉を見つめた。


「そのために連れて来たんだって言ってるだろ。俺が二人を。お前が俺一人を。シンプルな話だって」


そう言いながら比嘉は自分の胸にノコギリの刃を押し付けた。


「無理だよ……。できない……!」


東は首を振った。


「出来ないじゃねえ。やるんだよ」


比嘉は東の指ごとスイッチを押した。


シャカシャカと刃が動き出す。



「ウガアアアアアアアッ!」


自らの胸元に刃を押し付けた比嘉が悲鳴を上げる。



比嘉の白シャツが真っ赤に染まっていく。


「いや…!!無理だってぇえええ!!!」


東は目をきつく閉じた。



「だって私……!比嘉のこと……!ずっと好きだったんだから!!」


――!?


東は目を開けた。


――私、今、なんて言った……?



「東……」


頭上から掠れた声が聞こえてくる。



「……たのむ」


真っ赤な両手で、東は顔を包まれた。



「――!!」


その頬に比嘉の温かくて柔らかい唇が触れる。



「自分じゃ……死ねねえ……!!」



「――ッ。――っ!!!」


東は電動のこぎりを掴んだ手に力を込めた。



「うわああああ!!!」


体育館に東の割れた叫び声が反響する。



倒れた玉城の金髪が跳ねた血飛沫に染まっていく。


のびた照屋の白シャツに赤い斑模様がついていく。



「………ッ!」


ノコギリの先端が、肋骨を削りながら比嘉の背中を貫通した。



その衝撃で比嘉の身体が仰け反る。


「………ッ……っ!」


比嘉は体勢を整えると、東の頭に手を置いた。



「……よく、できました……」


「……比嘉」


「あっちにもどったら……抱いて……やる……」



バタン。


比嘉は東の目の前に倒れた。



バチンッ。


その瞬間、体育館の照明が落ちた。



「何……?今度は何よ……?」


東は電動ノコギリを握りしめたまま、真っ暗な空間に視線を走らせた。



『!!!!! FEVER TIME !!!!!』


突然太い男の声が響き渡り、軽快な音楽が始まった。


『Fu~~~!!!!』


暗かった体育館は、いつの間にか電飾が施され、色とりどりの電球が光り出した。



♪lifting up your skirt yourself

fuck yeah, I noticed it

snuggle you so hard and

reached your inside,and touch it♪


男性の歌が聞こえ始め、それに合わせて電飾が色を変える。


♪You denied me, but I can feel you

so fucking dripping wet♪


まるでクリスマスのような。

まるでフェスティバルのような。


――ああ、これが……。


東は電飾に彩られた体育館を見上げた。


――渡慶次が言ってた、誕生日パーティー?



「…………」


東は倒れ込んだ比嘉の隣に座った。


そしてその頭の下に、自分の膝をすり込ませた。



「綺麗だね。比嘉……」


少し開いた比嘉の口から、コポッと小さな音を立てて血液が垂れた。


ドールズ☆ナイト

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