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【irxs】医者パロ

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【irxs】医者パロ

24 - 第23話 「守る 何でも 小さな」②

♥

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2025年03月15日

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【お願い】


こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります

この言葉に見覚えのない方はブラウザバックをお願い致します

ご本人様方とは一切関係ありません


小児科医青×天才外科医桃

のお話です

ワードパレットでリクエストいただいた3つの言葉(タイトルになってます)を本文中に使用してのお話になります


今回は完全にモブ女子視点になります

青桃さんが働く病院で事務をしている女の子の話です




「守る 何でも 小さな」



ミス…というほどではないけれど、今回は些細な矛盾点を指摘する連絡だった。

こういうとき、行政は柔軟性が足りないのは昔から。

訂正して書類を送り直してほしいと要求される。

しかもまた「大至急」で。



「いやだぁ…システム上で先生にデータ飛ばして問い合わせしたら何日もかかるから、また直接会いに行って頭下げてハンコもらわなきゃいけないの…?」



電話を切り、端末に残された該当文書の情報を呼び出す。

うんざりしたような私の呟きに、先輩は同情に似た返事を寄越した。



「今日はそういう日だね、長野。明日はきっといいことあるよ」



この書類の担当医師が、またあの整形外科長だったらどうしよう…そう思った私と同じことを考えたのか、笑いながら先輩は隣からこちらの端末を覗きこんだ。

揃って画面上で医師の名前を確認すると、幸運なことにあの科長ではなかった。


2人同時にほっと息を漏らす。



「良かったじゃん、例の嫌味な科長じゃなくて」

「…えぇ…でも私この担当の先生よく知らないんですよね…どんな方ですか?」



尋ねた私に、画面を見る先輩の目が少しだけ細められる。

きっと過去にやり取りしたときのことを思い出しているんだろう。



「うーん…なんて言うんだろう、効率重視の人かな」

「えぇ!? そんな人に忙しい中『ハンコください!』なんて言ったらそれこそ怒られそうじゃないですかぁ」


今日はやはりツイていないらしい…。

思わず落胆しかけたけれど、嘆いていても仕方ない。


仕事だから、と自分に言い聞かせ、私は近くの電話を取った。

ほとんどの医師のPHS番号が登録されている電話帳から、該当の医師の名前を探し出す。



「…あ、事務の長野です。いつもお世話になっております」



ワンコールで出た相手に、そうお決まりの挨拶をする。

途端に向こうから『おつかれさまでーす』と低めの声が返ってきた。


……え、なんて言うか……軽いな!受け答えが!!



「先生、今お時間よろしいですか?」



重ねて尋ねたこれまた事務員の決まり文句に、電話の向こうの声が「どうぞ」と促してきた。

声からして相当若い。

少しハスキーないい声だ。



「あの、先生が以前ご発行くださった文書なんですけど、役所から問い合わせと訂正依頼が来てまして…至急とのことで今日中にお願いしたいのですが」

『どんな内容ですか? 訂正依頼って』

「あ、えっと…」



電話口でどう説明しようか、一瞬迷ってしまった。

そのほんの隙に何かしら思ったのか、向こうが先に言葉を継ぐ。



『直接会って聞いた方が早いかな。その場で訂正して印鑑押しますね』

「え!? …あ、じゃあ私今からお伺いしてもよろしいですか…? 先生今どちらにいらっしゃいますか…!?」



さすが「効率重視」と評されるだけある。

テンポも提案も速い。

頭の回転が恐ろしく速いんだろう。

ついていくのが精いっぱいで、医師からの提案に慌てて問いを返す。



『医局にいるけど…いいよ、僕がそっちに行きます。4階の事務室だよね?』

「えぇ!?」



来る!? 医者が!? 事務室に!!!?

驚いて声を上げた私になど構わず、その医師は「3分で行きます」とだけ言って通話を終わらせてしまった。

…カップ麺か。



「先生、何だって?」



私の声の上げ方を尋常じゃないと思ったのか、周りの同僚たちがみんな興味深そうにこちらを見ていた。


電話を机の上に戻しながら、「今から…来るそうです……ここに」とぽそりと返す。

途端に先輩は笑いだした。



「さすが効率重視の男!」

「でも珍しい先生ですよねー大体の医師が面倒くさそう、迷惑そうにふんぞり返って自分の席で待ってるっていうのに。自らご足労、ですか」



後輩も感心したようにそう言葉を継ぐものだから、途端になんだか緊張してきた。

これでも目上の医師に会うとなると、それなりに心構えは必要なのだ。



予告通りに3分たった頃、事務室の扉がガチャリと開く音がした。

白衣の医師が一人そこにいて、この広い室内をぐるりと見渡している。

皆がそちらを振り返るのが分かった。

もちろん私もだ。


そして視界に映ったその医師の頭を見て、思わず変な声を上げそうになってしまった。



(どピンク…)



口にしてしまいそうな声は何とか胸の内に留める。

誰もが目を瞠るような派手な髪色は、それでも文句のつけどころがないくらいに整った顔にはとてもよく似合っていた。


さっき会ったばかりの嫌味な整形外科長よりも大分若い。

黒とグレーの制服の事務員たちが詰めるその場所に、このピンクは相当映える…というか、目立っていた。



きょろきょろと、ピンク色の瞳が辺りを見渡した。

それから「長野さん、います?」と近くの人に声をかけている。

思わず一連の様子に見惚れていた私は、そこでようやく我に返って椅子から立ち上がった。



「長野です! ないこ先生ですか? わざわざ申し訳ございません」



私がぺこりと頭を下げている間に、大股で彼はあっという間にこちらまで近寄ってきた。

…コンパスが違う。

長い手足が白衣の袖・裾からすらりと伸びている。



「おつかれさまです。ごめんね書類に不備があったって?」

「いえ! それは私が…」



そもそも作成したのは私だ。

そう言いかけたけれど「いや、オッケー出してハンコ押したの俺だから、こっちの責任だしね」とないこ先生は苦笑いを浮かべた。


…困ったように下がった眉がかわい……じゃない、仕事だ気持ちを切り替えろ私。



「これなんですけど…ここの日付がこっちと矛盾してるって指摘があって…」

「どれ?」



まさにその文書のデータを開いている画面を指さすと、ないこ先生は少し屈むような態勢を取った。

それから何かに気づいたように、「あ、構わず座ってて」と私に椅子を勧める。



変に拒むのも逆に失礼かと思い、すみません、とだけ言ってそこに座った。

…けれど、それが失敗だった。

私の顔のすぐ後ろから、ないこ先生が画面を覗きこんでいる状況を作り出してしまった。



(…近!)



心の中の悲鳴に似た声は、恐らく周りの誰もが思っていたに違いない。

先輩や後輩、同期からの羨ましそうな…それでいて面白がるような視線が痛い。


しかも何!? この人めっちゃいい匂いする…!

香水なんだかシャンプーなんだかは分からないけれど、優しく甘い香りが嗅覚をくすぐっていく。



「あーほんとだ、これかぁ。うっわよく見てるなーこんなとこまで。…ごめん、マウス借りていい?」

「どど、どうぞ!」



思わずどもってしまった私のことは気にも留めていないのか、かちりとないこ先生がマウスをクリックする。

それからざっと画面全体を流し見る様子も俊敏すぎて、いかに効率厨なのかが本当によく分かる。


動きに無駄が一つもない。

こちらはすぐ横に伸びる腕が近すぎて、それだけで無駄にどきどきしてるっていうのに…!



該当箇所を修正し、ないこ先生は「できた」と呟いた。

硬直したままの私はもう頭が真っ白で返事をすることすら忘れてしまっていた。



「長野さん? 印刷できる?」

「あ! はい! すぐ…!」



返されたマウスを操作して、印刷ボタンを押す。

途端に数メートル離れたプリンタが「がが」と動き出した。


用紙を取りに行こうと立ち上がりかけた私の後ろで、ないこ先生が動く方が早かった。

大股でプリンタの方へ行ったかと思うと、それを手に戻ってくる。


……本当に、何もかもがワンテンポ速い人だ。

偉そうな医師なら自らがこんなには動かない。

目の前に紙を差し出されて全てのお膳立てが整うまで待っていることだろう。



持ってきた用紙に、目の前で彼はぽんと印鑑を押す。

それから「はい、お待たせしました」とこちらに差し出してきた。



「ありがとうございます…!」



恐れ多すぎて身を縮めながら受け取った私に、ないこ先生は小さく微笑んだ。

それから周りにも聞こえるようになのか、少しだけさっきまでよりはっきりとした口調で言葉を継ぐ。



「俺も見落としとかあるから、先方から不備ありで突き返されたらすぐ連絡してくれていいよ。それこそ役所なんかは小さなことで問い合わせてくるだろうし、いつでも何でも聞いて」



ありがたい言葉に、そこにいた事務員たちは全員が胸を打たれたと思う。

…さっきの整形外科長に聞かせてやりたいセリフだ。

ついでに爪の垢も煎じて飲ませたい。



「ありがとうございます」



ぺこりと頭を下げるのと一緒に、周りの同僚たちも軽く会釈をした。

「いえいえ」とだけ返して身を翻したないこ先生は、だけど2,3歩進んだところでふと足を止めた。



「……?」



思いとどまったように立ち止まるものだから、思わず首を傾げてそれを見やってしまう。

そんな私の前で、先生はもう一度くるりとこちらを振り返った。


忘れてた、とでも言いたげにまたにこりと笑ってみせる。

それから最後にもう一度口を開いた。



「いつもありがとう」



穏やかな優しいその笑顔は、あの時胸を鷲掴みにされたいふ先生の笑い方にそっくりだと思った。








(続)

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コメント

12

ユーザー

夫婦っていつの間にか似てくるって言いますし......猫戌は夫婦という形で留めておきます✋🏻💫 長野さん可愛らしですよね我々リスナーみたいに.......←←。 陰ながらあおばさんの作品待ち望んでますのでどうかこれからも投稿よろしくおねがいします.....🙇🏻‍♀️💞

ユーザー

桃さん青さん大好きだし 青さん桃さん大好きだし 当たり前に似てくるよな~。 優しいしイケメンだし、 何もかもが整ってんの 尊すぎて笑うꉂ🤣𐤔 いや~、本当にやばい好き

ユーザー

長野さん…そりゃ惚れるよな 青さんとはまた違う雰囲気を醸し出してる桃さんから 青さんみたいな笑顔?見せられたらそりゃそうなるよな^_ .̫ _^ いつも投稿お疲れ様ですっ

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