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奪えないなら
(小柳視点)
夜が深まるほどに、冷静だったはずの頭がどんどんおかしくなっていく。
(小柳)「……なんで、星導なんだよ」
呟いた言葉が部屋に落ちる。
(小柳)「俺の方が……ずっとマナのそばにいたのに……
俺の方が、ちゃんと見てたのに……っ」
拳をぎゅっと握る。
爪が手のひらに食い込んでも、痛みが心を誤魔化すには足りない。
――キスもした。
――マナは俺に泣きついた。
――俺の手を取って、「埋めて」って言った。
あのとき、マナは確かに俺を選んだはずだった。
でも、結局最後に戻っていったのは――星導。
(小柳)「……ふざけんなよ」
何が“俺の気持ちを大事にしてくれた”だ。
何が“ロウは優しい”だ。
そんなもん、もういらない。
(小柳)「……だったら、俺のモンにするしかないじゃん」
声が低く、かすれる。
胸の奥で、今までずっと閉じ込めてた感情が暴れ出していた。
(小柳)「星導が奪うなら、俺は――壊してでも奪うよ」
マナが笑わなくなってもいい。
泣いても、嫌われても。
……それでも、俺の腕の中にいれば、それでいい。
そう思った瞬間、自分の中で何かが壊れた音がした。
スマホに手を伸ばす。
マナの名前が表示されたトークルーム。
送る内容も決めてないまま、文字を打ち始める。
「今から、会える?」
たった一言。
だけどその裏にある想いは、もう“優しさ”なんかじゃなかった。
“俺が最後に笑うためなら、なんだってする”
もう後戻りはできなかった。