ーある晴れた日の昼下がり。
「オーター、好きだ。俺と付き合ってくれ。」
『当たって砕けろ』という言葉の如く。
玉砕覚悟でレナトスは、想い人であるオーターに告白をした。
ドクドクとレナトスの心臓が早鐘を打つ。
彼が緊張してしまうのも無理はない。
相手はあの規律の鬼、オーター・マドルである。
告白されたオーターは、返事を待つレナトスを言葉を発する事もなく、ただジッと見つめていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
二人の間に沈黙が流れる。
(いや、気まずっ。頼むから何か言ってくれ。)
と、レナトスが沈黙に耐えきれなくなってきたその時、
「レナトス。」
沈黙を破るように、レナトスの名を呼ぶオーターの凛とした声が響いた。
「何だ? 」
「タチの悪い冗談はやめて下さい。」
「・・・・・は?」
一瞬、何を言われたのか分からなくてレナトスは間の抜けた声を出した。
(タチの悪い冗談?今、そう言ったのか?)
オーターの発した言葉の理解が追いついたレナトスは、ガシガシと頭を掻きながらとんだ勘違いをしているらしい目の前の男に言う。
「そんな訳ねえだろ。俺は本気でお前の事が好きなんだ!」
真剣な愛の告白をタチの悪い冗談と思われるなんてごめんだと思いレナトスは力一杯否定した。
「・・・そうですか。」
「⁉︎」
レナトスの必死の否定の言葉を受けたオーターの頬がじわじわと赤く染まっていく。
予想外の反応にレナトスは目を見開き驚いた。
(え、何だその反応。これは脈ありと思っていいのか?)
「すみません。」
「え?」
「貴方の気持ちを疑うような事を言ってしまって。私は同性ですし、何より貴方は一途な方だから。貴方が私に振り向くなんて、そんな望みはない、そう思っていました。」
「オーター。それは・・・つまり。」
「ええ。」
ゴクッと唾を飲み込んで見つめるレナトスをオーターは頬を染めたまま微笑を浮かべ、コクッと小さく頷いて続ける。
「レナトス。私も、貴方の事が好きです。」
「オーター。」
「・・・!」
レナトスがオーターを引き寄せ、優しく抱きしめる。
「好きだ、オーター。俺のものになってくれ。」
「はい。・・・喜んで。」
返事をしながら、オーターもレナトスの背に腕を回して抱きしめ返す。
しばらくお互いの温もりを感じたあと二人は見つめ合い、どちらかともなく口付けを交わすのだった。
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