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こさめをベッドに寝かせ、軽く毛布を掛けて安心させたすちは、
スマホを手に取り深呼吸する。
(…やりすぎたな)
すちは低めの声で、
短くまとめたメッセージを打ち込む。
屋上来て。話がある
送信ボタンを押すと、
少しの間を置き、深く息を吐く。
ー
数分後。
廊下の向こうから足音が近づいてくる。
扉の前に立つと、
少し驚いた顔でいるまとなつが現れた。
「……なんの用?」
低めの声でいるまが言う。
「二人とも最近流石にやりすぎ
じゃない?」
すちは落ち着いた口調で応じる。
いるまは無言で視線を合わせ、
なつは少し顔を伏せる。
すちの静かな決意が、二人の前に重くの
しかかる。
すちがなつに近づいてきているまが瞬時に
「おい、なつにそんな近づくな」
そう言われてもすちは一歩、また一歩と、
迷いなくなつへ近づいた。
「……なに?」
そう言いながら拳を振るい、
なつの頬に赤い痕を刻む。
「……、ッ」
衝撃で後ろによろけるなつ。
その瞬間、いるまが叫んだ。
「おい!!すち!!」
苛立ちを抑えきれず、
すちの胸ぐらを掴みあげる。
だが、すちは静かな声で返した。
「……立場、わかってるよね」
その一言に、いるまの手が止まった。
ぐっと歯を食いしばりながらも、
何も言い返せない。
「ッ、、いるま、もういいから、大丈夫…」
横で押し殺すように声を出したなつ。
苦しげに微笑んで、いるまを制止する。
しぶしぶ手を離すと、
すちはもう一度なつの目の前に立つと
再び拳が振り下ろされる。
「ッ……!!」
なつはただ顔を歪めて、黙ってその痛みを
受け入れるしかなかった。
「お前に言われたからこっちは
やってんのにッ…、」
いるまの声は震えていた。拳を握りしめ、
必死に自分の正当性を主張する。
しかし、すちは冷ややかな目で一瞥し、
淡々と返した。
「確かに言ったよ。 けど
──自殺まで追い込むのは違うよね?」
「ッ…!」
なつは肩を震わせ、息を詰める。
涙がにじみ出そうになるのを
必死に堪えていた。
すちが低い声でさらに問い詰めようとした
瞬間、なつの瞳がぐらついて――
「…っおかあさん…やめてよ…っ、」
堪えきれずに泣き出してしまった。
すちは驚いて手を止める。「え?……」
なつは必死に目をこすりながら、
でも涙は止まらなくて、しゃくり
上げながら震えている。
「…ごめんなさい、ごめんなさい…もう、
やらないから…ッッッ、」
すちは息を呑んで、目の前のなつがただの
どこか壊れてるのを一瞬で悟る。
その場の空気が凍りついて、
いるまも言葉を失ったまま見ている。
すちの拳は力なく下がって――
「……ひまちゃん、……誰に見えてんの?」
っと冷たい目でなつを見下ろしながら
少し震えた声で問いかけると
いるまが低い声で吐き捨てた。
「……こいつに今何言っても無駄だ」
なつの肩を支えながら、
いるまはそのまま身体をかがめ、
力強く抱き上げる。
まるで壊れものを守るように、
ためらいなくお姫様抱っこで。
「ッ!…え……? い、いるま……」
なつは頬を涙で濡らしながら、
驚いたように彼を見上げる。
すちは腕を組み、鼻で笑った。
「好きにすれば?どうせどこ行っても
守れるわけじゃない」
その挑発にいるまは歯を食いしばり、
振り返りもせずに言い放つ。
「……俺が守るから関係ねぇ。
二度と手ぇ出すな」
すちの視線を背中に受けながら、
いるまは泣きじゃくるなつをしっかり抱え、屋上を後にした。
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