「私が…私なんかが…」
雲の上、神々しい光に包まれた空間のなか少女のような見た目のした、神、『アマリリス』がただ一人座っていた
「救う資格なんて…私に…」
彼女は自身の才能のなさに打ちのめされていた
他の神より力を持たず、空は早く飛べず、日々導く人の運命をごっちゃにし、死後の天秤にだってまともに人を比べるどころか乗せることもできない
加えて少々頭も弱い
結果を残す周りに対し、劣等感を抱き、そして自らを卑下していた
「私に…才能があれば…」
彼女はなぜ神として生まれてきたのか、人を導く立場でありながらこんなにも不甲斐ない自分に人を導く資格などあるのか、日々自身に問い詰め、彼女は思い詰めていた
「もう…どうすればいいの!」
こんな自分にイラつき、思わず声を荒げると地上では小雨が降り始めた
「雷さえも落ちないのか…」
自身の力のなさをまた認識し、落ち込んでしまった
『こっちへおいで』
突然誰かが心に語りかける
『悩めるものよこちらへおいで』
声のある方へ彼女は向かった
「これは…!」
そこには一本の木がなっていた
その木にりんごのような見た目をした美味しそうな果実がなっていた
〜生まれ変わりの果実〜
神々の間ではそう呼ばれている
一口食べれば、その人は一番ほしいものを得る代わり、一番その人にとって大切なものを失う
多くの者は立場ゆえ、見向きもしない
だが、彼女は違った…
「今の…私に失うものなんてないよね…?」
背伸びをし、果実を手に取る
本当に食していいのか、疑念が残り、惑わす
心臓の鼓動が高まる…
それらを振り切り彼女は一口その実を口にした
「私に、才能を…もうこんな思いをさせないほどの…才能を…」
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