テラーノベル
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納得の声を上げるギチョウとカジカ、その時、ここまで黙って聞いていたカエルの殿様、ゼブフォが横合いから声を上げる。
「しかし目指す場所に見当も付かない、と言うのは如何な物であろうか、我等が王よ、この国はまだまだ若い…… 皆貴方を必要としているのですぞ、長期間旅に出る等、下手をすれば国が瓦解(がかい)しますぞ?」
なるほど、数年前までカエルの国を率いていた君主、為政者(いせいしゃ)らしい的確な助言であると思う。
なのにナッキは一層胸を張って言う、もう真上を向いた状態である。
「そう思うよね? でも大丈夫っ! 帰りの道すがらヒットとティガと考えている内に見当はついているんだよ! 勿論、『鳥の王様』直接のヒントは何も思い浮かばないけどさっ! 鳥たちが毎日沢山集まる場所をヒットとティガから聞いたんだよ! まずはそこに向かうつもりなんだっ!」
「ほう?」
短く答えたゼブフォは名前が出たヒットとティガに視線を向けて、話の続きを促しているような表情をする。
ヒットが言う。
「ああ、確かにナッキには話したんだが、そのぉ、俺たちギンブナがここに来る前に避難していた、大きな川の河口、その中洲にある『澱み』の近くにな、毎日朝早くと夕方に鳥達が集まっていたんだ…… あの頃は喰われやしないかってビクビクでな…… 隠れながら、早くどこかへ行け、そう思った物だよ」
ティガもこの言葉に続けて言う。
「ああ、そうなんだよ、あの中洲には鳥がいっぱい居てなぁ、水路を抜ける時に小さいギンブナを襲って来やがったりしてなぁ、おいらとヒット、オーリなんかが牽制(けんせい)して何とか通り抜けたんだよ? もう命がけだったよなぁ」
「だな、ティガには感謝しかないぜ」
この三年の間にヒットやオーリがティガに一目も二目も置いていた理由は、そんな経験による感謝から来ているのかもしれない。
そんな風にナッキが想像しているとスッカリ回復を果たしたアカガエルのアカネが差し迫った顔でひねり出すように言う。
「では我々、カエルの侍がお供いたしますっ!」
この声にはカエルの殿様、ゼブフォが同意を込めた声で叫ぶ。
「お、おう! その通りだ、アカネ達、侍だけでなく、ブル配下の力士も同道し、『メダカの王様』、ナッキ王を守るのだっ!」
「「ははっ!」」
声を揃えるアカネとブルに向けてナッキは言う。
「ええぇぇ! 良いよぉ、だって君たち泳ぐの遅いじゃないかぁ!」
だそうだ……
本当に魚類と比べて遅かったのだろう、俯(うつむ)き屈辱からかプルプル震えるカエル達を他所(よそ)に、モロコのギチョウが必死な声を上げる。
「た、確かにカエル達は泳力に劣りますっ! ならばっ、ナッキ王! 泳力に長けたギンブナとウグイの中から、特に大きくて戦闘力に長けた者共を選び、随行としてお連れ下さいませ! こ、これは譲れませんぞっ! 王様自らがお一人で死地に赴くなど、有ってはいけない事でございますぞぉ!」
なるほど、言っている事は馬鹿でもわかる理屈である。
だと言うのに、ナッキは又もや首をブンブン左右に振りつつ言ったのである。
「さっきから言ってるじゃん、捕食者のトンボの子供たち、ヤゴって言うのはいつ孵るか判らないんだよ? その子達が孵ったら池の上空に親のトンボ達が群れを成して飛び回って、周囲にある命を捕食して生き延びろって、そう、叫び続けるんだってさ! ねえ、判るよね? 戦力はここに残さなければならないじゃない? 僕が鳥の王様を見つける前にそうなってしまった時、卵や稚魚が食べられてしまわないように、一匹でも多くの我が国の子供たちを救うためにも、主力の皆はここから移動させる訳には行かないんだよ! 僕の事より未来を繋ぐ子供達の方が大切だよ? 違う?」
「むぅ、そう言われましてもぉ…… ナッキ王を一匹でぇ? ぅうう~ん……」
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