テラーノベル
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僕は深く息を吸い込み、繋がれたままのしゅんの手を、今度は自分の意思でぎゅっと握り返した。
「しゅん。俺、しゅんの事が好き……。でもね?」
「……うん」
しゅんは僕の真剣なトーンを察して、静かに、けれど優しく次の言葉を待ってくれる。
「もう少しだけ、待っていてほしくて。…俺、強くなりたいの、」
「強く……?」
「うん。しゅんに守られてもらってばかりじゃ嫌なんだよ。俺もしゅんを幸せにしたい。そして、しゅんの横に胸を張って立ちたい。しゅんに相応しい人間になりたいの」
「……それは、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しいわ」
しゅんは愛おしそうに目を細めたけれど、すぐにどこか心配そうに眉を八の字に曲げた。
「でも、じゅうはもっと自分に自信もってええんよ? じゅうは今でも、俺にとっては誰よりも素敵なんやから」
「しゅんはいつもそう言ってくれるけど、俺は……俺自身を少しでも好きになりたいの。じゃないと、しゅんの真っ直ぐな愛の前にいるのが申し訳なくなって、いつか自分が苦しくなっちゃう気がするんだよね。自分勝手な理由でごめん。でも、絶対に強くなって、胸を張ってしゅんのところに戻ってくるから。だから、もしその時も、俺の事好きでいてくれるなら……」
「俺の気持ちは、これから先もずーっと変わらんよ?」
僕の不安を遮るように、しゅんが力強い声で微笑んだ。
「だって、10年やで? ここまでずっと片想いしてきたんやから、今更いくらでも待てるわ! それに、自分の好きな気持ちをこうして隠さず、じゅうに伝えられるだけでも、今の俺は幸せすぎるんやから」
「……ずるくて、ごめんね」
自分を好きになるまでの時間を待ってほしいだなんて、あまりにも都合が良すぎる。
そう俯く僕の顎を、しゅんが指先でクイと優しく上を向かせた。
「ずるくなんてないで? だって、俺は待っててええんやろ? いつか、じゅうからの返事が貰えるんやろ? むしろ未来に楽しみが増えて、めちゃくちゃ嬉しいわ! ――あ、ちなみにやけど、その間も、普通に一緒にいてもええんよな?」
「う、うん……しゅんが良いなら、これまでと変わらず一緒にいたい、けど……」
「そんなん最高やん!!! これまで通り、いや、これまで以上に俺がじゅうを全力で守る! 一番近く、誰よりもそばでな!!」
「ふふ、ありがと……。俺、絶対に強くなるから。待ってて?」
「うぅ……っ、じゅうちゃん、ありがとう! 俺、ずっと待ってるからな? 大好きや、世界で一番!」
「あ、あり、がと……っ//」
突然のデカすぎる愛のストレートに、僕はまた顔が熱くなる。
でも、しゅんは急にいつもの真面目な顔に戻ると、僕の目をじっと見据えて、大切なことを含めるように優しく言葉を足した。
「あとな? 強くなりたいって思うのは凄くいい事やけど、その間も、俺にはちゃんと甘えて、頼ってな? 無理にひとりで強くならんでも、俺がこうしてすぐそばにいるんやから。
……それだけは、絶対に忘れんといて?」
「うん……ありがと、しゅん」
彼を好きになって、本当によかった。
心から、そう思った。
かつて僕を襲ったあの暗闇の地獄も、身体に残る醜い傷跡も、この人がくれた温もりと光の前では、もう僕の未来を縛る呪いなんかじゃない。
僕は強くなる。
強くなって、自分のことも、この傷のことも全部愛せるように。
そして、今度は僕の手でしゅんを世界一幸せにするために、彼の横に堂々と立つんだ。
彼への「大好き」の気持ちが、僕の生きる新しい光に変わっていく。
「よーし!まずはこの旅行、めっちゃ楽しむで!!」
そうだ。
僕たちの北海道旅行はまだ始まったばかりだ。
しゅんの言葉を聞いてやりたいことがどんどん浮かんでくる。
大浴場に行ってゆっくりサウナにも入りたいし、美味しい夜ご飯をたくさん食べて、夜にはあの夜泣きそばとアイスクリームの計画だって待っている。
「よーし!!大浴場もサウナも岩盤浴も全部行くぞー!」
「お、切り替えはやいな!ええでぇ~!!よっしゃ、俺が最高のサウナの入り方、じゅうに仕込んだるからな!」
そう言って、いつもの眩しい笑顔に戻ったしゅんが歩き出す。
彼の広い背中を追いかけながら、僕はこれからの時間が楽しみで仕方がない自分に、胸の奥で小さく微笑んでいた。
to be continued……
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