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「うっ……ッ、グスッふ……」
綺麗な橙色の髪の持ち主である彼は、涙でぐちゃぐちゃになった顔を手で隠しながら、
隠しきれない嗚咽を漏らして玄関に座り込んでしまった。
彼の声を聞きつけたルームメイト兼動画のメンバー達は『どうしたんだ』『何があったの』とわらわらと集まる。
メンバー達は彼を見ると、言葉を詰まらせる者もいれば大声を上げて叫ぶ者、陸に打ち上げられた魚の様に口をパクパクさせる者も居た。
何てったって彼の体は殴られた様な痣が複数ついており、薄地のシャツ一枚と、彼がいつも履いている下着だけが身包みの状態。
そして何より男達が見慣れているであろう、“かの液体”が身体の所々についている。
「わど、何があったんだ。」
メンバー達の背後から事態を聞きつけた彼らの総大将が顔を出す。
「く…ん、さん……ううッ、…ズビッ……」
「わど、何があったか教えて!?どうしたの、そ」
「…ッこうたん、気持ちは、分かるけど…今は、なっしー達の出番じゃ無いと思う。」
あまりの事態に混乱したこうたんはわどるどへ説明を問おうとするが、それは同じクリエ組の仲間であるなっしーによって止められた。
普段から少し問題が見られる彼だが、今は少しばかり空気を読めたらしい。
「kunさん、」
なっしーがそう言うと、なっしー含めメンバー皆の視線がkunに集まる。
一番信頼出来る、彼へ。
「……分かってる。わど……話せるか?」
再びkunが問うと、わどるどは重く閉ざされた口を開く。
「……コンビニにいったら、路地裏に…連れ込まれて。」
わどが話し始めると皆が黙って話を聞く。
「…知らない、人で、殴られて、それで。………二重顎さんにデザインしてもらった
服を、破かれてしまって。それで……それ、で……ッ」
わどは再び泣きそうになるのをぐっと堪えぽつぽつと話す。
「……分かった。もう話さなくていいぞ。大丈夫だ。もう、大丈夫だ。よく、話してくれた。」
大丈夫だと言い聞かせると、kunはわどの頭を優しく撫でる。
「えっ、kunさんが見た事ないくらいのスマイルしてる!?スクープやでこれは!!」
「#空気読めひまじん。」
「#空気読めないひまじん。」
「これは地獄行き案件。」
空気の読めないひまじんにメンバー達がツッコミを入れる。何かと批難されがちな彼だが、恐らくこれが彼なりの優しさなのだろう。
「……ふふふっ」
わどはメンバー達の変わらぬノリに思わず小さな笑いが溢れてしまう。
「わど、お風呂行こう!僕が洗ってあげるよ」
こうたんは思いつくと直ぐに行動するタイプだ。
ぐい、とこうたんがわどの手を掴むのと同時にこうたんの背後から手が伸びる。
「下心丸見え。私が行く。」
こうたんを阻む様に背後からこのが出てくる。
「え〜!男女が一番ダメでしょ」
こうたんはムスッとしながらツッコミを入れるが、わどるどの気まずい雰囲気を察したのかいつもの様な無理強いはしなかった。
「あっ、じゃあなっしーお洋服持ってくるね。こうたんタオルと〜、
ドライヤーは女子軍辺りから借りてきてくれる?」
何時もは全面的に気持ち悪い彼だが、今日ばかりは頼れる人になっている。こうたんはそれが何処か不気味に思えた。
「なっしーがすごい違和感。」
「ちょっとそれどう言う意味〜!?なっしーはいつもこんな感じだよ!」
「だってなんか変!!」
止まらないなっしーとこうたんの会話を強制的に終わらせるのが彼女。
「ちょっと、お風呂あがりにドライヤーなかったらわどが風邪ひいちゃうかも知れな
いよ。」
「借りて来る!」
こうたんはアスレで鍛えた脚力を使い、鬼の速度で廊下を走り抜ける。
「全く……なっしーも早く持って来てね。」
「分かってるよこのさん!」
kunが パン、と手を叩くと、皆に聞こえる様少し声を張り伝える。
「よし、わどの側に居れる奴ら、ちょっと頼んだわ。」
「はーい」
「あいあいさー」
「さて……わかるよな、お前ら。」
kunは後ろ姿だけでもわかる殺気を纏わせメンバーに伝える。
「表出る奴集合。」
「ノ」
「行くわ。」
「参戦しても?」
「勿論」
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正に多勢に無勢。
殺伐としているこの光景は側から見たら恐怖そのものであった。
勿論やられる側になっては堪ったもんじゃない。
「許してくれ!!!!!悪かった!!謝るからッ…う、…ぐっ」
白目を剥きながら悶絶している彼こそが、わどるどを襲った犯人だとコマンド勢の解析で判明した。
男の体には、無数の矢が刺さっていた。
まだ殺さぬ様にと、全て急所は外してある為、深く苦い苦痛が彼を襲う。
「うちのメンバー汚してタダで済むと本気で思ってたなら、地獄で償った方がいい。」
そもそもこの世界に侵入した時点で既に彼の行く末はどの道も同じ結末を辿る事になっていた。
しかしその中でも特に最悪なパターンを引いてしまったのだ。
特に存在感の無い無名やたこわさなどに手を出していたらこうなって居たのかは分からないが、これだけは言える。
彼は襲う相手を間違えてしまった。
冷ややかな視線の数々は、その場から逃げ出したくなる程に、
一つ一つが冷たく、冷酷であった。
そんな視線に囲まれ、すっかり冷たくなったソレに、剣で一刺し。
「これ、クリーチャー実験に使っていいよ。こうたんの研究所にtpしとく。」
その時のkunの表情は、メンバーいわく、これまでに無いほど恐ろしかったらしい。
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おまけ
*
「そういえば、何でわどは逃げてこれたの?」
「えっと……これ……。」
ギラっと光る洗礼された剣。
こうたんが作ったものの中でも、うまく出来た方だったので、護衛用にと渡したものだった。
「これ、僕があげた剣!持っててくれたの?」
「うん、大事な物だったから。この剣のおかげでなんとか逃れられたんだ。凄く役に立ったよ。ありがとう、こうたん。」
「へへん、まあね」
「こうわど……アリだ。尊い……」
ドアの隙間からひっそりと見つめるおびわんであった。