◇◇◇◇◇
ヘルサイズ本部の外、マリスとヤヌリスがレキの異常を察知していた。
マリス:「あれ?どういうことかしら?
レキの気配が消えたわね。」
ヤヌリス:「確かに!
でも、私たちがここにいるってことはレキは生きてるってことだよな!」
マリス:「そうよね……。
中で何かあったんでしょうけど、もう少し待ってみましょうか?」
ヤヌリス:「そうだな!
まあ、死んでないなら、戻ってくるやろ。
気長に待つとするか!」
◇◇◇◇◇
レキは気がつくと見知らぬ黒い部屋にいた。
ディスハー:「うむ!気がついたようだな!」
レキ:「……。ここはどこだ?」
ディスハー:「ここは神界だよ。」
レキ:「はぁ!?俺は死んだのか?」
ディスハー:「そうだ。一度死んでるんだよ。
でも、まだ生きているね。
正確にいうと一度死んで復活したと言った方が正しいかな。」
レキ:「ん?思い出したぞ。リルミアの野郎!
ところでお前は誰だ?
なんか、見たことあるな。」
見た目は若いが、ものすごく威圧感のある女性が目の前にいた。
ディスハー:「うむ。我は魔神のディスハー。
お前の住む世界の破壊神ってやつさ。」
レキ:「お!そういえば、ヘルサイズ本部の深淵の間で見た銅像と同じだな。ディスハーか。」
ディスハー:「おい、お前!
我を呼び捨てするな!
尊敬を込めてディスハー様と呼べ!
そこを間違えるとお前本当に殺すぞ!!」
これは本当にヤバそうだ。
確かに逆らうとまずそうだな。
レキ:「お、おう。わかった。
それでディスハー様。
俺はどうなったんだ?」
ディスハー:「うむ、わかれば良い。
まあ、慌てるなって。説明してやるから。
まず、お前のユニークスキルな。
あれは我の作った超激レアスキル。」
レキ:「ああ。召喚石クリエイトだな。」
ディスハー:「そうそう。それな。破壊神ぽいだろ。
で、お前の様子はよく見てたぞ。
魔人が召喚された頃からさらにいい感じになってきたからな。うん。いい感じだぞ。」
レキ:「何を言ってるのか、よくわからん。」
ディスハー:「そうか。まあ、簡単にいえば、お前は魔皇候補になったんだよ。」
レキ:「はあ!?魔皇候補?何それ?」
ディスハー:「はあ。いまさら、驚くか?
従者が魔人って時点で気づくだろ……。
まあ、いい。
お前の引き当てたスキルがトリガーなんだよ。
そのあとは運の要素が大きいがね。
そして、お前は魔人の召喚に成功した。
まさか、二人も召喚するとは悪運が強いんだろうね。
そこで条件が整ったってわけだな。」
レキ:「条件というのは、魔皇候補の条件ってことか?」
ディスハー:「そうだ。お前には素質があったのかね。
こんなに早くとは思わなかったけどね。
ただ、魔皇候補になるためには、一度ここに来る必要があった。
そして、それにはもう一つ条件があったのさ。」
レキ:「ほう。それが一度死ぬってことか?」
ディスハー:「うむ。察しがいいね。
正確にいうと憎しみの中で殺されて死ぬってことなんだけどね。
先代魔皇の娘がそれを知っていたとは思ってなかったけど、父親からそれっぽいことを聞いていたのかもしれないね。
だから、あやつは賭けに出たのかもしれないねぇ。」
レキ:「………。くそ!」
レキは本部での出来事を思い出して腹立たしく思っていた。
ディスハー:「そう恨んでやるな。
あいつは父親の代わりをしようといろいろ試行錯誤していたようだからな。
でも、やはり、あやつはどうやっても魔皇にはなれないんだよ。
最近は半ば、惰性で生きていたからね。
そこにお前が現れたってことだな。」
レキ:「んー。なるほどな。話はわかった。
ただし、あいつは許さん。
で、なんで魔皇じゃなくって魔皇候補なんだ?」
ディスハー:「うむ。それはお前はここに早く来たせいか、まだ精神的にも肉体的にも圧倒的に弱いからだな。
まだ、魔皇に覚醒するには早いってことだ。
なので、一度戻してやるから今より圧倒的に強く黒くなることだな。
時が来れば、魔皇に覚醒するだろうよ。」
レキ:「ははは。俺が魔皇か。悪くねぇ。
圧倒的に強く黒くねぇ。なってやるよ。」
ディスハー:「ふ。そうだな。早く覚醒することだな。
そして我を楽しませてくれ。
それでな。まずはあやつの作った組織を取り込むことだな。
あの組織も根はお前と同じところにある。
うまく取り込んで利用することだな。」
レキ:「ん?ちょっと待て。
その場合、俺が戻ってもリルミアの言いなりになるんじゃないか?
俺はあいつの呪術にかかってる。
それをどうにかする必要があるぜ。」
ディスハー:「ふふ。そうだな。
あやつのスキルも特殊だからな。
一度、あやつの呪いにかかると一生元に戻らない。死ぬまではな。」
レキ:「は、はあ?ダメじゃねえか!
それ、ディスハー様の力でなんとかならねえのか!?」
ディスハー:「待て。お前はすでに解呪されてるぞ。
ここに来た時点でね。」
レキ:「え?そうなのか。焦ったぞ。」
ディスハー:「うむ。
あやつがそれを知っているかは知らない。
術が残っていると思ってるかもしれないね。
なんせ、死んで生き返るなんてことは滅多にないからな。
あやつは魔皇の娘だけあって思考も特殊だから、もし、お前が戻れば利用しようとするかもしれないな。」
レキ:「それはいい。解呪されてるなら、俺が逆に利用してやるよ。そして、犯してやる。」
ディスハー:「ははは。いいねぇ。黒いねぇ。楽しみだ。」
レキ:「ディスハー様よ。それじゃ、戻してくれ!」
ディスハー:「ああ。その前にもう少し聞きなさい。
お前が来た組織の本部の北に魔なる樹海が広がっているのは知っているね。」
レキ:「ああ。大陸中央の聖なる樹海と同様に人が立ち入れないもう一つの樹海だな。
入ったことはないが、本部のすぐ北から広がってる。それがどうした?」
ディスハー:「その魔なる樹海の中に先代魔皇の城がある。
まずは、そこを拠点に魔人の国を作りなさい。
大陸の大きさからするとそんなに大きくないが、魔なる樹海は海まで広がっている。
その樹海はお前の土地だよ。
好きに使っていい。」
レキ:「その樹海には俺は入れるのか?」
ディスハー:「うむ。問題ない。お前の従者の魔人もだ。」
レキ:「それはいいな。わかったよ。」
ディスハー:「うむ。それともう一つ。
お前に授けたスキルの召喚石クリエイトだがな。今後は召喚されるのが、魔人になる。
ただし、今までと同様に貴族召喚は激レアであることに変わりはない。
あくまで、魔物が魔人に変化するということだ。」
レキ:「ん?どういうことだ?」
ディスハー:「今まではDランクからAランクの魔物が召喚されただろう?
それが平民魔人に変わるということだ。
平民魔人も貴族と同様、魔界の住人でな。
平民にも強さに応じて階級がある。
第一級から第四級まで。
まあ、第四級でも人間よりはよっぽど強い。
ただし、頭は弱いがな。ははは。」
レキ:「なるほどな。それで魔人の国を作るってことか。」
ディスハー:「うむ。そうだ。うまく使うといい。
あとは人間どもを蹂躙し、従えてお前の国を拡大していけばいい。
まあ、それもお前次第。
好きにすればいいが、お前はやるだろうな。」
レキ:「ああ、俺の好きにするよ。」
そう言って、レキは黒い笑みを浮かべた。
そして、レキの右手の甲には、魔皇候補の証である魔の刻印が現れていた。
ここに世界を混沌の渦に巻き込む魔皇候補が誕生したのであった。
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