リンの歌が聴きたいと思ってセカイに来た、がこの時間帯にいるには見慣れない顔の人が。
「え、まふゆ、なんでここに?」
今は学校の時間のはず。どうしてセカイに。
「絵名がいるなら来なきゃよかったな。煩いし」
「なんでそういうこと言うのよ! このサボり魔!」
「テストだったからだよ。金曜から早帰り」
「金曜……ってでも、帰り同じ時間じゃなかった? 会ったし」
「学校に残って友達に教えてた」
「あーなるほどね。ん……てことは、一週間前からテスト週間なわけだ。ってことは、私の家に来たのってテスト週間の時!?」
「そうなるね」
「ごめんまふゆ!」
「気にしてないけど。絵名の家に行く前も勉強してたし。泊まるのは予想外だったけど、それくらいで成績は変わらないよ」
それならばいいんだけど。試験ってまふゆにとって大切だろうし、少し申し訳ない。ていうかその自信何、羨ましい。
「勉強しなくてもいいの?」
「少し休憩」
「私離れてた方がいいよね」
「そんなことないけど。急にどうしたの?」
「いや、なら、近くに座る」
そういえば、リンを探しに来たのに結局まふゆと一緒に過ごすことになっちゃったな。
「あ、絵名。クッションが欲しい」
「え、何、買いに行く!?」
「違くて、絵名のやつが」
「はいはい私のね。私の……はい?」
急にクッションが欲しいと言い出して驚いたのに、というか欲しいものができたのかとた期待したのに、私のものがいいとは。
「新品じゃだめ?」
「絵名のがいい。クッションじゃなくても人形でも何でもいいけど」
「はあ……」
「できれば絵名に身近なやつがいいな。よく使ってるような」
「はい……はい……?」
突然のその提案、中々飲み込めない。
「あの、急にどうしたの?」
「……絵名のものが近くにあると安心するから。欲しいなって、思って。でも、あの時くれるって言ってたじゃん。台風の」
「…………」
「絵名のせいでテスト勉強できなかったな……」
「ああもうっ」
少し考えを巡らせて、私は──
***
「ほんと、最近のまふゆってなんなの……」
セカイから帰ってきて、私はベッドにダイブする。
私のものを渡した瞬間に、大切そうにそれを抱きしめたまふゆ。
考えた結果、私は学校へ着ていたカーディガンを渡した。突然あんなことを言われたのだから、それくらいしか思いつかなかった。身近なものがいいって言われたら、それくらいしかないのだ。
「明日から、寒くなるかな」
生憎、カーディガンは一枚しかない。
明日にでも取っ捕まえて、何か他の物と交換してもらわなければならないと、また考えを巡らせるのだった。
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