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五条悟

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五条悟

9 - 第9話

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2023年02月13日

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1週間ぶりに彼が帰ってくる。はりきってたくさんご飯を作ってしまった。鼻歌を歌いながら料理をする。ガチャリと音を立てて玄関の扉が開く。

「おかえり」

玄関を覗くと髪がボサボサな蘭が立っていた。

「……スッ」

静かな時の蘭は関わらない方がいい。今までにうんと学んできた。こういう時の彼は最低限のことをしてすぐに寝る。いつもそうだ。ご飯はできている、そう伝えると蘭は足早にリビングに向かう。

「いただきます」

「…」

無言でご飯を食べ始める。いつもなら楽しくお話しながら食べられるのに。チラチラと蘭の方を見ながら食事をする。彼は食事に手を進めながらもぼんやりと何か考えていた。何を考えているのか、そう聞くことは出来なかった。仕事のことかもしれないから。

「…お前俺の事嫌いなの」

突然口を開いたと思えばそんな話。こちらをじっと見つめて答えを待っている。しかしこのタイミングでこの質問をする意味が分からない。素直にそう聞こうとした

「何言って「俺帰ってきても最近全然喋らねぇじゃん」

「…違うそれは蘭が、」

疲れてるから。そう口にはできなかった。有無を言わせまいと蘭が自分を睨んでいた。舌打ちをされる

「俺が…何?」

ひとつも表情を変えずに話す。怖くて喉が、声が出ない。何も答えない自分に痺れを切らしたのか

「責任人に押し付けんなよな全部お前が悪いんだろ」

と言う。その言葉に自分の中の何かがプツンと切れた音がした。

「それは違うもん!!!!!!」

そこからは売り言葉に買い言葉。日頃からの鬱憤、全く関係ない仕事のこと、あることないことでっち上げてお互いに叫び散らかす。普段全く喧嘩をしないからこそここまでの大事になってしまった。普段から言いたいこといえばよかったな。頭の片隅でそう考える。

「お前マジで意味わかんねぇ、寝るわ」

背を向け寝室に歩いていく。は?意味わかんないのはこっちだけど。納得出来ずに

「ちょっと!!まだ話は終わってない!!!」

と声を張り上げる。頭に血が上っている自分はわからなかった。この時蘭に突っかかるべきではなかった。少し考えればわかったはずなのに。蘭の肩に手を置く。途端

「るっせぇな!!!ちょっと黙れよ!!!!」

腕を思いっきり振り払われガコンと頭を勢いよくぶつける。体に力が急に入らなくなり座り込む。後頭部にたらりと生暖かいものが頭に垂れていく感覚。意識がだんだん遠くなっていく。これ死ぬ。目の前に今までの思い出がさらさらと流れていく。走馬灯だろうか。分からない、どうして今ここでこんな目にあっているのか。なんで蘭と一緒にいるのか。こんな目に逢うなら‘’一生会わなければ良かった‘’。遠くで私の名前を叫ぶ蘭を尻目に私は目を閉じた。


蘭視点

怒涛の連勤が終わった。法律に違反することも厭わない反社が労働基準法なんて守るわけがない。喋ることも億劫だ。

…最近帰ってきても〇〇が喋らない。素っ気ないというか冷たいのだ。何も喋らずにご飯も終わる。それはいつも連勤後の出来事。考えられるのは1つ。俺が汗水出して働いてるときに浮気。俺が嫌いになったのだろう。今日俺はまだ自分に好意があるか、そう聞いた。しばらくの沈黙。彼女と一緒に喋るタイミングが重なるが〇〇の話なんて聞かずに俺は話し続けた。嘘をついているか見極めるために〇〇を見つめる。〇〇の瞳には恐怖しか映っていなかった。その目は何回も何十回も見てきた。浮気したお前が悪いんだろ。

「お前が全部悪いんだろ」

突然彼女がたち悲痛に叫んだ。それは違う、だと?そこからは頭に血がのぼり何を言ったか曖昧だ、これ以上の口論は不毛。顔を見たらまた喧嘩しそうだと思った。だから寝室に向かう。彼女はまた叫ぶ。俺は喧嘩したくないんだよ。だからこれ以上の争いをしないために彼女の腕を振り払った。

ガコンという音からさっきまでキャンキャン吠えていた彼女がシンと静かになる。違和感を感じ後ろを振り向くと頭から血を流した彼女が座っていた。ボソリと一生会わなければ良かったと放たれる言葉。

「おい」

真意を聞く為に声をかけてもピクリとも動かない彼女のそばに走る。あぁおれはおれはおれは…彼女の首に手を添える、脈はまだある。スマホを取りだし竜胆に梵天専属の病院に連絡しろと伝え応急処置をし〇〇を後部座席に乗せて全速力で車を飛ばした。

俺が〇〇に怪我をさせてから4日経った。大きい仕事の前に彼女の顔が見たくなった。彼女は目を覚まさない。いつものように寝ている。医者曰くもう目を覚ましていい頃のはずなのですが、彼女自身が目を覚ますのを拒んでいる可能性があります、精神的な問題でしょうね、だと。…ふざけんなよ。なんでだよ、そんなに俺が嫌いかよ。なぁ、、なぁ…

「早く目覚ませよ…頼む……」

〇〇の手をぎゅっと握る。彼女の手はとても冷たい。本当に生きているのか心配になる。

「……兄ちゃん、そろそろ」

竜胆が申し訳なさそうに声をかける。空返事をして椅子からたつ。

「俺待ってるから、明日また来る、またな」

額にキスをしてその場を立ち去る。仕事が名指しで立て続けに入り暫くは病室に行けなくなった。代わりに竜胆を行かせた。2日経ったぐらいから竜胆は頑なに〇〇の話をしなくなった。はぐらかすようになった。違和感を感じつつも仕事をする。ミスをしない自分が嫌になる。俺は〇〇がいないとダメなんだよ。


最後に病室に行ってから5日後

仕事終わりに向かった病室には〇〇はいなかった。〇〇視点2日前、目を覚ました。隣には仕事をしている誰かが居た。スマホを見ると最後にスマホを見てから11日経っていた。ごそごそと動くと

「あっ起きた!!?」

と男が物音を立てて立ち上がった。

「君の彼氏に連絡するから待ってて」

と部屋から出ようとしていた

「待って!!!!」

と喉を痛めて叫んだ。ケホケホと咳き込んだところを男が背中を摩ってくれた。しばらくして落ち着いてから男が

「連絡しない方がいいのか?」

と聞いてきた。当たり前だ、2週間くらい眠らせた男の顔なんて見たくない。

「嫌です。もう彼氏じゃありません。他人ですよ。」

イライラしながらそう伝えた。目の前の男は驚いたような顔をして目を見開いた。

「え、じゃぁ、、え…、、」

明らかに動揺している。まず誰だこの人。名前を聞くと竜胆、と言うらしい。苗字は教えて貰えなかった。蘭の同僚らしい。

「これからどうしたい」

そう聞かれたとき、すぐに答えは出た。







「私、灰谷蘭には今後一切会いたくないです」







「ほんとにいいのかよ」

車を運転している竜胆さんがそう声をかける。

「いいんです。もう怖いんです。」

「にい…蘭のこと嫌いになった?」

「…嫌いじゃないですよ。今でも好きです、でも怖いんです、今度は本当に死んじゃう気がして。」

手を握りしめてそう伝える。正真正銘、本心だった。

とりあえず遠くに、という安直な考えで車を走らせてもらっている。繁華街で下ろしてもらいホテルにでも泊まろうと考え伝える。外を眺め到着を待つ。何が悪かったのか分からない。まだ少し痛む頭をおさえる。

竜胆さんにこのスマホ、捨ててください、と話し少しのお金をいただき、色々な迷惑をかけた竜胆さんにお礼を言い繁華街へ歩く。お金は限られてる。タクシーを使うのももったいない。近場のホテルに入りチェックインする。ふらふらする。貧血みたいな、ぐらぐらする。まだ怪我が治っていないことに気付いた。2日、ここに2日留まって移動しようと心に決めてベットに身を沈めた。


蘭視点

病室をみて頭が真っ白になった。後ろにいる竜胆は気まずそうにしている。

「見とけっていったよな。〇〇はどこだ。」

竜胆を睨む。目を逸らしぽつぽつと話し始めた。赤の他人って言ってたから、か。別れたつもりはねぇんだけどな。竜胆から〇〇のスマホを受け取り急いで車を走らせ、部下にも連絡する。

「……何してんだよ俺も〇〇も。」

監視カメラをチェックさせていた竜胆から連絡が来る。今日の〇〇の姿を確認した。繁華街からはまだ出てない。ふらふらとした足取りでどこかにいこうとしている。まだ怪我がちゃんと治っていないんだと思う。そんなに遠くに行けてないから歩いて探して。

プツと電話が切れる。焦りと不安から自然と歩くのが早くなっていた。路地裏をふと見た途端うなだれた女が座っていた。見つけた。

「〇〇!!!」

そう声をかけた途端〇〇は走り出した。逃げられた?そう思う前に身体が動いていた。ふらふらしている〇〇に追いつくのは簡単だった。腕を掴んだ途端俺の手に雫が落ちた。

「…はな……し…て」

〇〇の声も身体も震えていた。瞳に映るのは俺に対する恐怖だけだった。


〇〇ちゃん視点最悪だ。やっと外で自由に歩けるくらい元気になったと思ったのにくらくらする。貧血か、後遺症か。人目のつかないところに移動し休憩する。終電で遠くに行こう、と計画を立てていたのが台無しだ。…終電まで時間はまだある。ゆっくりでも歩こう。ぐっと腕に力を入れて立とうとした刹那

「〇〇!!!」

私の名前が街に響いた。目の前にたっている男を見て血の気が引いた。頭で考えるより身体が動いていた。‘’逃げなきゃ‘’後ろから足音がどんどん近づいてくる。視界が歪む。壁に当たりながら必死に走る。パシッと腕を捕まれた。鳥肌が立つ、涙が止まらない。また、また同じ目にあってしまう。やだいやだ、たすけて、

「…はな……し…て」

今の私が出来る必死の抵抗がこれだ。もちろん蘭は離してくれない、離すどころか掴む力が強くなっている。怖い、こわいこわい、また突き飛ばされる、

「…やだはなしてはなしてこわいの、やめて、いたいのやだ…」

蘭がはっとしたような顔をして手が離される。

「こわいのやめてもう顔もみたくない」

「話だけ、話だけさせてくれ…。触らない、から」

懇願するような目と合い、断ることは出来なかった。

路地裏で男女ぺたんと座り込んだ私たちは傍から見れば変な人だったかもしれない。でも周りを気にする余裕が無いのだ、私も、彼も。気まずい沈黙の中彼が口を開いた。

「…職場とかのノリで突き飛ばした。ごめん、謝っても、許されることじゃないのも…わかってる、」

「あの時突っかかった私も悪かったから」

「あることないこと関係ないこと沢山言った、…そんなことひとつも思ってない。」

嘘つけ、とわざわざ口にするのも面倒だ

「……私たちは言いたいことちゃんと言うべきだった。それだけだと思う。」

「オマエにたくさん無理させた、…だから俺たちやり直「じゃあ私行くから。」

言いたいことがわかってしまった。今の私には無理だ。彼にも怖くて触れられない。立ってその場を離れようとする。

「は…ぁ…、………ッ!!……違ぇ、お前が行くのはそっちじゃねぇ、病院だ。」

「は?別に平気だけ」

ぐわんと視界が歪み後ろに倒れそうになるが蘭が支えてくれた。助けてくれたのに彼のことがこわい。様子がおかしいと悟った蘭は私を座らせて私と距離をとった。

「わり、」

「…ごめん、ありがとう」

「とりあえず病院な」

スマホを取りだしどこかへ電話をする。多方竜胆さんだろう。

「…俺は嫌だろ?竜胆呼ぶわ」

「…自分で帰ります」

「だめ危ないから」

しばらくして黒い車が私達の目の前に止まった。竜胆さんが顔をひょっこり覗かせる。しばらく蘭と話したあと車に乗るよう誘導される。乗る直前蘭に名前を呼ばれたような気がした。振り向くと驚いた顔をして私に手を伸ばしている蘭がいた。行き場のない手を引っ込め、真剣な顔をして「絶対また好きにさせるから」そう言った。後i日、病院でカウンセリングや検査を受けた。毎日毎日花を持って蘭が来てくれた。病室は花でいっぱいだ。体調を確認してくれる看護師さんも毎日増えていく花には苦笑いだった。蘭は職場の話や竜胆さんの話をしてくれた。仕事が上手くいっていて良かった。

退院まであと数日のある日、仕事の合間を縫って来てくれている蘭は私の病室で寝てしまった。「蘭」と頭を撫でる。ガバッと起き上がって目の見開いた蘭と目が合う。そっと蘭の手を握る。

「私、蘭のこともうちゃんと触れるよ、今までごめんね」

ぽろぽろと涙をこぼし始めた蘭に手を握り返された。

「良かっだ、ほんとに」

「まだハグは怖いけどね」

そっと蘭の涙を拭う。

「俺の事…好き?」

「ちょっとね、蘭って、まだ私の事好きな「好きに決まってんだろ」

食い気味に答えられると笑ってしまう。恥ずかしそうに笑う蘭に心が暖まる。ちょっと、と言ったが私はもう蘭のことが大好きなのかもしれない。

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