テラーノベル
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「ここ、で、いいんだよね」
キョロキョロ周りを見回すとすでに数十名ほど集まっていた。合格者だろう。
(やばい、緊張がまだ抜けない。足が震えてまともに立ってられる気がしない…どっか座るところ…)
周りを見渡し、ソファを発見する。
(大きいソファだな…やっぱearthってお金も権力もそれなり以上に持っているんだな…)
そう思いながらもソファに座る。
座り心地が最高すぎてびっくりした。
すると横からトントンと肩を叩かれた。
向くと銀色の髪をした短髪の男の子が座っている。
「合格者、だよな!これから1年間よろしくな!!」
「あ…えっと、よろしく」
喋りかけてくれた男子生徒がキラキラ輝くような笑顔で手を握り返した。
(犬みたいだ…)
尻尾と耳がついている幻影が見えて仕方ない。
「あ…この試験の合格者だよね?」
「ああ!そうだぞ!ずっとこの学園に入るのが夢だったんだ!」
「…夢…」
フッと脳内に懐かしい記憶が流れる。
『俺はearthで夢を叶えてくるから。陽、お前はここで叶えろ』
(…兄ちゃんの夢はここで叶ったのかな…)
チリン…という音で我に返る陽。
「はいは〜い、おまたせ、全員揃った?」
鈴の音とともに現れたのはハルヒだった。
「じゃ、今から生徒手帳とバッジを配布するよ〜、動かないでね〜」
ハルヒはニコニコしながら、すっと手を上げたかと手を鳴らす。
途端、目の前に白の下地に青の線で囲われた革製の生徒手帳と手のひらに収まるサイズのこれまた白と青を基調とした金属が空中に現れた。
「名前、合ってるか確認してね〜?特にバッジは個人データ入りまくりだから、なくさないように〜」
バッジの後ろ側を見てみると、小さく〈Kanon〉と書かれていた。
(かのん…?)
名前、間違ってるんじゃないかと手を挙げる前に、僣が説明してくれる。
「この学校では本名を名乗ってはいけない決まりなんだよ。そんで、バッジの裏に書かれてるのが〈アースネーム〉って言うんだ!」
「よく知ってるね…」
「ねぇちゃんがこの学校通ってるから!」
フフン、と鼻の下を伸ばす男子生徒。
「改めて、俺は僣!えっと…カノン、でいいよな?よろしく、カノン!」
「うん、よろしくね」
コクリと頷く。
僣はすごく人懐っこく、誰にでも優しい裏がないタイプの人間だろう。
「確認できたら、生徒手帳を開いてね。そこに自分のクラスが書かれているから。ちなみに今日はこれで解散で〜す!何かわからないことがあったらそこら辺に控えてる隊員に聞いてね」
ハルヒはそれだけいうとすっと消えてしまった。
(…やっぱ、ハルヒさんは裏あるよね…)
はは、と苦笑いする。
その途端、遠くから女性の声が聞こえてきた。
「なにこれ!今年の合格者これだけ⁉少なすぎ!」
「まあまあ、落ち着けよ、ノノ」
陽は声のした方向を見ると、長い髪を横に一つでまとめた見るからに美少女が一人とこれまた少しちゃらそうな長身の男子がいた。
「率的には減ってないんだから。これだけいるんだからまだ歴代よりはマシだよ?」
「そ〜じゃない!マシじゃない!あー、このまま少子高齢化が進むんだーー!」
「絶対意味わかってないでしょ、勉強できないくせに」
ワイワイと言い争う二人へ視線が集まっている。
(earthの制服着てるし、生徒だよね…あれ、けど今は休校中じゃ…)
陽はかすかな疑問を抱く。
「わぁ、すごい、一軍の遊兎さんとノノさんだよ!」
僣がブンブンと陽の肩を揺すってくる。
「一軍…って超エリート…!」
「やばい!やばい!すっご、会えるのなんて殆ど無いんだよ!やば、今のうちに脳内に焼き付けとく…」
興奮気味の僣。
『軍』は5〜1あり、数字が少なくなるほどより優秀で人も少なくなっている。
現に、earth全体での生徒数は500人ちょっとだが、軍自体に加入している者は一軍はその中で4人しかいない。
そのメンバーといえば、先程のハルヒ、ノノ、遊兎、あとは〈リーダー〉と呼ばれているearthで最も強く恐ろしいと噂されている生徒だ。
〈リーダー〉は表舞台に顔を出したことがないため、顔を知っているのも一軍のメンバーくらいだろう。
「やば〜!今日一日で一軍のメンバー3人見ちゃったよ〜、!今日で寿命使い切ったかも…」
「…そこまでなの…?」
興奮する僣を見ながら陽は苦笑いする。
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