テラーノベル
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続きです
国立多目的競技場、雄英高校専用の待機室。 外から漏れ聞こえる数千人の足音と、
空気を震わせるカウントダウンの予稿が、否応なしに「試験」という現実を突きつけてくる。
クラスメイトたちが互いに鼓舞し合い、あるいは自身の震える拳を握りしめて精神を研ぎ澄ます中、
敵愛永久だけは、部屋の隅にある冷たいパイプ椅子に深く腰掛け、虚空を見つめていた。
彼女の周囲だけ、湿度が数パーセント低い。 それは彼女が無意識に発する冷気のせいではなく、
彼女という存在が持つ「拒絶」の気配が、物理的な熱量さえも遠ざけているかのようだった。
今、彼女の思考の深淵で渦巻いているのは、目の前の試験をどう突破するかといった矮小な戦術ではない。
なぜ、自分はこの場に立っているのか。 そして、自分が手にしたこの「絶大すぎる力」で、
一体何を塗り潰すべきなのか。 その「____」の正体だった。
「ヒーロー」という言葉を聞くたびに、永久の胸の奥には、
冷たい澱のような違和感が溜まっていく。 世間が称賛するヒーローたちは、
常に「光」の中にいる。ヴィランを倒し、市民を守り、喝采を浴びる。
だが、その光が強ければ強いほど、その背後に落ちる影は深く、
濃くなっていくことを、誰も指摘しようとはしない。
(救われる側と、裁かれる側。その境界線は、一体誰が引いているんだ?)
永久は、自身の白い手を見つめる。 一次試験で自分が放つであろう「絶対零度」は、
敵を無力化する。だが、それは同時に、相手の「可能性」をも凍結させる行為だ。
今のヒーロー社会は、あまりに短絡的で、あまりに表層的すぎる。
ヴィランがなぜヴィランになったのか。その過程にある絶望や、
社会の構造的な欠陥からこぼれ落ちた涙を無視して、ただ「悪」というラベルを貼って排除する。
それが正義だと、教育でもメディアでも刷り込まれている。
だが、それは正義ではない。 単なる「数の暴力」による排斥だ。
「可哀想なヴィラン、、、なんて言い方をしたら、相澤や周囲は笑うだろうけど。
でも、現実に起きているのは、救いの手を差し伸べるべき人間に、
真っ先に『制裁』という名の暴力を振るう社会の姿だ」
彼女が目指しているのは、ヒーローがヴィランを倒して終わる物語ではない。
ヴィランという概念そのものが生まれない世界。 あるいは、一度道を踏み外した人間が、
二度と戻れない奈落へ突き落とされる前に、その足を止めてやれる世界だ。
永久の思考は、さらに深く、残酷なまでの正論へと突き進んでいく。
彼女がこれほどまでに圧倒的な「強さ」に固執するのは、他者に頼りたくないからではない。
他者に「裁かせたくない」からだ。
もし、自分が誰よりも強ければ。 もし、自分が戦場にあるすべての要素を支配し、
誰にも指一本触れさせないほどの「絶対性」を確立できれば。
他のヒーローたちが、事情も知らないヴィランを無惨に傷つける前に、
自分がその場を「凍結」させてしまえる。 暴力による解決が始まる前に、
自分がその「時間」そのものを止めて、介入の余地をなくしてしまえる。
(私の力は、破壊のためにあるんじゃない。
これ以上、不条理な傷を増やさないための、究極の防壁であるべきだ)
それは、傲慢極まりないエゴだ。 自分一人がすべての因果を掌握し、
加害者も被害者も、救済さえも自分の管理下に置こうとする。
だが、今の歪んだヒーロー社会で、真に「誰も傷つかない」結末を導き出すには、
それほどの独占的な力が必要なのだと、彼女は確信していた。
社会の歯車になどなるつもりはない。 法やルールという名の下に、
弱者を切り捨てていく「汚いヒーロー」たちの仲間入りをするつもりもない。
彼女が求めているのは、既存の正義という名のシステムの、根本的な書き換えだった。
待機室のドアが開く。 相澤が、鋭い視線で生徒たちを見渡した。
相澤 「時間だ。行くぞ、お前ら」
クラスメイトたちが一斉に立ち上がる。爆豪が殺気を放ちながら先頭を歩き、
緑谷が緊張に顔を強張らせながら続く。 永久もまた、ゆっくりと腰を上げた。
彼女の瞳から、迷いは消えていた。 これから始まる試験は、
彼女にとって「資格を得るためのプロセス」でしかない。
社会に認められ、権限を手に入れ、そして自分のエゴを現実にするための手段。
(あんたらが私に追いつきたいなら、私も頑張んなきゃいけないよね。
でも、私が見ているのは、あんたたちじゃない。この世界の、その先だ)
会場へ向かう通路、自分の足音だけが異様に静かに響く。 彼女は知っている。
自分がこれから行う「絶対零度」の行使が、どれほど周囲に戦慄を与えるかを。
だが、その寒冷な沈黙の先にしか、彼女の望む「誰も泣かない世界」は存在しない。
「、、さーてと。ゴール地点で待ってるよ。お前ら」
その言葉は、仲間への鼓舞であると同時に、自分自身への誓いだった。
誰よりも強くなり、誰よりも冷徹になり、そして誰よりも温かく、すべての命を静寂の中で包み込む。
敵愛永久の「エゴ」が、今、競技場の広大な地形を塗り潰すために、その一歩を踏み出した。
1540人の思惑、政府の打算、ヒーローの誇り。 それらすべてを、
彼女の意志という名の「氷」が、今から等しく沈黙させる。
それが彼女の選んだ、たった一つの、正しすぎる答えなのだ。
はい、どうでしたか。
長々と文章書いちゃってすいませんね、
わかりにくかったら言ってください。
2326文字!終わります。
コメント
6件
覚悟決まってんなぁ、、続き楽しみ
語彙力半端ねぇ……………………………
めちゃくちゃ見るの遅くなった!ごめんね💦 今回も良かったよ!続き楽しみにしとるね〜!