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#異世界転移
花月夜れん
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ユキ
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第72話、読み終わりました……。 「写真を撮る理由がちゃんと写真に出てる」って言葉、すごく刺さりました。技術だけじゃなくて、その人が何を伝えたいかが大事なんだなって。湊くんが自分の気持ちを言葉にできた瞬間、ちょっと泣きそうになりました。紬ちゃんの「好きだよ」も優しくて、ああいう一言って本当に力になるよね。夏の終わりの空の写真、素敵だったな。一歩先、見えた気がします📸🌙
第七十二話 一歩先の景色
「誰かに見てもらうことで、初めて気づける自分もいる。」
八月の終わり。
夏休みも、もうすぐ終わろうとしていた。
湊は朝からパソコンの前に座っていた。
画面には、これまで撮ってきた写真が並んでいる。
イベントで撮った写真。
街で撮った写真。
家族の写真。
そして、何気ない日常を切り取った写真。
その中から数枚を選び、フォルダにまとめていく。
今日は、写真を見てもらう日だった。
先月参加したイベントで
知り合った写真関係者から、
「一度、君の写真をまとめて見せてほしい」
そう声をかけてもらったのだ。
嬉しかった。
でも、それと同じくらい緊張していた。
今まで、写真を撮ることは好きだった。
誰かに見せることもあった。
けれど、自分の写真を
本気で評価してもらうのは初めてだった。
「……大丈夫かな。」
最後にもう一度写真を確認する。
そして、パソコンを閉じた。
待ち合わせた場所は、小さな写真スタジオだった。
中に入ると、一人の男性が待っていた。
「久しぶり。」
「お久しぶりです。」
湊は少し緊張しながら挨拶する。
「じゃあ、見せてもらおうか。」
「はい。」
湊は写真を一枚ずつ見せていった。
男性はすぐに感想を言わなかった。
写真をじっくり見ている。
湊はその沈黙が少し怖かった。
自分の写真には、まだ足りないものがある。
それは分かっている。
でも、何が足りないのかまでは分からなかった。
しばらくして、男性が口を開いた。
「君は、人を撮るのが好きなんだね。」
「……はい。」
「でも、ただ人を撮りたいわけじゃない。」
湊は顔を上げた。
「その人が、その瞬間に何を感じていたのかを残したいんじゃない?」
その言葉に、湊は驚いた。
まさに、自分がずっと考えていたことだった。
「……そうです。」
男性は一枚の写真を指差した。
イベントで撮った、笑っている親子の写真。
「これ、いいね。」
「ありがとうございます。」
「技術的には、まだ伸ばせるところがある。」
湊は少しだけ俯いた。
やっぱりそうだ。
「でも。」
男性は続けた。
「写真を撮る理由が、ちゃんと写真に出てる。」
「それは、すごく大事なことだよ。」
湊はその言葉を何度も頭の中で繰り返していた。
撮影が終わって外に出る。
暑かった夏の空気が、少しだけ涼しくなっていた。
駅までの道を歩きながら、今日の話を思い出す。
技術はまだ足りない。
知識も足りない。
経験だって足りない。
でも。
写真を撮る理由は、自分の中にある。
それだけは、
少し自信を持っていいのかもしれない。
駅に着く前に、スマホが鳴った。
紬からだった。
『今日どうだった?』
湊は少し考えてから返信する。
『写真、見てもらった。』
すぐに返事が来る。
『どうだった?』
『まだまだだって。』
少しして、
『でも、もっと頑張りたいって思った。』
送信する。
紬からはすぐに、
『それならよかったじゃん』
と返ってきた。
そして、
『湊の写真、私は好きだよ』
その一言を見て、湊は足を止めた。
何度も見返す。
「……ありがとう。」
誰もいない道で、小さく呟いた。
その夜。
湊は今日見てもらった写真をもう一度開いた。
今までなら、
褒められた部分だけを思い出していたかもしれない。
でも今日は違った。
「技術は、これから伸ばせばいい。」
そう思えた。
写真を撮り続けていれば、少しずつ上手くなる。
知らないことを学べばいい。
失敗したら、次に活かせばいい。
大切なのは、
自分が何を残したいのかを忘れないこと。
湊はノートを開いた。
以前書いた一行の下に、新しい言葉を加える。
「技術を身につけて、自分の想いをもっと伝えられる写真を撮る。」
ペンを置く。
夢が、少しだけ具体的になった。
窓の外を見る。
夏の終わりの空。
夕暮れの色が、ゆっくり夜へ変わっていく。
湊はカメラを持った。
今日の空も、今日しか撮れない。
——カシャッ。
一枚。
そして、写真を確認する。
昨日より少しだけ、先の景色が見えた気がした。
📷 Photo.072「一歩先の景色」
撮影日:8月28日
まだ足りないものはたくさんある。
それでも、
「もっと知りたい」と思えた。
その気持ちがある限り、
きっとまだ先へ進める。