この作品はいかがでしたか?
39
この作品はいかがでしたか?
39
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第8話:「決心」
その夜、涼もまた一人で自分の部屋にいた。机の上には教科書が散らばっているが、彼の目はそれをまったく見ていなかった。何度も何度も、昨日の会話が頭の中で繰り返されていた。
「奈子が好きな人って、俺じゃないんだよな。」
涼は静かにそうつぶやきながら、窓の外を見つめた。夕焼けが空を赤く染め、暗くなる前のほんの少しの時間が、なんだか余計に寂しさを引き立てていた。
彼もまた、自分の気持ちに気づいていた。ずっと幼馴染として一緒に過ごしてきた奈子に、特別な感情を抱いていることを。でも、その気持ちをどう表現すればいいのか、どうすればいいのか、涼は全くわからなかった。奈子が他の誰かを好きだという事実もあり、涼はその気持ちを告げる勇気が出せずにいた。
ガチャ
「涼〜?暗い顔してどうしたの?」
俺の姉ー姫夏が勝手にはいってきた。
「ノックして、って言ってんじゃん」
「彼氏フッた」
唐突。は?まじ。
「なんか私のことにいちいち口出してくるから無理になって」
ケラケラと笑う。笑うとこ?
「向いてないかもなー私」
「確かにそーかも」
「ちょっと〜?そこは否定するべきよ〜💢」
今日は姫夏が元気なさそうに見えた。
「それより、涼と奈子ちゃんお似合いじゃん」
は…?ポロッとこぼれた言葉が丸聞こえ。
「だってー?覚えてる?涼幼稚園の時さー『奈子ちゃんのお婿さんなる!!』とか言ってカッコよくなるだの毎日うるさかったのよ?」
「それ俺言ってた?」
恥ずかしさがこみあげてくる。
「顔に書いてあるよ、奈子ちゃんが好きですって」
「はっ、はあ!?」
そ、そんなこと…
「奈子ちゃんとられるよ〜?じゃ、おやすみ」
結局姫夏のペースにやられた。
明日。明日、絶対奈子に告る。
俺はそう密かに決心したのであった。