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HRに少しだけ遅れて入って、乱れた息を整えながらクラスメイトの自己紹介を聞く。しかし、あまり集中できずにこっそりと下を向いて息を吐く。
先程感じた黒いモヤモヤは、保健室からずっと敦の心の中に留まっている。
はぁ……、どうして僕はこんなことで悩んでいるんだろう……。どうでもいいはずなのに……。どうして、
────どうしてこんなにも、彼奴のことを考えると苦しいのだろう。
「それはね敦君、恋だよ」
「だ、太宰さん……」
「いやあ、敦君にも春が来たのかぁ。めでたいねぇ」
「いや、えっと……?」
休み時間に頬杖をつきながら、ぼーっと廊下を眺めて考え事をしていると、そこには何故か太宰がいた。しかもしれっと人の心を読まないでほしい。そんなの、顔を見ていればわかるよ!と言われたが、そんなことはないと思う。そんな、誰にでも出来ることのように言われても困る。
「太宰さんは何でこんなところに………」
しーっ、と口に人差し指をあてる太宰に、慌ててぱっと口を押さえる。ここで大声を出すと、さっきまで二、三年から騒がれていた太宰がいる、と皆がぞろぞろ集まってきてしまう。
「ねぇねぇ、どの子どの子?君の好きな子は?」
「ちょ、探さないでくださいよ…」
「それともこの教室にはいない?隣のクラスなの?ねぇってば」
「違いますっ」
「じゃあ、上級生?やるねぇ敦君」
「違いますってば…」
「じゃあ、芥川君?」
「っ、……!!……ちっ、がい、ます……」
違う、とすぐに言えたらよかった。認めなくて済んだのに。目の前の人は最初から分かっていたような顔をしていた。
「私に分からないことはないのだよ」
太宰が、ふふん、と得意気に胸を張る。敦は赤くなった頬をどうにか隠そうと、両手で顔を覆った。そのままちらりと目だけで太宰の様子を窺う。
「で、太宰さんはそれを確かめてどうしたいんですか」
「うふふ…いやね、どうするも何も無いけど、面白そうだと思って!」
協力するよ?とウインクまでする太宰を見て、敦はげんなりとする。人の恋路を面白そうって……。否、この人は元々こういう人だったな……。
「じゃあ、こういうときはまずどうすればいいんですか?」
「そりゃあ君ね、こういうときは相場が決まっているじゃあないか!」
「告白だよ!」
────やっぱりこの人をあてにしちゃ駄目だ。
敦は、そう強く決意した。
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