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夜。星野家のリビングに、静寂を切り裂く音が響いた。
ピンポーン――。
「あ、誰だろ? こんな時間に」
くつろいでいたアイが、無邪気に立ち上がって玄関へ向かおうとする。
その瞬間、リムルの脳内にシエルの鋭い声が響いた。
『警告。扉の向こうの個体から、臨界点を超えた殺意を感知。手に刃物を所持しています』
「……っ! アイ、待て!!」
リムルは電光石火の速さでアイの腕を掴み、自分の背後に引き寄せた。
「えっ……? リムル君、どうしたの? 急に怖い顔して……」
アイが驚いて目を丸くする。
寝室のドアの隙間から、異変に気づいたアクアが顔を出した。
(……あの音。まさか、誰か来たのか? この時間に?)
「アイ、一歩も動くな。……いいか、絶対に玄関を開けるなよ」
「え、でも……」
リビングの空気が凍りつく。
インターホンがもう一度鳴る。ピンポーン、
、ピンポーン。
扉の向こうで、狂気に満ちた荒い鼻息が聞こえる。
「……シエル、結界だ。この部屋から一歩も外に音を漏らすな。アイにも、子供たちにも、何も見せるな」
『了解。多重結界を構築。物理・音響ともに遮断しました』
リムルはアイの肩にそっと手を置いた。
「アイ。少しだけ、ここで待っててくれ。……すぐにお掃除してくるからさ」
「リムル……君……?」
アイが不安げにリムルの服の裾を握るが、リムルは優しくその手を解くと、音もなく玄関へと歩き出した。
(アクア……。お前はアイとルビーを見てろ。ここから先は、俺の仕事だ)
リムルは心の中でアクアに告げると、鍵のかかったドアを透過するようにして、外の廊下へと姿を消した。
扉の向こうには、白いバラの花束の中にナイフを隠し持った、瞳の濁った男が立っていた。