テラーノベル
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放課後、校門を出ると、春の風が制服のリボンを揺らした。
人の波に紛れて歩いていると、少し先に見慣れた背中が目に入る。
「……悠真さん?」
声をかける前に、その人が振り返った。
就活用の鞄を肩にかけた悠真が、驚いたように目を丸くする。
「妹ちゃん? また会ったな」
思わず足を止める咲。
偶然――いや、本当に偶然なのに、心臓は妙に落ち着かない。
「今日は面接じゃなくて、図書館寄っただけ」
軽く説明する悠真の姿に、どこか大人びた雰囲気を感じてしまう。
ほんの数歩並んで歩くだけ。
それだけで、咲の一日が特別に変わってしまう気がした。
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