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コンソメパン
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皆がエントランス・プラザに集まったのは、岩本との電話が終わったおよそ15分後、時刻は間もなく18時になろうとしていた。
人々から隠れるようにエントランス・プラザの端に寄る。
💚「みんな、呼び出してごめん」
💛「いや、緊急事態だろ、どう考えても」
🩷「異能がおかしいってこと、だよね?」
💚「うん。俺は電脳空間に入ろうとするとノイズが走る。電気の方も試してみたけど、静電気くらいの小ささになってた」
渡辺は、花びらの数がいつもより少ない。大体、3分の1以下ほどしか出ない。目黒は蔓が背丈ほどしか伸びず、数も一本だけ。
岩本は出した炎が弱く、深澤は鋼でナイフを作ろうとするも形にならない。宮舘は氷の結晶を作れるけれど冷気が出てこない。
🩷「俺さ、いつも粒子転移する時ってその場所の座標を決めてから飛ぶのね。だから、住所とかの情報がない、全然知らない場所には飛べないんだけど……その座標がズレるしめちゃくちゃになるから、移動ができない」
向井は岩を出す事はできるけれど手のひらサイズまで、重力の方も浮き上がる事はできず、重力を上げても少し重くなる程度。
🩷「でも、ラウールは普通に使えてたよな?」
🤍「うん。僕、この鍵の部品、実はクリエイトで作ったんだ」
言いながらワンダー・パビリオンで作った鍵を手に持ってみんなに見せている。
🤍「この翼、なかったから作ったの。でもその時は、普通に作れたよ?」
💚「え、何その鍵、凄いね」
🤍「でしょー。これね、ワンダー・パビリオンで性格診断した後に貰えるんだけど、自分でカスタマイズできるんだよ! 僕はこれだけど、康二くん達のも凄いよ」
ラウールに言われ、向井も佐久間も、深澤も岩本も宮舘も、皆が自分でカスタマイズした鍵を取り出して阿部に見せる。
💚「え、すご! みんな全然、違う」
🤍「結構パーツの種類多くて、かなり自分の好みにできるよ」
💚「……いいなー」
🤍「でね、この翼が開くようにしたかったのと、歯車と噛み合わせたかったから作ったの」
🧡「じゃあ、ラウだけは普通ってこと?」
💚「ねえラウ、今、ここで何かクリエイトできる? 小さいものでいいんだけど」
🤍「んー、ちょっとやってみるね」
鍵を腰ベルトにつけてから、ラウールは手のひらを上に向けて出す。
そこに白い光がぽうっと灯り、光が弾けるとラウールの手には小さなライトが乗っている。ラウールはライトを持ち、ボタンを押した。けれど明かりが点かない。
🤍「ダメだ。構造はちゃんとしてるのに光らない。どっかでミスしてるんだ。頭の中の設計図には問題ないのに、出力が上手くできてない」
💚「……つまり、全員の異能に変化が起きてる。でも、パーク自体には何も起きてないし、他の来園者にも変わった様子はない。多分、俺たちだけ」
💛「ってことは、明確に狙われてんな」
💜「だね。とするなら、あの招待状から怪しかったってことか」
🧡「署長もグルってこと?」
💛「まさか。多分、使われたんだろ。俺らが署長の滝沢さんと親しいのは分かるだろうし。署長から渡された招待状なら疑わない。それに、プレオープンの招待状を署長が受け取ることに疑問もないだろ。警察署の署長にだって届く可能性はある」
💚「そう。だから相手は、俺たちの事をよく知ってるか、よく観察してた人物ってことになる」
💜「ま、今は誰が、とかは後にして、原因を探らないと」
💚「そうだね。とにかくみんな、異能がいつもと違うっていうのは共通だよね?」
❤️「いつもより出力が上がらない感じ」
🖤「俺も。高校の時に戻ったみたい。あの頃はホントに、このくらいの蔓しか出せなかったし、木の記憶を辿るのも二日くらいが限度だったから」
💚「え? でもめめ、あの時、一週間くらい辿れてたよね?」
🖤「あれ多分、あとから気付いたんだけど、増幅の異能のせいだと思う。その感覚があったから、今くらいまで異能使えるようになったんだけど」
🤍「じゃあ、異能が減少したっていうこと?」
💚「使える分の異能を考えたら、そうなるね……誰かに接触されたりは……」
確認するようにみんなを見回すけれど、ないと首を横に振るだけだ。
💚「そうだよね。じゃあ、どこで? ちょっと一回、みんなの行動を整理させてほしい」
持っていたショルダーバッグから、折り畳み式の小型タブレットを取り出す。ラウール特製で、広げれば一枚の画面として違和感なく書き込めるため、持ち運び用として阿部が愛用しているものだ。
スタイラスペンを取り出し、一班ずつ時系列を拾っていく。
💚「えっと、俺たちは確か、ゲートを通ってパラソルのアトラクションに乗ってからルミナシア・ステーション」
🖤「そう。そこでステーションパスもらってる」
💚「そこから、テラリウム・エルシア、アクアリウム・エルシア、日輪のロゼット……その後は、トラムに乗って星空ホール。ここで佐久間達と合流だ」
🩷「だね。阿部ちゃん達のこと見つけたから入った」
🧡「でもさっくん、すぐ先行ったから合流は短かったな」
🤍「僕、もうちょっとゆっくりで良かったのに」
💜「佐久間があんなとこで大人しくしてるわけないじゃん」
🩷「俺だって大人しくする時くらいあるって!」
💙「仕事でもない遊園地で、ぜってー無理だろ」
🩷「だよねー」
🧡「納得するんかい」
💚「えっと、その後はフェアリー・プロムナードに行ってから、ノクターン・ガーデン。この時、めめの蔓がおかしかったから、何か変だなって感じた」
自分たちの行動を順に追っていき、ひとまずこれで全て書き出せた。
次は、佐久間達だ。
🧡「俺ら、どこ行ったっけ?」
🩷「んー。なんかいっぱい乗った!」
🤍「ちょっと二人とも黙ってて。えっと、最初は三つくらい絶叫系のアトラクションに乗って、それからウンディーネの軌跡だね」
💙「あれか。湖ん中で見たやつ」
🩷「そうそれ。めっちゃ水ん中だった!」
🧡「てか最初、前じゃなくて後ろ行ったん、めっちゃビビッた」
🤍「もー! 先、進まないから二人とも喋んないで!」
🩷「……はい、すいません」
🧡「……喋りません」
佐久間も向井も、口にチャックをするような仕草をしてぴたりと黙る。
💜「お前ら、ホント懲りないよなー」
💛「時と場合を考えろ」
❤️「ご尤も」
大人組にまでとどめを刺され、佐久間と向井は少し離れたところにしゃがみこんでいじけてしまったが、今は相手をしている場合ではないので放っておいて話を続ける。
🤍「次がまたアトラクションに乗って……三つかな。それでグラビティ・スフィアに乗った」
💜「あれか。すっごい変な回り方してたやつ!」
🤍「ふっかさん達も乗ったの?」
💜「いや、ジェットコースターは好きだけどあそこまでぐるんぐるんなのはちょっと……照がすごい顔して見てた」
❤️「仏みたいだったね」
💛「いや、あれはそうなるでしょ」
💚「天球儀みたいで綺麗だなって思ったけど、やっぱ自転も公転もするタイプだったんだ」
🤍「その上で座席もぐるんぐるん」
💚「なるほど、グラビティ・スフィアね。言いえて妙かも」
🩷「ちょ、お前らだって脱線してるじゃねえか!」
🧡「俺らも混ぜてーな!」
ここで、復活した佐久間と向井が再び話に加わってきた。
🤍「じゃあ、ちゃんと憶えてること言ってね。次は、確かいろんなアトラクションを乗りまくったんだよね」
🩷「目についたの全部、乗った」
🧡「多分、右側ほぼ制覇やったな」
🤍「うん、僕もそうだったと思う。それから……そうだ、天空のダイヤモンドダスト。湖の向こうに見えたから、あっちまで一気に移動して乗ったんだよね」
🩷「あれもヤバかった。ふっつうの気球みたいなのだと思ってたら、急にドーンって!」
🧡「むっちゃ落ちたよなー」
🤍「あれはね、何が怖いって、落ちるの知らなかったことだよね」
💚「天空のダイヤモンドダスト、確か四基のうちの一つだけ落ちるって、トラムの情報に書いてあったと思う」
🩷「そう! しかも説明ないの! 落ちるって分かって落ちるのと、分かってなくて落ちるのってぜんっぜん違うんだよ」
🧡「あのキャストのお兄さん、今思い出すと、めっちゃいい笑顔で見送ってたんよな」
🖤「何も知らないで乗ってるなーって思ってたんだろうね」
🧡「あんな素敵な笑顔だったのに、ひどいっ」
🤍「それが怖かったから休憩しよーってグランド・テラス行って、秒でベンチから立って展望デッキに行ったんだよね」
🩷「足場を作るってやつ! あれも面白かったなー」
🤍「で、それから湖畔のフードストリートでご飯食べてから、阿部ちゃん達と会った星空ホールだよ。で、その時にトラム良かったよって言ってくれたからトラム乗って、降りたらふっかさん達と会って、鍵いいなって話になってワンダー・パビリオンかな。そこから出た時に、阿部ちゃんから電話がかかってきた感じ」
そこで締めくくられたので、阿部は走らせていたペンを止めた。
💚「……うん、ちゃんと揃ってるね」
書き留めたものと記憶が合っているのかを確かめるように画面を眺め、頷いた。
💚「じゃあ、次はふっか達」
💜「俺らは基本、ブラブラ散歩してたね。で、最初が鍵作ったワンダー・パビリオンだ」
💛「そっから昼ごはんか。鍵づくりに没頭して気付いたら時間経ってて」
❤️「そうだね。そこから、大時計塔に行ったんだよ。で、俺がオーロラ・シアターに行きたかったからトラムに乗ろうとしたら、佐久間達と会った」
💛「で、トラムに乗ってミラージュ・メイズ行って、オーロラ・シアター行って上映後に、阿部からの連絡」
🧡「え、全然、廻ってへんやん」
💛「いいの。俺らはゆっくり楽しめたから」
そこまで聞いて、再び阿部のペンが止まる。
💚「よし、これで書き出しは終わったね。三班の行動を見ても、特に食い違ってるところはなさそう。あとは、どこで何が行われていたか……」
🖤「あ。阿部ちゃんあれは? 電波が途切れたって言ってたやつ」
💚「ああ、ルミナシア・ステーションの。確かに、あれはちょっと変な感覚だったけど……」
そこまで言って、阿部がふと動きを止めた。何かを考えているような、集中しているような。どこか一点を見つめたまま動かない。
💙「阿部ちゃん、どうした?」
💚「電波、拾えなくなってる」
🩷「え?」
💚「今、みんなのスマホはこんなに近くにあるのに感知できない。あの時に途切れた感覚、あの時から阻害されてるんだとしたら……俺が他に違和感あったのは、トラムのINFORMATIONに乗った時だ。情報が二重に見えた。つまり、ノイズが入ったんだ」
🖤「そういえば、目、こすってたね」
💚「すぐに戻ったから疲れたのかなって思ったんだけど、情報を見るのはいつも電子の異能の時。電脳空間に行くのも電子の方。それと、電波は電気……あの時、違和感があった異能が今、使いにくくなってる。みんな、もう一回、異能の何が使いにくいか教えて!」
阿部に言われてもう一度、整理する。
渡辺は、花びらがいつもより少ない。目黒は蔓が伸びていかない。佐久間は空間座標がズレて正確に把握できない。向井は岩の生成はできるけれど動かせず、重力で浮遊できない。ラウールはクリエイトできるけれど、内部機構にミスが生まれて機能しない。深澤は鋼を出すことはできても形作れない。岩本は炎が小さく、普段のオレンジ色ではなく暗い赤色になっている。宮舘は氷の塊は出せるけれど冷気が出ない。
💚「その変化に該当する異変って何かなかった? 小さい違和感でもいいんだけど」
💙「花びら……だったら、フェアリー・プロムナードの最初。中に入ってすぐ、花びらが舞っただろ。あの時、なんか変だった。眩しかったんだと思ったけど、今は多分、違う気がする」
💚「確かに、あの演出、翔太の風花っぽかったね」
🖤「あ。俺はあれだ。あの、蔓に触って願い事ってやつ。変な感じした」
💚「ノクターン・ガーデンの? ……翔太のだと花びらは分かるけど、めめのは?」
🖤「俺いっつも、蔓を使う時とか木の記憶を辿る時って、お願いしてるんだよ。伸びてね、とか、記憶を辿らせてねって。だから多分、俺のお願いが届いてなくて、伸びきらないんだと思う」
💚「なるほどね。佐久間は?」
聞いたことをタブレットにメモしながら、阿部は佐久間の方を見た。
🩷「んー。座標のズレくらいかな。でも、そんなのあったっけ?」
🤍「あっ! あれじゃない? 星空ホールの最後のワープのとこ! あの時、佐久間くん、ふらついてたと思う」
🩷「そういや、そうだったかも」
🧡「ワープって粒子転移に似てるしな」
💚「じゃあ次、康二」
🧡「俺はさっきも言ったけど、重力で浮かべんくなったのと、岩が動かん」
🤍「動く岩……だったら、グランド・テラスの展望デッキに行くための階段しかないよね。あれ、今思えば康二くんの異能まんまだよ」
🧡「確かに。そん時、ボタン踏むの妙に重かったんよな」
🩷「じゃあ、重力は? あれか、グラビティ・スフィア!」
💚「まんま重力だからね」
🧡「でも違和感なんかあった?」
💜「それは康二じゃなきゃわかんねえよ」
🧡「どっちかってーと、その展望デッキの時かな。あれ、先端がガラスになってるとこ。なんか、一瞬ふわって浮いた感じしたんよな」
🩷「え、そんなのあった?」
🤍「知らなーい。僕、乗ってないもん」
💚「じゃあ、多分そこだ。浮遊だけできないなら、展望デッキしかないと思う。ラウは……」
🤍「僕はワンダー・パビリオンかな。その直前には異能使えたし、それっぽかったのは鍵の最終工程のとこ。白っぽく光ったの、僕のクリエイトの時の光っぽかったもん」
💜「俺は多分あれ、大時計塔の歯車型のエレベーター。ぐるっと囲むみたいにドームができてさ。あれって、俺が鋼を防御に使う時っぽいんだよねー。それに、そのドームがマジックミラーみたいになってたから触ったんだけど、その時に、変な光が走ってた。演出かなーくらいにしか思ってなかったけど」
🩷「涼太は天空のダイヤモンドダスト? ダイヤモンドダストって確か、雪だろ?」
❤️「残念ながら、俺たちは行ってないよ。可能性があるとすれば、ミラージュ・メイズだね。魔法陣を浮かび上がらせる仕掛けがあったんだけど、一ヵ所、妙に冷たく感じた。それにあれ、俺が魔法陣を見えるようにする時みたいだった。ちょうどそれも、冷気を使うからね」
💛「じゃあ、俺は多分、あそこだ。オーロラ・シアター。最後、霧になった時に涼しかったからさ」
💜「あ、それちょっと珍しいなって思った。いっつも照、あんなの平気なのに」
💛「そうなんだよね。暑さにも冷たさにも強いから、涼しいって思う事あんまないし。で、霧になる演出、あれ多分、炎の熱で水を蒸発させるのと似てるんだと思う」
💚「炎の熱……だからさっきの照の炎、暗い赤だったんだ」
🩷「どゆこと?」
💚「炎ってね、温度で色が変わるんだよ。もちろん、他の条件下で変わる事もあるけど。温度が高いと白っぽくて、そこから黄色、オレンジ、赤、暗い赤っていう感じで温度が下がるにつれて赤みが強くなってく」
🖤「じゃあ、岩本くんの炎、いつもはオレンジとか黄色っぽいからちょっと高いってこと?」
💚「そう。あれが照の炎の通常の温度。今は熱が足りないから、温度の低い暗い赤になった。俺は……ホームで電波が途切れたのを感じて、今は近くのスマホの電波すら拾えない。それからトラムで情報にノイズが入って、今は電脳空間に入ろうとすると同じようなノイズが入る……やっぱり同じだね」
そこまでを書ききった阿部は、自分がメモしたタブレットをじっと見つめた。
ペンを持った手を顎に当て、考え込んでいる。その邪魔をするわけにはいかないと、誰も何も喋らずに答えを待った。
💚「違和感と同じ現象が、使えなかったり乱れたり弱くなったり……とにかく影響を受けてる。つまり、その時に異能に何かされたか、または、異能を少し奪われたか……」
💛「奪われる?」
💚「出力が上がらない感じって舘様、言ってたでしょ? それにめめも、高校時代に戻ったみたいだって言ってた。だから多分、そこだと思う。奪われたり抜き取られたり弱められたり……方法はまだ分からないけど、俺たちが使える異能そのものが減ってるんだ。それが、それぞれに起こった違和感として出た。つまり、何かしらの仕掛けが施されてたっていうこと」
💛「じゃあやっぱり、裏で誰かが動いてるのは確定か」
💜「だね。じゃなきゃ、こんなピンポイントで仕掛けられる筈がない」
💚「これができるのはパーク関係者だけ。少なくとも、何も知らずに来園した一般客にできることじゃない。異能の再現度の高さからいって、建設時にはもう組み込まれてた可能性が高い」
🤍「じゃあ、首謀者はパークの偉い人ってことか」
🩷「なんで? スタッフとかでもできそうだけど」
💜「お前さ、今の聞いてた? 俺らの異能を再現した施設が、そんな偶然できると思う?」
💚「構想段階から仕込まないと、これだけの完成度にはならない。だから、制作に携われる人間に限られる。その人物は、俺たちの事をかなり観察してるね」
🧡「えっ、なんでそんなことまで分かるん?」
💚「よく見て。俺たち、知らない間に全員、仕掛けのある施設に行かされてるんだ」
タブレットをみんなに見えるようにする。
確かに、その場その場で決めていったルートの中に、対応したアトラクションや施設が確実に入っている。それが顕著なのは深澤達だ。ほとんどの施設には入らずに散策していたのだけれど、大時計塔もミラージュ・メイズもオーロラ・シアターも廻っている。
💚「俺のルミナシア・ステーション。俺は絶叫系が苦手だから、先ずその辺のアトラクションには乗らない。そのアトラクション群を抜けてすぐに、ルミナシア・ステーションがあるんだ。トラムは自動運転になってるから、俺は興味を持つよ。トラムに乗ろうと思ってホームに行ったら、電波を受信して仕掛けが出るものがある」
🖤「阿部ちゃんならやるよね。そもそも、すっごいやりたそうな顔してたし」
💚「でしょ? それに、トラムも絶対乗る。それは、俺が断言できる」
🩷「好きそうだもんね、ああいうの」
💛「じゃあ、俺もだ。オーロラ・シアター。舘さんが行きたいって言ってたけど、俺も行きたかった場所」
❤️「照もショーとか好きだからね。で、俺はミラージュ・メイズに行こうと思ってはいなかったけど、鏡の迷宮は興味あるよね。中、ちょっとした謎解きもあったし」
💜「舘さん、阿部ちゃんと謎解きに行ってからハマッてたもんねー」
💙「ふっかだって好きじゃん」
💜「まあね」
🤍「僕なら、ワンダー・パビリオンは行くと思う。鍵のカスタムなんて絶対、好きだもん」
🧡「俺、行くか? グランド・テラス」
🖤「康二は飛んでるシャボン玉見たら行くんじゃない? それに、展望デッキからの景色、写真で撮りそうだし」
🧡「うん、撮った」
🖤「俺も、ノクターン・ガーデンは行くね。ああいうところ好きだし。しょっぴーもじゃない?」
💙「まあな。気にはなるし、のんびり過ごすにはいいとこだった」
💛「ふっかは……時計塔って、ふっかっぽくはなかったけど」
💜「ん? でも、ああいうの好きだよ。ちゃんと機械の中に入れたし、ゲームっぽくて」
💛「まあ、中を知ったらそうか。説明文まで読んだら候補には入るな」
🩷「えー、でも俺、多分、星空ホールは行かないよ。他のアトラクション行っちゃう」
💙「確かに。そこしかなかったらわかるけど、遊園地でわざわざ星のとこ行かなくねえ?」
💚「佐久間、最後にワープするって聞いても行かない?」
🩷「行く! めっちゃ楽しそうじゃん!」
💚「ほら」
💜「それに、佐久間が誰と廻るかはわかんないけど、めめといたらめめが入る。阿部ちゃんも多分、入る。舘さんと照も行くよね。夜、時間あったら行ってみるかって話はしてたし。何より佐久間、最後に時間余ったら全部の施設、行かねえ?」
🩷「行く! どんなとこか見てみたいし! 他なかったら入る!」
💜「だろ」
💚「つまり、みんなの性格とか好みを把握した上で施設とか仕掛けを作ってる。これ、ただ単に俺たちを狙ってっていうことじゃないよ」
もう一度、阿部はタブレットを見た。
まだ、何かを見落としている気がする。誰が何の目的を持っていたかは定かではないが、不明瞭だった相手が少しずつ輪郭を見せ始めている。けれど、決定打がない。異能の減少は元に戻るのか、どうしたらいいのか、それが分からない。
その空白を埋める何かがある筈だ。
そう思いながら三班の行動を見比べて、ハッとした。
💚「……ない」
🩷「えっ?」
💚「どの班にも書いてない施設がある……誰か、エルセリオンって行った……?」
静かに訊ねてくる阿部。
暫し、時が止まったかのように誰も何も話さない。
💚「俺たちは、アクアリウム・エルシアの後に外観は見た。でも、それだけだ。中には入らずに隣の、日輪のロゼットに乗ってる」
🩷「そういや、俺ら素通りだったわ。空に浮かんだシャボン玉の方に向かってたし」
💜「俺らも見には行ったよ? オーロラ・シアターの上映まで時間あったから」
❤️「ミラージュ・メイズの後、外観を見に行ったよね。結局、中に入る事はなかったけど」
💚「みんな見てはいる。佐久間達が素通りしたのは分かるけど、俺たちもふっか達も見ただけ。ルミナシアパークの象徴だよ? あんなに目立つんだよ? 誰も入んないわけ、なくない?」
目黒と渡辺が顔を見合わせる。
💙「あの時、阿部ちゃんなんか気付いてたじゃん? アルトリオンと似てるとかって。なのに、阿部ちゃん入りたいって言わなかったよな」
💚「そうなんだよ。なんか、別にいいかなって思って。アルトリオンと似てる時点で、いつもなら中も同じか確かめに行くのに……それに、さっき行動を確認したけど、誰もエルセリオンの名前は挙げてない」
阿部が指し示すタブレットの画面には、エルセリオンの文字だけがない。他の主要な施設には立ち寄っているのに、意図的にそこだけを除外したかのように。
💛「何かあるとしたら、そこだな」
💜「だね。もうこうなったら行くしかないっしょ」
深澤の言葉に、皆がエントランス・プラザから見える湖の方を見、その奥でライトアップされて光り輝く城を見つめる。
それがかえって、皆の目には不気味に映った。
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