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「………………どうしました?」
視線に圧を感じたのか、スマホから顔を上げた若井が戸惑ったような目を向けてくる。
「……いや…………なんでもない」
煮え切らない返事とは裏腹に、視線は隣に座る若井へと固定されている。
「なんでもなくは無いでしょ」
流石にこの状況でなんでもない、というのは通用せず。
まぁ実際そうなんだけど。
地獄のような量の打ち合わせを終え、この部屋に戻ってきたのは10分程前。
スタッフやマネージャー達はちょうど出払っているらしく、暫くこの様な時間が続いている。
他愛も無い会話をしながら互いにスマホを弄ったり。
久しぶりに2人で居れるこの時間がとにかく心地良くて。
と、初めはそんな空気感だったんだけど。
ここ最近の疲れが溜まっているのもあって、それだけじゃ物足りなくなって来ちゃった。
もっと触れたい、とか。
生憎、そんな考えが1度過ぎるとどうしようも出来ない人間でして。
仕方ないよね、誰でもそーいう欲はあるし。
頭の中を巡る言い訳のような考えを無理やりシャットダウンして、若井の方へと身体を向けた。
距離を寄せながら、若井が手にしていたスマホの電源を落とす。
その行為の意味を理解するのには数秒も要さなかったらしく、何か言いたそうな視線が向けられる。
人の出入りが無いとも言いきれないこの部屋で、というのは多少の抵抗があるんだろうけど。
「少しだけだから」
そう一言だけ置いて、若井の髪を耳にかけるように掬う。
否定の言葉が無いのを肯定と取って、頬に手で触れたまま唇を重ねた。
深く口付ける度に肩が揺れ、呼吸の隙間から漏れる小さな声と熱い吐息が耳を掠める。
伝わる温度に身体が熱を帯び、理性が溶けるように霞んでいく。
感情を抑制する余裕さえも無くなり、熱を求めるままに何度も角度を変えて口付けた。
「…………っ、若井」
吐いた息と共に零れた声は、低く掠れて。
もう一度キスを落としながら身体を預ければ、若井を後ろに押し倒す様な体勢になる。
荒い呼吸を整え首筋に触れようとした瞬間、若井の視線が揺らいだ。
焦ったような視線が扉へと向けられ、何となくの状況を察する。
「ちょっと、元貴……っ、」
身体の火照りが冷めるはずも無く、感情の昂りが抑えられないまま言葉を遮るように口を塞いだ。
緊迫感を感じると同時に、その感覚がどうしようもない程に胸を焦がす。
案の定聞こえてきた足音は扉の前で途絶え、ノック音が部屋に響いた。
「大森さん、お時間宜しければスケジュールの確認お願いします」
離れた唇から溢れる熱を飲み込むように息を吸って、身体を起こす。
作業中だからキリのいい所まで、という旨を扉に向かって伝えれば「了解です」なんて素直な返答が返ってくる。
足音が遠ざかっていくのを確認した後、腕の下から呆れたような視線が向けられる。
「…っ、バレたらどうすんの……」
「別にどうもしないよ」
寧ろバレても良いんじゃない、って言ったらどんな反応するかな。
「…呼ばれたんでしょ、早く行きなよ」
急かすような態度とは真逆に、紅潮しきった頬が身体に感じていた熱を思い出させる。
乱れている呼吸を整えるように息を吸うその仕草一つで、この場から離れ難いとさえ感じてしまう。
我ながら、完全に堕ちてる。
言葉に、仕草に、ここまで感情を揺さぶられるなんて。
ほんっと何処まで好きなんだか。
「…うん、キリいい所まで終わったら行くよ」
コメント
5件
理想のもとぱでありがたい😭😭😭

なんの?なんのキリですか?!! うわあああっ!!!気になるぅぅぅぅ!!