送信ボタンに触れたと同時に、若井のスマホから通知音が鳴った。
「……あれ、なんか送った?」
面白いから見てみて、とだけ返して若井のすぐ隣に移動する。
同じ部屋にいるのだから、メッセージを送る必要は無いけど。
わざわざそうしたのには理由がある。
口で言うより実際に見てもらった方が面白いからね。
若井に肩を寄せ、開かれたトーク画面を覗き込む。
映し出されたのは先程スクリーンショットしたJAM’S達のコメント。
内容は全て今回のインスタライブについて触れている物で。
きっかけ、というか元凶は自分自身。
SNSでインライについての投稿がされ始めたのは、「おふたりは交際されてるんですか?」と言うコメントを拾った所から。
ふざけて「はい」なんて即答して、気付いたらすっごい量のコメント。
自分でスクショした物ではあるけど
やっぱり付き合ってんじゃん、なんてコメントを再度読み直して笑いそうになる。
「ねぇ……」
羞恥心と呆れの混じった表情で軽く小突かれ、思わず顔を逸らして笑ってしまう。
インライ中は「勘違いされるから」なんて笑っていたのに、2人きりだとこうも反応が変わるのか。
その事実がどうしようもなく可愛くて、余計に口元が緩む。
でも実際、若井とは付き合ってないし付き合ってた事もない。
勿論、交際してるなんて言うのは冗談。
本当はずっと昔から好きなんだけどね。
10年以上この関係だから、気持ちを伝えるのは少し怖い。
良くも悪くも近くて大切な存在だから。
きっと若井の反応もこの関係故に、なんだろうな。
バンドのメンバーで親友だから。
こんな反応するのも意識されてるからじゃないって事ぐらいは分かってる。
だからって苦しいとか、辛いとか、そういう訳でもない。
こう見えても結構執念深いんで。
諦め悪いですよ。
今すぐは無理でも、いつかはね。
「なんであのコメント拾うかなぁ…」
送られたスクショに目を向けながら、若井が小さく息を吐いた。
「面白そうだったから」
悪びれもなく返すと、もう一度腕で小突かれた。
面白そうだからというのも嘘では無いけど
本当の事を言うとちょっと違う。
「そう思われたかった、ってのもあるけどね」
冗談にみせて本音を零してみる。
同じ感情を同じように抱いて欲しいとか、そんなんじゃない。
ただ、気になったから。
さっきみたいにまた呆れられるかな、って。
ただそれだけ。
「なにそれ」
返ってきたのは、予想通りの呆れた反応。
視界が塞がれてるのは予想外だけど。
「んぇ、若井?」
手で目を隠されている状況に困惑しながら名前を呼ぶ。
返事は何も返ってこないけど。
手首を掴みそっと退けて、開けた視界に彼を映す。
視線がぶつかり、数秒の間があった後心臓が煩く鳴り始めた。
頬に残った熱と落ち着きの無い視線。
「…ほんとに、勘違いされるよ」
羞恥心の滲んだ視線を揺らしながら小さく笑うその表情。
理性を揺らがすにはそれだけで充分だった。
なにそれ、ずるい。
そんな反応返ってくるなんて聞いてない。
掴んでいた手首を降ろし 離れないように、
離さないように指先を絡める。
今すぐは無理でもいつかは、って。
前言撤回。今すぐに、ね。
コメント
10件
付き合ってなかった状態でのインライとか最高すぎます😭😭😭それきっかけでお付き合い始めたら…もう…
うぉーー!!前言撤回、今すぐにね って…泣泣 好きすぎます!!💙さんの些細な可愛い反応が見ててキュンってしちゃいますっ💕💕いちさんの小説今回も最高です〜!!!😩🫵🫵
