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彼の大きな手が、私の胸を覆う。その温もりと、その愛撫に思わず体が大きくしなった。
「可愛いね」
私の慣れていない様子に、彼が笑った。そして覆いかぶさっていた身体を起こすと、ジャケットを脱ぎ、ソファに投げた。
そして袖口のボタンを外す。そんな仕草さえ絵になる。
いつの間にか、淡い月の光の中、目が慣れてしまっていた。
浮かび上がるデイビットさんの上半身。引き締まった筋肉は、私の丸みのある体とは全然違った。
「貴方を一目見た時から、こうしたいと思っていました」
固まっている私の唇に触れながら、彼が言った。
「貴方を抱きます。――私に一夜、貴方をください」
真っすぐで、嘘偽りなんて感じない。
日本語で話してくれるから、飾らないシンプルな言葉ばかりだ。
「わ、私、初めてで、何もわからないで、す」
恥ずかしくなって両手で顔を覆い隠すと、彼は笑わなかった。
「その方が、嬉しい。私をずっと待っていてくれたんですね」
覆い隠していた両手を掴まれ、顔から離されると彼の顔が近づいてきた。
触れる唇。確かめるように何度も角度を変えた口づけ。
数回目のあと、温かい舌が侵入してきた。
「んっ」
上手く息ができなくて、声が漏れる。
苦しいのに、身体が甘く切なくなるのはどうしてなんだろう。
デイビットさんは、初めてだと泣く私を優しく抱いた。奉仕するように、一つ一つを丁寧に、そして暴いていく。足のつま先から、髪の毛一本まで丁寧に丁寧に扱われる。
彼の指が、唇を撫でた後、肌を這い、――私の下着の中へ入ってくる。
馬鹿な日本人の一人だと思われているかもしれない。言い寄って来る日本人の一人でしかないかもしれない。でもそれでもいい。この人は少しだけ、鳥かごから出して外を見せてくれたのだ。
初めてを知らない人に捧げるぐらいなら、金髪碧眼の王子様に捧げてもいいじゃない。一夜だけ、賭け事にノッて、魔法をかけられた気分に浸っても。
「まだ、怖い?」
緊張している私に、指を動かしながら聞いてくる。
「こ、ひゃ、ぁっ……こ、怖い、です、んっ」
戸惑う私に、デイビットさんは優しく耳元で囁いた。
「では私のキスで貴方が蕩けるか賭けませんか?」
その言葉が紡ぎ出される優しい唇が、私に優しく触れた。
賭ける必要なんてない。蕩けて溶けて、一つになるんだから。
身体の奥を暴かれる。けれど、その指が、その唇が、その吐息が甘くて、私も受け入れたくて身体を濡らした。
シーツの海を、何度も何度も爪で引っ掻いて波を立てては、押し寄せる快楽を押し返す。
「ふぁっ」
情けないぐらい甘い声が出た。不安だった。
「美麗」
ただ、強張ったり震えていた私を、何度も呼ぶ彼の甘い声。
その声を聞くだけで、身体がじわりと甘く濡れていく。
「……美麗。ずっとあなたをこうやってこの胸に抱きとめたかった」
「ぁっああっ」
シーツに爪を立てていた腕を、彼は自分の背中へ回す。
「君の痛みを、私にも下さい」
背中に流れる赤い線。
彼は赤い糸みたいだと笑ってくれるかもしれない。
でも私には、貴方を縛ってしまいそうで、嫌だった。
一夜限りの、甘い賭けなのに。
ゆっくりと入ってくる彼の熱が、私の頭を真っ白にさせる。
腰を動かし、入り口をやわやわと刺激しながら口づけし、首に舌を這わせた。
「――っ」
苦しそうなデイビットさんの押し殺した声はセクシーだった。
「一緒に、気持ち良くなってくれますか?」
私は、下半身の快感に目をぎゅっと閉じて頷くしかできなかった。
大きくピストンされ、くちゅっと繋がっている部分が卑猥な音を立てた。
なのに、体中は甘く痺れて幸せだった。
「私の――美麗」
腕の中に閉じ込めるように抱きとめると、中で大きく彼のモノが波打って暴れ、爆せた。
「このまま、閉じ込めてしまいたい」
涙を浮かべた瞼に口づけされながら、彼のその言葉だけで幸せだった。
お互い、荒い息を整えたのち、どちらからともなく口づけた。
お互いの汗で肌が滑り、シーツはぐちゃぐちゃになったが構わない。その日は、デイビットさんの腕枕で朝まで眠った。硬くて冷たい腕枕をされながら聞いたのは、またあの言葉。
「私は、賭けが好きなんです。この賭けにも負けませんよ」
その意味を知るのは、まだ先のことだけれど。
篠原愛紀