キュイ視点
「キュイ様、夜の森はとても危ないです。良く道を知っている人でも道に迷ったりしますし、触るだけでも危ない毒草も自生しています。それに夜型の大きな動物たちが活発になりますから下山は明日、日が昇ってからに致しましょう?」
フィオちゃんはすごく心配そうな顔をして僕を見ていた。いつもは気持ちが顔に出ないフィオちゃんなのに珍しい。それだけ心配してくれてるのかもしれない。
「そうだね。フィオちゃんの方がこの森については詳しいだろうから、フィオちゃんのいう通りにさせてもらうよ。フィオちゃんに家まで送るなんて言ったのに泊めてもらうことになっちゃってごめんね。」
僕の言葉を聞いてフィオちゃんはホッとした顔を緩ませる。普段見れない穏やかな表情に見入ってしまいそう。
「いえ、わたしが初めに説明をしっかりしなかったのが良くありませんでした。こちらこそごめんなさい。」
「謝らないで。たぶん最初からしっかり説明してもらってても、お家に送るって言ったと思うからフィオちゃんのせいじゃないよ。」
「ありがとうございます。 あ、中へどうぞ。今の季節はまだ夜は寒くなりますから。」
「うん。ありがとう。おじゃまさせてもらうね。」
そう言って僕はフィオちゃんのお家に一晩泊めてもらうことになった。
家の中に入ると、薄暗い部屋に窓から外のぼんやりとした明かりが差し込んでいた。
「今、明かりをつけますね。」
そう言ってフィオちゃんは慣れた足取りで薄暗い部屋の明かりを付ける。
「おじゃまします。」
明るくなった部屋はダイニングテーブルが置いてあり、その奥にはキッチンがあり、部屋の奥には2階へ上がる階段も見える。
「どうぞ。こちらに。」
フィオちゃんがテーブルの脇に置かれた椅子を引いてくれる。
「ありがとう。」
フィオちゃんは手際良くカチャカチャとお茶の準備をしてくれていて、くるくると良く動いている。
「お口に合うかわかりませんが、よければどうぞ。わたしはお部屋を準備してきますので、少し席を外します。」
「ありがとう。なんだか悪いな。何か手伝えることがあったら言ってね。
「はい。」
そう言ってフィオちゃんは2階の階段を上がっていった。