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ただ淡々とラーメンを食べてあの頃のトッピングで締めのご飯まだ平らげた。
こんなに食べたのはいつぶりだろうか。
女の子、として着飾らずにいられるのは、彼の前だけだった。
帰りのお決まりのアイス、無言でも違和感のない空間、私はこの普通の幸せに気づかなかった大馬鹿者だ。
「ごちそうさま」
家に着くといつものようにお風呂に行き、寝る支度を済ませた。
私に何も聞かずにいつものような生活を提供してくれた。
「ありがとう」
死ぬ気で貯めた50万を返すと、彼は病状やその時の話を聞いてくれた。
そして彼は、初めて涙を見せた。
もう、無理して働かなくていい。
だからこの50万で好きに遊んでくれ、と。
毎月無理のないように考えてくれていて、仕事も家事も両立できそうな環境をこの1年考えてくれていた。
きっと戻ってくる気がしたから。
彼はまるでわかっていたかのように冷静で、でもどこかあの頃よりしっかりしていて…
数ヶ月後。
彼の仕事が決まり、この街を出ることになった。
私の療養も兼ねて少し田舎に住むことになった。
彼は昔のようにご飯を食べるようになってからかなり丸くなった。
「運動しなきゃな」
片道2キロ歩かなきゃいけないところに引っ越して、駅からの騒音は逃れやすい閑静な住宅街で暮らした。
普通に、普通の環境が私にとって幸せだった。
それに気づかせてくれてありがとう。
クズで不幸もので、ごめんね。
やっぱり毎日普通だけどそれが心地いい。
都会の生活より無理がない毎日を送り、今日も明日も同じような普通が過ぎていく…
それでもいいじゃん。
それが、いいじゃん。
当たり前の幸せは当たり前じゃないからこそ大切にしようって思えるとわかった。
数年後、彼はいつものラーメン屋で私にプロポーズをした。
ロマンのかけらもないけどそれが彼。
それからは自分たちの希望の家を建て、子供も2人授かり、家族4人で仲良く暮らしている。
「何食べる?」
「ラーメン!」
こんな普通の生活が、これからもきっと続くだろう。
再加熱はできないけど、なんとなくふっくらとあたたまった私たちだった。