テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
150
吉田のりもちくん
24
狐がコンコン。猫がニャンニャン。
コンコン、ニャンニャン。
本当は相容れない2人。
それでも出会った2人。
「……ちっさ」
「ああ“?」
今日は、狐の一族である伊吹家から1人、猫又の一族である志摩家から1人、
結婚させることになった。
いわゆる政略結婚だ。
ただ…彼らは初対面の時点でかなり不安なのだが。
「小さいつっても、10、11cm差ぐらいだろ!」
「だからごめんって!つい言っちゃっただけだもん!」
双方で軽く言い争いをしていると、後ろから声がする。
「伊吹様!あまりウロウロしないでください!…え?」
「志摩様!こちらにいらしたんですか!…って、」
「しま?この人が?」
「伊吹?コイツが?」
目を見合わせる。
どうやら顔合わせの前に出会ってしまっていたようだ。
「…改めまして、志摩一朱です」
「伊吹藍です」
狐と猫又は犬猿の仲だ。
伊吹家の象徴である青の瞳、志摩家の象徴である赤の瞳、
青と赤は決して交錯することはないと語り継がれていたほどだった。
朱色の着物に身を包み、凛と猫耳を立てさせて座る志摩。
一方、藍色の着物を着崩してのんびりと狐耳をぴこぴこさせ、正座する伊吹。
「…ちゃんと座ることさえできないんですか」
「えーだって堅苦しいの苦手だし。志摩サンもそうでしょ?」
「気持ちはわかりますけど…」
ここは公の場だ。
後ろに控えている伊吹家のものたちは額に手を当てて小さく首を横に振っていた。
伊吹家のみんなも手を焼いているようだった。
結婚に必要な儀式や契約を色々済ませて、2人で住むことになる家の中を歩く。
「あの儀式ってなんの意味があるんでしょーね。お互いの血を飲むやつ」
ぐっぱぐっぱと包帯が巻かれている手を開いたり閉めたりする伊吹。
「お互いの血を飲むことで命を分かち合うとかなんとからしいですけど」
「ふーん…なんで志摩サンさ、こっち見ないの」
「見る必要がないです」
「辛辣〜」
伊吹はぐはっと胸に手を押さえた。
「(元気だなこいつ)」
「仲良くしようよぉ、旦那さん」
「気色悪い。これは政略結婚だ。名義上の夫婦でしかない」
「あ、敬語とれた」
「…」
完全に無意識だった。舌打ちをしたくなる気持ちを堪える。
「っていうか、なんで猫と狐なの?すごく仲悪いじゃん」
「あぁ…犬猿の仲を修繕しようとでもしたんだろうな。さらに両家でかいときた」
もう敬語で取り繕うのは諦めたようだ。
伊吹は「ふーん」と庭に降りて池を眺める。
錦鯉が悠々と泳いでいた。
「志摩ちゃんって物知り〜」
「…志摩ちゃん?」
今、聞き捨てならないことを聞いたような気がする。
だが、幻聴かもしれない。きっとそうだ。
「…はぁ、聞いてなかったのか?」
伊吹は首を横に振った。
伊吹家としてはコイツに話しても仕方ないという考えか。
手を焼いているようだ、お疲れ様です。
「まだ忘れてないからな。俺のこと小さいって言ったこと」
「お、根に持つタイプ〜」
「志摩さん」
音もなく志摩と伊吹の後ろに立つ男。
青鷺火のようだ。手元に青白く輝くランタンを持っていた。
驚いてびくーっとする伊吹。志摩は慣れているようで、動じなかった。
「え、だれ?」
「ああ、九重か」
「急に結婚するとか言われて驚きましたよ。そちらの人が…?」
「ああ、伊吹だ」
「よろしくお願いしますー…?」
「それで?」
「ああ、最近…」
その後、志摩と九重は何やら小難しい話をする。
伊吹には絶対わからないと踏んでいるのだろう。
伊吹は堪えきれず声を上げる。
「ちょっとぉ!置いてけぼりじゃなくて、誰か説明してよ!」
「…ああ、すまん。コイツは…」
「九重世一です。昔、志摩さんに助けられたことがあって」
「後輩みたいなものだ」
「ふーん」
伊吹は腕を組んで口を尖らせている。
完全に拗ねていた。
出会ったばかりの仲が深くない相手でも置いてけぼりは嫌らしい。
「仲の良さの度合いが違うんだから仕方ないだろ」
「うぐっ、……辛辣な男はモテないよ!」
「うるせぇ、モテなくてもこまらねぇんだよこちとら」
「志摩さんはある一定の層にモテますからね」
「言わなくていい」
九重はぺこりと後ろに下がる。
「で、伊吹。俺は九重と話さないといけないことがある」
「何」
「秘密だ」
はー?と不満げにする伊吹。
そんな伊吹を軽くあしらって奥の部屋へ九重と消えていく志摩。
「…怪しーい匂いがする」
コメント
3件
第8話読んだよ!狐vs猫又の政略結婚、最初っから「ちっさ」で始まるの最高に好き(笑)藍の飄々としてる感じと一朱のツンツン具合がめっちゃ噛み合ってて、二人の掛け合いがテンポ良くて気持ちいいわ。九重くん登場でまた関係性に広がりが出そうで続きめっちゃ気になる!青と赤が交わる日は来るのか…楽しみ🔥