その夜雨は激しく降り続いていた。
湊のアパートのチャイムが鳴る。
「どうしたんだよ!ずぶ濡れじゃねーか!」
そこには傘もささず全身雨に濡れたシンが立っていた。
「湊さん。さっき桐原先生と一緒にいましたよね?」
「膝の事でお世話になったからな。お礼がてら飲みに行っただけだ」
「それだけですか?」
「それだけって、それ以外に何かあんのか?」
「……」
「とりあえず風邪ひくから上がって風呂入れ」
シンの背中を押し中へ入るように促す。
シンは湊の腕を掴むと
「風呂。一緒に入ってください…」
「またわけわかんねぇ事を…」
「桐原先生の事どう思ってますか?」
シンの服からは水滴が滴っていた。
「はあ?話は後できちんと聞くからとりあえず風呂入って温まってこいっ!」
「……」
何も言わずシンは中に入ると風呂場に向った。
「おい…着替え出しといたろ…?」
扉が開くと、シンが上半身裸のまま立っていた。
「俺の裸見てもなんとも思わない?」
シンの目つきは明らかにいつもと違っていた。
「何言ってんだよ!風邪ひくから早く服着ろっ!この大雨だから今日は泊めてやるっ」
「……」
「どうした…?」
「肩なんか組んで楽しそうにして…」
独り言のようにシンが呟く。
「おぃ…シン…?」
「こっちはどんな気持ちで……」
シンは、湊に近づくと両手を掴みベッドに押し倒した。
「シン!何やって…」
仰向けになった湊の上にシンが馬乗りになる。
「ずっと気になってた…」
「何をだよ!」
「あいつ、俺に『新しいセフレ』って聞きましたよね?あれ、どういう意味ですか?」
「……聞きまちがえじゃねーのか…」
「誤魔化さないでください!」
「とりあえず、どけっ!」
「あいつと……寝たんですか?」
「……!」
「湊さんっ!!」
「……」
「………答えて…湊さん…」
絞り出すような声で湊に尋ねる。
湊はシンから目をそらし苦しそうな表情をすると観念したようにゆっくり口を開く。
「……寝たよ」
その言葉にシンの怒りが頂点に達した。
「!!」
シンは湊の両手を片手で掴むと反対の手でシャツをまさぐる。
顔を湊の肩に顔を埋め首筋に唇を這わせた。
「やめろっ!シン!」
身動きが取れない湊は出来うる限りの抵抗をする。
「あんたあいつと寝たんだろ?なら俺と寝ても…」
「そーじゃないっ!確かにあん時の俺は誰でも良かった…」
「だったらっ!」
「でも今は違う!!」
湊は眉を寄せ辛そうな顔をする。
「好きな人…いるんですか…?」
「………教えない…」
湊は横を向く。
「…桐原先生…?」
「なんでだよ!」
「最近仲良くしてるみたいですよね?」
「だとしても、桐原先生じゃない」
「俺の知らない人ですか?」
「……」
「また…黙るんですね…」
煮えきらない湊の態度にシンはムカついていた。
いっそこのまま………
シャツをめくり上げ露わになった湊の身体に唇を這わせていく。
「……シン!」
「他の奴にあんたを取られる位なら俺があんたを奪い取る…」
「やめろって!」
「やめない…」
「ふざけんなよっ!シン!」
「……」
「離せっ!!」
「そんなにイヤ?俺に触られたくない?」
「……っ」
どんなに抵抗しても、シンの力に叶わないと悟った湊は身体の力を抜き抵抗するのをやめた。
「……好きにしろ………」
その声は今までシンに向けられたどの声よりも冷たかった。
「……」
「どうした?ヤらないのか?」
「……」
「貞操なんてとっくに捨てた汚ねぇ身体だ…今更守ってますなんて綺麗事は言わねぇ。お前の好きにすればいい…」
「なんで…なんで自分の事そんなに卑下するような言い方すんだよ!」
「事実だからだよ…」
抵抗するのをやめ、ただ寝そべっているだけの湊の姿にシンは罪悪感がこみ上げてきた。
「ちがう…」
自然と瞳から涙が溢れた。
その涙は湊の頬に落ちた。
「シン…?」
シンは掴んでいた湊の手を離す。
「違うんだ!俺はあんたの身体だけ欲しいんじゃない!!」
「……」
「あんたの心も全部!…全部……俺は…湊晃の全てが欲しいんだ!!」
「……シン」
シンは立ち上がり湊に背を向け
「ごめん…湊さん…隣のソファー借ります」
部屋から出ていった。
次の朝。
湊が目を覚ますとそこにシンの姿は無かった。
テーブルにはシンからの置き手紙があった。
昨夜はすみませんでした。
約束の日まで
もう会いません。 慎太郎
「ふざけんな…………同じ字で……真逆の言葉書いてんじゃねぇよっ!!」
手紙を握りしめ、机に拳を叩きつける。
湊の記憶がフラッシュバックする…
もう…限界だ…。
【あとがき】
続きは書け次第投稿します。
コメント
10件
最高です😭👏🏻✨ 頑張って下さい💪(๑•̀ㅂ•́)و✧
えぇ。。。涙がポロポロ出てきた…