テラーノベル
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長老の元、森の中から戻ったナッキは真剣その物の表情を浮かべて言う。
「だから僕自身が鳥の王を見つけに行かなければならないんだよぉ! 皆判るでしょう? トンボたちの侵攻を止めようにも僕らは彼らと語り合えないんだよぉ! んだから鳥、鳥の王様、ゴイサギさんを探してお願いしなくちゃいけないじゃないかぁ! 通訳の仕事をねぇ! 違う?」
だそうだ。
いつも慎重なギチョウが言葉を発した。
「お、お待ちください、ナッキ様ぁ、 それはあれですかね? 森の中の沼の長老、巨大な存在がそう言ったからって事なんでしょうか? 初めて会った得体の知れない生き物に言われて、ですか? そんな感じでは我々としても納得する事が出来ないのですがぁ、なあ? カジカ大臣?」
話を振られたカエルの大臣、カジカは言った。
「王様自ら訳の判らぬ場所に赴く事等、無論反対でございますっ! それに聞けば具体的な居場所は知らないって言ってたんでしょう、その、カメでしたっけ? 随分いい加減なアドバイスじゃないですか? 良いですか、下手したら一生掛かっても見つけられないかもしれないんですよ? 判ってますか? 王様がいなくなるって事なんですよ! そんなの受け入れられません! どうしてもと言うなら他の者に命じてください、お願いします!」
ナッキは弱ったような表情に変わってカジカとギチョウに言う。
「いやそれがさぁ、空を飛ぶ生き物の言葉と僕たち水の中を泳ぐ生き物の言葉って全然違うんだってさぁ、長老さんは両方話せるらしいんだけど体を動かすのが大変そうでね、それで僕が行くって訳さ」
「いやいや判りませんよ、どうしてそれでナッキ様が行く事になるんですか! ナッキ様だって話せないんでしょう?」
「話せるんだよね、それが…… 長老さんが言うにはね、何だっけかな~、そうそう『こっち側に近付いてるな』だからなんだってさ」
「こっち側?」
「ますます判りませんな、ヒット殿、ティガ殿、ナッキ様の仰っている事に相違ないか?」
ギチョウは首を傾げ、カジカは訳の判らない事を言っているナッキではなく、横にいる二匹に話を振った。
ヒットは頷きながら答える。
「ああ、確かにナッキには他種族の言葉が判るらしい、厳密には言葉自体ではなくてその者が感じている感情、みたいな物を単語で感じ取れるんだそうだ……」
「そ、そんな事が出来たんですか、王様」
「僕自身も知らなかったんだよ」
ティガも会話に参加して来た、恐らく補足が必要だと思ったのだろう。
「あっちの沼にザリガニのランプにそっくりな赤くて小さい生き物が居たんだけどな、そいつ等って話せないらしくてさ、向こうじゃカメの長老だけがそいつらの気持ち、思っている事が判るって話でよ、同じ事がナッキの王様にも出来たって訳なんだ」
「ほ、本当に?」
「それが本当なんだよ! ヒットには只ギャーギャー鳴いてる様にしか聞こえなかったし、おいらが近付いて行った時にも同じだったんだ、それをナッキの王様は全部言い当てちまってよ、長老もビックリしてたんだよ」
ナッキが何故か自信満々な表情で胸を張って言う。
「暫(しばら)く僕の顔を見た後長老が言ったんだよ、『ナッキ王よ、そなた、こっち側に近付いているな』ってね、そういう事があったのさ!」
「ほほう」
「な、なるほど」
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