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ルッキーナの案内で、ヌーオスタ村へと近づいていくチーム莉子。
「あの、みなさんは溶岩魔獣ってご存じですか?」
「ご存じないなぁ。温泉饅頭なら知ってるんだけど。美味しいよね! こっちにもある? 火山がそこら辺にあるから、温泉とかもありそうだね!!」
集団に向かって行われた呼びかけを自分のものだと思い飛び掛かり、勝手に会話のキャッチボールを始めて相手にすっぽ抜けた球を投げ返す。
ダメなおっさんが使う108ある必殺技の1つである。
「みみっ。ルッキーナさんを見つける前の階層で、マグマアニマルって言う燃える溶岩の狼なら見たです! みっ!」
「あー。そうだったにゃー。芽衣ちゃんのおじさんがやっつけてくれたヤツー!!」
「……やっぱり何も見てないです。みっ」
「にゃははー。ごめんってー、芽衣ちゃん! 本当に君はおじさんが嫌いだねぇー」
「みみっ。おじ様は是非、強いモンスターとの戦闘中に豆腐の角に頭ぶつけて大けがして引退して欲しいです。それが叶ったら、芽衣がどんなモンスターでも倒すです」
「あー。その発想は木原監察官の姪っぽいー! にゃっはっはー」
誰かルッキーナの話をちゃんと聞け。
彼女は村が占領されているのだ。
ピクニック気分で歩いているチーム莉子のノリで話を逸らすんじゃない。
「えっとね、芽衣ちゃんも言ったけど、燃える溶岩が生き物みたいになったヤツなら、ここに来る前に倒して来たよ?」
「す、すごい! それ、多分溶岩魔獣です! 私たちホマッハ族は熱に強くて、ええと、皆さんの世界の単位だと、80℃くらいまでなら耐えられるんですけど。溶岩魔獣は燃え上がると100℃近くなってですね。身動きが取れなくなってしまうんです」
まず、現世と国交があるためだろうか、スカレグラーナでは現世の単位が通じるらしかった。
非常に助かる。
ルベルバックで現地通貨の帝国ミラスとか言うのが出て来た時は結構イライラしたものだ。
そして何よりも驚くのは、ホマッハ族の身体能力。
ルッキーナが言うには、俊敏性に難のある種族のため、戦いになるとてんでダメだが防御力には少しばかりの自信があると言う。
80℃の気温で平然としていられるのは、少しどころかもっと自信を持って良いと思うのだが。
「六駆くん、どうかなぁ? 倒せそう? マグマアニマル。あっ、溶岩魔獣か」
「うーん。倒す方法はいくらでも思い付くんだけどね。ルッキーナちゃん、村の周りに何匹くらいいる? あと、村って氷漬けにしても平気?」
「ちょっとぉ、六駆くん! 平気な訳ないじゃん!!」
「あ、いえ。1時間くらいなら大丈夫ですよ! ホマッハ族は打たれ強いので!!」
ホマッハ族に戦いを教えたら凄まじい戦力になりそうな予感しかしない。
ルッキーナは続けて「魔獣は4匹ほどいました」と、記憶をたどってくれた。
六駆は「なるほど」と頷く。
「クララ先輩。ここは僕と先輩でやりましょうか」
「おりょ? 莉子ちゃんとじゃないの? あたしでいいのかにゃ?」
「はい。莉子の手持ちのスキルじゃ炎属性と相性が悪いので。別に莉子だって分かってくれてますよ。ねえ、莉子さあああっ!? なんで!? 莉子さぁぁぁん!?」
小坂莉子、「むしゃくしゃしてやった」と言う犯行動機で六駆をリッコリコにする。
発想がどんどん六駆にコミットしていく。
御滝ダンジョンを攻略していた頃の初々しかった君にはもう会えないのか。
「ふぅーんだ。分かってますよー。戦略的な内容に私情を持ち込むのはダメってことくらいさーっ! ふぅーんだっ!!」
「莉子ちゃん、莉子ちゃん。言ってることとやってることが違うにゃー。六駆くんが受ける必要のないダメージを蓄積させてるよー」
スカレグラーナの初陣は芽衣と組み、今度はクララと組むと言う六駆。
莉子さんの乙女心は複雑怪奇な構造をしているので、揺れる揺れる。
胸部の耐震構造がしっかりしているため、感情くらいは好きに揺らしていて欲しい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「おおー。いるにゃー。マグマアニマル、燃えてないバージョン!」
「面倒くさいですね。溶岩魔獣で統一しますか? 多分、こっちが正式名称でしょうし」
燃えていないマグマアニマルは、溶岩に魂を宿す無機物の狼。
無機物のくせに鼻が利くらしく、六駆とクララが隠れている岩陰に4匹のうちの3匹が近寄って来た。
「これは好都合! クララ先輩、新スキルですけど大丈夫そうですか?」
「まっかせてー! パイセン、異世界に来ると何故かコンディションが上がるんだよね!!」
椎名クララ。異世界◎のステータスを得る。
「では、手筈通りにお願いします」
「了解だにゃー! てぇぇぇぇい! 『極光の黒赤鳥』!!」
クララの銀弓『ディアーナ』から、美しいオーロラと共に氷を身に纏う駝鳥が放たれると、一直線に敵に向かって駆け抜ける。
溶岩魔獣たちは不意打ちに対応しきれず、一瞬で凍りつく。
だが、ヤツらは凍ってからが本番である事を忘れてはならない。
「クォォォォォンッ!!」
溶岩魔獣がマグマアニマルへと変態しようと核を燃やす。
そのタイミングを六駆は待っていた。
核を燃やすタイミングで、ヤツらは数秒の間完全に無防備になる。
有栖ダンジョンの戦いでそれを知っている六駆が、極上の隙を見逃すはずもなかった。
「破られたままじゃ、スキルのイメージが低下しますからね! これが全力の極寒だ! 『虚無の豪雪・二重』!!」
六駆の氷スキルが炸裂した。
有栖ダンジョンでは5割の力で撃ったが、今回はほぼ全力での発現。
近くに来ていた3匹と少し離れた残りの1匹をまとめて冷凍保存する。
もちろん、ヌーオスタ村も丸ごと凍り付いていた。
「莉子! 出番だよ! よろしく!!」
「はぁーい! もぉぉ、六駆くんもちゃんと言ってくれればいいのにぃ! わたしにも出番があるなら、別に怒らなかったんだよぉ?」
「みみっ。莉子さん、ルッキーナさんが泣きそうです。早くスキル使ってあげてくださいです」
「あ、いけない! 『豪熱風』!! 広域展開!!」
莉子は村の上空に熱風の塊を撃ち上げる。
そこに向かって六駆が仕上げの一発を放った。
「『大降雨』!! 莉子の『豪熱風』にぶつけて! 即興合体スキル! 『温泉降雨』!! 遠隔発現!!」
凍ったものに急激な熱を加えると村人が大変な事になるくらいは六駆にも分かる。
もちろん六駆は化学も科学も知らないが、長年の戦いの経験で学んでいた。
それから、六駆によるじっくりゆっくり凍らせた村の解凍作業が続く。
50分ほどでそれは完了した。
ホマッハ族の冷凍されて生きていられるリミットが1時間。
もっと余裕をもってやれ。
ルッキーナが心配のあまり顔を伏せたのが20分前のことである。
「あ、ありがとうございます! 小坂さん、椎名さん! それから木原さん!!」
「当たり前の事をしただけだよぉ! ほら、村に行ってあげて?」
「はい! みんなー! とっても頼りになる人たちを連れて来たよー!!」
嬉しそうに駆けだすルッキーナ。
一方、六駆おじさんは自分の名前だけ呼ばれなかった事に「あの子、もしかして僕がやっちまいそうになったことに気付いて!? ……恐ろしい子!!」と、震えたらしい。
氷を操るのに震えるとは、器用な男である。
コメント
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ああ、177話読み終えました!チーム莉子の連携が本当に気持ち良かったですね。特に六駆さんが「一旦全部凍らせてからじっくり解凍する」っていう地味だけど確実な戦術を選んだところ、さすがベテランだなと。そして莉子さんの嫉妬からのリッコリコ、笑いました。芽衣ちゃんの冷静なツッコミもいい味出てるし、ルッキーナさんが20分間俯いてた描写で村人の安全がギリギリだったのが伝わってきてヒヤリとしました。即興合体スキル「温泉降雨」も上手い解決策で、こういう「その場で編み出す」のが好きです。