テラーノベル
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「なんでこのアイドル人気なんですかね。そもそもブスだし、不思議ちゃんキャラとか見てて頭痛くなるし
そもそもくだらないアプリで1曲人気出ただけでしょ?
好んで見るのと見させられるでは違うから。もう出んなマジ」
朝から情報番組に毒を吐く本心(ほし)。ぽわーっとしている優穏(ゆお)は
本心(ほし)ちゃん、また難しいこと言ってる
と思ってニコニコしていた。社用車と愛車の間の車で優穏を学校へ送る。
その途中であの黄色いオープンカーが目に入る。
黄色いオープンカーが路肩に停まったので、追い越して本心も路肩に車を停める。運転席から出る。すると
「おぉ〜!針鼠さぁ〜ん!」
と白髪に毛先がピンク、そして長髪という派手髪のアメリカと日本のハーフ、レオンが
本心に向かって笑顔で手を振る。
「朝から…。喉に拡声器でもついてんのか」
うるさいな、声デカいなという意味の毒である。優穏の座っている本心は後部座席のドアを開ける。
「お待たせいたしました」
「ありがとう」
優穏が車から出る。
「Hi!! Girls!!」
という声にギロッっとした目で振り返る本心。
「おぉ〜。怖いって。可愛い顔が台無しだよ?」
「安物のチェーンがぶつかる音がひどいわ」
チャラチャラしすぎだろという意味の毒である。
「お初にお目にかかります。私(わたくし) 黒白家(にしきけ)のお坊っちゃまに仕えさせていただいております。
百噛(ももがみ)レオンと申します」
と先程と同様の人物とは思えないほど丁寧な挨拶をし、低くお辞儀をするレオン。
「さっきのチャラ男と同じ人物か?」
と言う本心に、お辞儀をしたまま顔を本心のほうに向けて
「これでも一応しっかり執事してるのよ」
と笑顔でピースするレオン。
「あ、チャラいわ」
「ご丁寧にありがとうございます。私(わたくし) 神亀善(しきぜん)優穏(ゆお)と申します。
うちの針鼠とは親交がおありなようで」
「はい。付き合ってます」
思わずレオンのお尻を蹴る本心。
「Ouch!!」
「付き合ってるわけありません」
「冗談じゃないですか。アメリカンジョーク」
「ここは日本だ」
「アメリカのお方なんですか?」
「あ、いえ。私(わたくし)母がアメリカ人、父が日本人のハーフです」
「そうなんですね。どうりでお顔立ちが整っていらっしゃると思いました」
「お褒めに預かり光栄です。優穏お嬢様もとてもチャーミングですよ」
と優穏の手を取るレオン。その手を叩き落とす本心。
「Ouch!!」
「ちゃんと執事やってる発言どこいった」
「ちゃんと執事してますよ」
「どこがだ」
「じゃあ、僕のこと放っておくのやめてくれる?」
とレオンの後ろに現れた家守神学院の制服を着た男の子。
「おぉ!坊ちゃん!」
「おぉ!坊ちゃんじゃないよ。後部座席で放っておくのやめて?」
「坊ちゃん地味だから忘れちゃうんですよぉ〜」
「「どこが執事としてしっかりしてるん?」」
本心と坊ちゃんがハモる。
「あ、ご紹介します。私(わたくし)が支えさせていただいている黒白家(にしきけ) の坊ちゃん
黒白家守(まもる)坊ちゃんです」
「黒白家守です。よろしくお願い致します」
頭を下げる守。
「ご丁寧にどうもありがとうございます。
私(わたくし)が支えさせていただいている神亀善(しきぜん)家のお嬢様、神亀善優穏(ゆお)お嬢様です。
そして私(わたくし)が執事をさせていただいております、針鼠本心と申します。よろしくお願い致します」
と頭を下げる本心。
「神亀善優穏です。同じクラスでしたよね?よろしくお願い致します」
と笑顔で頭を下げる優穏にドキッっとする守。
「坊ちゃぁ〜ん。優穏お嬢様に惚れたなぁ〜?」
鋭すぎるレオン。
「なっ!」
「I’m a psychic.(オレにはお見通しだぜ?)」
小声でやり取りする守とレオン。
「では学校に行きましょう。黒白家さん」
「あ、はい!」
と一緒に正門に向かう守と優穏に
「「気をつけていってらっしゃいませ」」
とお辞儀をして見送る本心とレオン。顔を上げる2人。レオンは本心のほうを向き
「お茶でも行く?」
と笑顔で言う。
「…奢りなら」
「しゃー!あ、どうする?1回帰る?」
「あぁ〜。1回帰ってお昼とかでもいいかも」
「オッケー?じゃ、LIMEして?」
「オーケー」
「See you later!!」
と一旦帰ってからお昼ご飯のとき合流することにした2人。
一方下駄箱で上履きに履き替え、教室へ向かう守と優穏。
教室に入り、それぞれがそれぞれ近くの席の人と話したりしている中
担任の先生が入ってきたので全員席に着く。
「えぇ〜。おはようございます。2日目ということで、まだ少し緊張感はあると思います。
なので、入学式後に軽く顔合わせはしたと思いますが、1年間このメンバーで「は組」でやっていきますので
改めて軽く自己紹介でもやって緊張感を少しでも解して、全員のことを少しでも知れたらと思います」
ということで五十音順で自己紹介していく流れとなった。
「古賀野(こがの)英得甘(えとあ)でぇす。父は映画監督、古賀野英彦(ひでひこ)
祖父も映画監督の古賀野智英(ともひで)でぇす。なので子どもの頃から様々な映画を見て育ちましたぁ。
趣味という趣味はないんですがー、映画は人よりは知っているほうかと思います。よろしくお願いしまーす」
綺麗な黒髪のミドルヘアーを揺らしながらイスに座る英得甘。ほんの少しダルそうに見える。
「神亀善(しきぜん)優穏(ゆお)と申します。ご存知かはわかりませんが
実家が「神付亀(かみつきがめ)」という旅館を経営しております。
私も趣味という趣味はありませんが、お琴と書道は少し嗜んでいます。よろしくお願い致します」
軽く頭を下げてイスに座る優穏。
「黒白家(にしきけ) 守(まもる)です。うちは錦家具という家具屋をしています。
趣味はゲームです。やっているゲームやっていないゲームはありますが
やっていないゲームでも、ある程度知っていると思うので
ゲーム好きの人仲良くしてください。よろしくお願いします」
とにかく地味な守がイスに座る。
「福和呑(ふくわど)休恵(やすめ)です。えぇ〜っとぉ〜。うちは和服店を営んでいてぇ〜。うぅ〜んっとぉ〜。
ホラー映画とか怪談とかが好きです。怖いの苦手な人ぉ〜。仲良くなりましょ〜」
ゆったりとマイペースな自己紹介に担任の先生を始め、クラスメイトがゆっくり頷いて
最後の最後「ホラー好きなのに、怖いの苦手な人、仲良くしてください」と言った後
担任の先生を始め、クラスメイト全員の頭の上に「?」が出た。
そんなこと気にもしないで眠た気な目で、でも口角を上げた微笑みでイスに座る休恵。
「矢野越(やのこし)丞(すすむ)です。実家は…寿司屋やってます。
ずっとサッカーをやってきたので、高校でもサッカー部に入る予定です。よろしくお願いします」
ヤンキーではないものの、反抗期で親への反抗心が染み付いているのか、少し怖い印象の丞もイスに座る。
「我司昇(わしの)天幸(あこ)いいます。うちは大阪で和菓子屋やっとります。
名前を「わしの」と言います。そのままやなぁ〜って思いますよね。
父も母も兄も東京さんで有名な「まるかも」さんをライバル視して
「まるかもんとこの息子と仲良ぉなっていろいろ聞き出してこい。
んで、うちが右に出るものがいない日本1の和菓子屋になったるんや!」とか息巻いてましたけど
僕はそんなこと思ってないんで、ぜひ仲良くしましょ。
ってゆーても鴨条院(おうじょういん)やから、もうこのクラスにはおらんのやろな。
ま、他のクラス探してみますわ。仲良ぉしてください。よろしくお願いします」
ゴリゴリの関西弁だが女の子みたいに可愛い顔した天幸もイスに座る。
「はい。という感じでザックリとですがクラスメイトの顔と
軽い人となりはわかったんではないかと思います」
「人となりはわからんやろ」
と呟く天幸。
「どうしましょうか。このまま五十音順で過ごすというのもありですし
今日席替えして過ごすというのもありだと思うんですが」
と担任の先生が言うと
「はいはい!席替えしたい!このままはおもんない」
と天幸(あこ)が大阪弁丸出しで手を挙げる。
「皆さんはどうでしょうか?」
担任の先生がクラス中を見るとほぼ全員頷いていたので
「じゃ、席替えしましょうか」
ということで席替えをすることになった。
「席も変わったということで、改めてこのメンバーで仲良くやっていきましょう。
ということでこれから係決めと、教科書の配布を行っていきたいと思います」
という一方、お昼になり、私服に着替えてレオンにLIMEでメッセージを送る本心(ほし)。
「どこで待ち合わせします?」
そのメッセージを受け取ったレオンも私服に着替えており
車のキーを人差し指でクルクルと回し、手の中に入れ包む。愛車に乗り込み返信をする。
「車で迎えに行きますんで、駅前とかにいてもらえたら」
というメッセージを受け取って
「は?車?」
と呟くが、言われた通り駅に向かう本心。しばらく待っていると
アメ車特有の排気音を携えて、あの派手派手しい黄色いオープンカーが現れた。
左ハンドルの運転席には派手なシャツにサングラスという出立ちのレオンが座っており
本心を見つけると手を挙げる。
「うわぁ〜。なんか知り合いだと思われたくないわ」
と言いながら近づいていく。するとレオンが運転席から降りて助手席のほうに回る。
「乗ってください」
と車が来ていないのを確認してドアを開ける。
「あ、どうも」
助手席に座る本心。レオンも運転席に座る。
「シートベルトしてくださいねぇ〜」
「はいはい」
「じゃっ…」
左右前後確認しながら
「出しますねぇ〜」
と車を動かすレオン。
「どこ行くんですか」
「んん〜?決めてない」
と笑うレオン。
「はあぁ〜?」
「針鼠さん行きたいとことかないですか?」
「急に言うなよ」
「すいませんすいません」
「えぇ…行きたいとこか…。あと奢りだから高いとこ」
助手席でスマホを出す本心。
「高いとこ。ま、いいですけど」
「んん〜…」
「あ、駐車場あるとこで」
「めんどくせぇ〜」
と言いながら一応駐車場があるところを調べる。
「あ、あとできたら海か山が見えて、自然が豊かで夜景が綺麗で」
「注文多いな。しかも夜景意味ないだろ」
「今後針鼠さんと夜を過ごすときに」
「1人で行け」
「毒舌ぅ〜」
そんなこんなで少し遠くのいい感じのレストランへ行くことになった。
お昼時だが都心から少し離れているし、少しお値段が張るので人は少なかった。
なので周りに気を遣うこともしなくていい。
「いいとこですね」
「たしかに」
「とりあえず注文しちゃいますか」
「あぁ〜。奢りならお酒飲みたいわぁ〜」
「あぁ〜、残念。お酒飲みたいなら夜付き合ってください」
「…。考えとく」
「1歩進展!」
「うるさいわ。人少ないとはいえ」
「あ、すいませんすいません」
本心にも周りにも頭を下げるレオン。
「私はぁ〜…。ステーキでいいや」
「あら素敵」
「おもんな」
「アァ〜イ(I)…パスタでいいかな」
それぞれ飲み物やサイドなども決めて店員さんを呼び、注文を済ませる。
「いいんですか?」
レオンがスマホをいじる本心に聞く。
「なにがですか?」
「なんかいろいろありましたよ?割と高めのコースとか。高いのがいいならそっちのほうがーだし」
レオンは両手を軽く挙げ、両手の人差し指と中指を立て、ピースサインのような手を作り
その立てた2本の指をクイクイと曲げながら
「“映え”るんじゃないですか?」
と言った。
「あぁ〜。でも私コース好きじゃないんですよ」
「Oh!! Me too!!」
「うわ。ほんとに言うんだ。Me tooって」
「いやぁ〜、気が合いそうですね!」
と笑うレオンを無視して
「今ので一気に中学とか高校の授業思い出したわ」
と斜め上を見ながら嫌な顔をする本心。
「あと死ぬほど映えとか興味ないし」
「あ、そうなんですか?」
と言った後また両手を軽く挙げ、両手の人差し指と中指を立て
ピースサインのような手を作り、その立てた2本の指をクイクイと曲げながら
「“イマドキ女子”ってみんな“映え”好きなのかと」
「気色悪い風習私はやらん」
「気色悪い」
思わず笑うレオン。
「みんな「映えぇ〜」とか言って写真撮ったり
自分のブサイクな顔面加工したり、整形したりして、ほぼみんな同じ顔になって
SNSのフォロワー気にしたり、SNSの反応気にしたりしてんの見ると、なんかの宗教かと思うわマジで」
「なんかいいですね、針鼠さん」
「また口説き文句ですか。どうもありがとうございます(棒)」
「いえ。口説き文句とかではなくて」
声のトーンが違くてチラッっとレオンを見る本心。すると真っ直ぐな目をして優しく微笑みながら
「なんか飾ってないのが落ち着くというか。素敵です」
とガチのトーンで言うレオンがいた。
チャラさで隠れてたけど、イケメンなんだな
とほんの少し見直し、どこかほんの少しドキッっとした本心。
「あ、どうも。ありがとうございます」
「お?惚れました?」
とすぐさっきまでのチャラいレオンに戻ると
「はぁ〜…。見直した自分をビンタしたいわ」
と視線を上に向けて言う本心。
「え?やっぱ見直してくれてたんですか?嬉しいなぁ〜」
「即時撤回しました。廃案です」
「ていうか英語苦手なんですか?」
「流すなよ。あと今さら掘り返すのかよ。…まあ、苦手ではありました」
「じゃあ自分と仲良くしてれば自然と英語が身につきますよ!」
と人差し指を立てるレオン。
「なんだその聞き流ししてれば英語が身につく。みたいなほぼ嘘の謳い文句の教材みたいなやつ」
「生きた英語ですよ」
「それも謳い文句に出てくるぅ〜。9割嘘ぉ〜」
「いや自分のはほんとですから!私ハーフ。母アメリカ人」
「なんでカタコトなんだよ。日本語教えたるわ。生きた日本語」
「Oh!!ありがたい!」
「嘘つけよ」
そんなこんなで店員さんが頼んだ品を持ってきてくれてお昼ご飯を食べた。
「美味しかったぁ〜」
「さ、帰りますよ」
「え?もうちょっと喋ってからでも」
時計していない左手首を人差し指でトントンとする本心。
「奢っていただいて、連れてきていただいて申し訳ないですけど
これは百噛(ももがみ)さんにも関係ありますので」
「え?」
「お坊っちゃま、そしてうちのお嬢様の話です」
「まだ全然大丈夫でしょ」
「今日はおそらく自己紹介、軽い説明だったり係決め、教科書類の配布
係の顔合わせといったところでしょうから昼前後には終わるはず」
「え。マジですか?」
コクコクと頷く本心。
「ヤバすぎる!」
事態に気づいたレオンはお財布から2万円を取り出し、伝票と共に店員さんに
「This payment includes tip!! Ah〜…Thank you!!すごく美味しかったです」
と英語と日本語が織り混ざったお礼をし、即座にお店を出た。本心も
「美味しかったです。ありがとうございました」
と告げてお店を出た。エンジンをかけて出発準備万端のレオンの車の助手席に乗り込む。
「すいません。エスコートなしに」
「そんなとこ謝ってる場合じゃない」
「たしかに。出しますね。少し運転荒くなるかもしれませんが、ご了承くださいね」
「はいよー」
車を出すレオン。来るときは法定速度よりだいぶ遅くゆったりと流していたが
帰りは法定速度スレスレで飛ばすレオン。
「あ、ナビに目的地入れてもらっていいですか?」
「私が?」
「はい。どこで降ろしたらいいかわからないので」
「あぁ、そーゆーことか」
とナビを操作しながら
「あ、すいません。遅れましたけど、奢っていただき、ありがとうございました。ご馳走様でした」
とメーターをチラチラ見ながらハンドルを握るレオンに頭を下げる本心。
「あ、いえいえ。誘ったのは自分ですし、むしろ来てくれて嬉しかったです。
こちらこそありがとうございます」
と笑顔で言うレオンに
え。めっちゃカッコいいじゃん
と思う本心。
「それに女性を誘ってご飯行ったら男が奢れって父が言ってたんで」
「お父さんには申し訳ないけど、考古学並みに古い考えじゃん」
「ふっ。毒吐きますねぇ〜」
と笑うレオン。法定速度スレスレを飛ばして都心へと戻った。目的地について車を停める。
「じゃ、すいません。ありがとうございました。奢っていただいて、送っていただいて」
「いえいえ。こちらこそありがとうございました」
「じゃ。失礼します」
「No no no.」
人差し指を左右に振るレオン。
「“また”でしょ?」
と笑顔で言うレオン
「チャラい」
と言う本心。
「…また」
「はい!てか、この後すぐ会いますしね」
「あぁ。たしかに」
「See you later!!」
「はあ。シーユーレイター」
と助手席のドアを閉める本心。歩いていって振り返ると、運転席からレオンが出ていて
車に寄りかかりながらスマホをいじっていて、本心が振り返ったのに気づくと笑顔で手を振ってきた。
本心は眉間に皺を寄せて追い払うような手つき、手の甲をレオンに向けてしっしっとするように手を振る本心。
そしてそれぞれの車で家守神学院へと迎えに行った。
「うわっ。めっちゃ派手な人いる」
「ほんとだぁ〜。誰?」
「海外の方?誰かのお兄さんかな」
と生徒が噂するほど派手で目立つレオン。目が合った女子高生にサングラスをズラし手を振るレオン。
「ヤバッ!めっちゃカッコいいんだけど」
「マジだ!めっちゃカッコいい」
と少しざわめく。
「あんま目立たないでよ。恥ずかしいから」
といつの間にかレオンの側に来ていた守。
「おぉ!坊ちゃん!いつの間に!」
「なんで私服?」
「あぁ。ちょっと出掛けてて時間なくて」
「まあいいけど。せめてもっと地味な服にしてよ。恥ずかしいから」
「えぇ?カッコよくないですか?」
とその場でクルッっと回ってみせるレオン。
「いや。まあ、カッコいいけど」
「ねぇー?私オシャレでカッコよくて素晴らしい執事なんですよ」
「素晴らしい執事なら時間しっかり考えて着替えてきてほしいけど」
「痛いとこ突きますねぇ〜。さ」
助手席のドアを開けるレオン。
「どうぞ。帰りましょう」
「ありがとう」
ドアを閉めるレオン。
「あ、黒白家(にしきけ) さん。また明日」
と優穏(ゆお)が守に手を振る。
「あ、神亀善(しきぜん)さん。はい。また明日」
守も助手席から頭を下げつつ手を振る。優穏はレオンにもお辞儀をする。レオンは笑顔で手を振り
「優穏お嬢様、またですぅ〜」
と砕けた言い方で言う。レオンは運転席に乗り込み
「優穏お嬢様とはどうなのさ」
と守に近寄り聞く。
「え?なんもないよ。昨日の今日じゃん」
「ま、それもそうか」
「ま、でも席隣になったよ」
「Really!?良かったじゃーん」
と発車せずに盛り上がっていた。優穏は本心の乗っている車に近づく。
優穏がある程度まで近づいてきたら外に出て
「お帰りなさいませお嬢様」
と出迎える。
「ただいま」
本心は一度家に帰って執事の服、燕尾服に着替えて来ていた。本心は後部座席のドアを開ける。
「ありがと」
優穏が入り
「お閉めします」
と言ってからドアを閉める。そして運転席へ。
「本日学校はどうでした?」
「今日は軽い自己紹介と席替え、係決め、教科書の配布、係の顔合わせでした」
「やっぱり。…お、席替えですか」
「うん。本心ちゃんのお知り合いの執事さんの」
「あぁ。別に知り合いってほどでもないですよ。百噛(ももがみ)レオンさんですね」
「そう。百噛さんの黒白家(にしきけ) さんがお隣になりました」
「お、おぉ。なんという縁」
「あとご近所さんはなかなかおもしろそうな人たちで、これから学校が楽しみです」
「おぉ〜。お嬢様が楽しみならそれが一番です」
と笑顔の優穏を見て、思わず口角が上がる本心。
「あ、でも、もしお嬢様に変なことや嫌なことをする、言うやつがいたらすぐに言ってくださいね?
消しますので」
怖い笑顔の本心。
「ん?うん」
消す?嫌なところとかをかな?本心ちゃんそんなことできるんだ。すごいなぁ〜
と微笑みながら思う本心。
「じゃ、車出しますね。動きます」
と言って家へと帰っていった。