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「これでいいですかね。多分、これがリストです」
「お、出来た?」
戸崎さんは僕と早坂君が作った資料を眺めた。
「・・・再来年、森田先生退官じゃん」
「はい」
「で、来年はイガさんはいないじゃん」
「はい」
「だから教科書」
「はい?」
「森田塾の教科書、それとテキストを作って」
どういうこと?教科書とテキストって言うのは何だろうか。これから使うやつなのか。
「そうじゃないよ、来年はというか、今度やってくる12期生の森田塾は11期生が作った教科書でやるから」
「テキストは多分何んとか作れると思いますけど、教科書ってことになると・・・」
「まっちゃんたちの代の院生、つまり伊佐木君とかが使うことになるだろうね」
「なら、僕じゃなくて彼らの方がいいのでは?」
「イガさんが、まっちゃんにやらせてって」
どう考えても来年残る奴がやったほうがいいと思うのだけれど、まあそう言うわけなら仕方ないというかなんというか。
でも、教科書なんかどう作ったらいいか分かんないのはある。そこで僕はイガさんに聞くことにした。
「これって、院生とかが見て使う感じなんですか?」
「そうだよ」
とのこと。そういうわけで僕は過去の研究生が書いた環境論文を見ながら1人部屋にいると、矢代さんがやってきた。
「まっちゃん、森田先生の一番最初のゼミで聞いた4つの軸の話覚えてる?」
「4つの軸ですか?」
D・カーネギー
行動の科学
カール・ロジャーズ
シュタイナー教育
この4つの事は環境論文にも書かれていること。ということはこの4つが先生も「最初」に言ったこともあって、なんというか森田研究室の「軸」になっているらしい。
「とりあえず、それをまとめようよ。それは本からまとめればいいから」
「はい」
それと同時進行でテキストの作成も進めていくことに。早坂君とまとめたスケジュール的なものを見ながら「何をするか」というのを書き起こしていく。
「・・・最初は色で名前、それで大切な物・・・」
とある程度やっていくとあることに気が付く。それが塾でやっている内容が基本的に「シュタイナーの気質」その特性が加味されていること。
人は4つの気質を持っている。気質は固定されることなく、動く。そしてその動くというのも「何をしたか」によっても大きな要因になる。
「これ、もしかして」
僕は前に作った「絵本の気質まとめ」の資料を見直すことにした。
「・・・だから僕にやらせたのか?」
11期生と言う物語の主人公は、周りの状況によって大きく気質を動かされる。気質を動かし、それぞれの人が「特に強みをもつ」という気質がでてくる。長時間の作業が得意、まとめるのが得意、それから話すのが得意。
「なるほどね」
言葉には出来ないモノの、何となくわかった気がしてくる。森田塾の意図・・・この場合は森田登、五十嵐武志の意図と言った方がいいのかもしれないけれど。
大学というモノから社会人というモノへ行くのが社会としての物語なのであれば、主人公は学生、サラリーマン。けれど、森田塾の主人公は
「自分だ」
自分というか11期生と言えばいいのだろうか。自分でそう納得しながら進めていく教科書作り。気が付けば早坂君や伊佐木君も参加してきてくれて、だんだんと研究室はその雰囲気になりつつあった。