テラーノベル
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気持ちを切り替えて、大浴場のサウナと岩盤浴に向かう。
「じゃあ行こ?」
「うん! …なぁ、手は繋いでもいいん?」
舜太はどこか遠慮がちに、上目遣いで許可を求めてくる。
僕は彼の問いかけに言葉で答える代わりに、自分から彼の大きな手をぎゅっと取って、廊下に向かって歩き出した。
「じゅう〜〜〜!! へへ、へへへぇ〜〜」
繋いだ手のひらから、彼の限界突破した喜びがダダ漏れで伝わってくる。
「ちょっと、何その締まりのない反応!」
「だって幸せなんやもん!! こんなん幸せすぎる!!!」
「もうわかったって〜!」
まるで、待ちに待った散歩に連れて行ってもらう大型犬のわんこみたいだ。
分かりやすくて、単純で、かわいい。
地下の大浴場へと向かい、楽しみにしていたサウナと岩盤浴をゆっくりと楽しんだ。
じわりと熱い空気に包まれながら、サウナ室の中では、お互いのこれまでの話をぽつり、ぽつりと言葉を交わした。
僕の知らない彼の10年間を知れるのが、純粋にすごく嬉しい。
それと同時に、僕の過去も、今のありのままの姿も、全部彼に知ってもらえることが、こんなにも心地よくて嬉しい。
いい汗をたくさんかいて、身体の芯からすっきりと軽くなる。
湯上り処では、楽しみにしていたサービスの無料アイスキャンディーもしっかりといただいた。
僕は甘酸っぱいりんご味、彼は鮮やかなオレンジ味。
冷たいアイスを口に含みながら、僕は隣の彼を見つめた。
「しゅんといると、本当に楽しい」
「っ、嬉しいこと言ってくれるやん、じゅう!」
「へへっ」
「……あかん、急にお腹空いたなぁ」
「朝、あんなにいっぱい食べたのにねぇ」
「昼食べてへんしなぁ。今日は早めにご飯会場行こうや?」
時計を見ると、夕食の開始時間まではあと30分くらいあるようだった。
「あと30分くらいかー。お部屋に戻る前に、ちょっとお庭でも歩いてこよ?」
「ええやん! お天気やもんなぁ。じゃあ俺、部屋に上着取ってくるわ!」
「あ……俺も一緒に行く」
しゅんが部屋に引き返そうとするのを引き留めるように、僕は彼の浴衣の袖を掴んだ。
「……そうやんな? こんなかわいい天使が一人でロビーにいたら、何が起こるか気が気じゃないわ! ごめんごめん!!」
「いや、違う。……ただ、離れたくないだけ」
「おっと……。はぁー、ほんま言ってくれるやん……!!」
「もう、いいから早く行こ!」
「あかん、俺の心臓がいくつあっても足りひんわ〜!」
しゅんは顔を真っ赤にして頭を抱えている。
彼のおかげで、僕は今、こんな風に普通に笑えて、この旅を心から楽しめている。
本当に、良かった。
もう、さっきみたいな変な空気にはしたくない。
せっかくの、しゅんと2人での旅行だもん。
残りの時間も全部、全力で楽しまなくちゃ。
部屋まで二人で上着を取りにいき、それを羽織って外の庭園へと出た。
時刻はもうすぐ17:00をまわるところ。
北海道の秋の日は短く、辺りはすでに静かに暗くなり始めていた。
日中はあれほど暖かかったのに、今はもう、吹き抜ける風がだいぶ冷たい。
「ちょい寒いなぁ」
「でも、風が気持ちいい〜!」
「ほんまやなぁ。これ、夜になったら星もめちゃくちゃ綺麗に見えそうやな」
「確かに~ あとで一緒に見に来よ?」
「賛成!!」
「あ、でも露天風呂からも綺麗に見えるか!」
「じゃあ、今日はゆっくり露天風呂に入って星を眺めて……あ、そのあと絶対に夜泣きそばな!!」
「ふふっ! まだまだ楽しみがいっぱいだね」
「へへっ!したら、そろそろご飯行こうや。じゅうのお腹が盛大に鳴り響く前に!」
「もうっ! いじんないでよ~!でも早く行こ!」
手を繋いだまま、冷たい空気のなかでお互いの体温を確かめ合うようにして、僕たちはほかほかの湯気を立てる夕食会場へと、足早に向かっていった。
to be continued……
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