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第15話「名前を呼ぶ、夜」
夜は、思ったより静かだった。
宿の屋上。
街の明かりが、遠くで瞬いている。
「……寒くない?」
なつが、らんを見る。
「……大丈夫……」
そう言いながら、らんはゆっくり息を吐いた。
「……は……」
胸はまだ重い。
でも、苦しさに飲まれるほどじゃない。
「……こうして……」
らんが、夜景から目を離さず言う。
「……みんなで……静かにいるの……」
少し、照れたように笑う。
「……好きかも……」
「らんらんらしい」
みことが、小さく笑った。
「……騒がしいのも好きだけどね」
すちが、空を見上げる。
「今日は、静かな日でいい」
「……うん……」
こさめが、らんの隣に座る。
「らんくん」
柔らかい声。
「今日、苦しかった?」
「……少し……」
正直に答える。
「……でも……」
少し間を置いて、
「……怖くなかった……」
「……それ、すごいことだよ」
こさめが、そう言った。
らんは、ゆっくり頷く。
「……前は……」
息を吸う。
「……怖いは、一人……だった……」
「……今は?」
いるまが、静かに聞く。
「……今は……」
らんは、みんなを見る。
「……名前、呼ばれてる……感じ……」
その言葉に、誰もすぐ返事をしなかった。
なつが、代わりに言う。
「そりゃ、呼ぶだろ」
「らんは、らんだ」
シンプルで、当たり前みたいな言葉。
「……っ」
喉が、少し熱くなる。
「……ありがとう……」
小さな声だったけど、確かだった。
しばらく、風の音だけが流れる。
「……明日も……」
らんが、ぽつりと呟く。
「……朝は……来るよね……」
「来る」
すちが、即答する。
「来たら、また決めよう」
「……うん……」
らんは、夜空を見上げた。
——終わりを、数える夜じゃない。
——今を、確かめる夜。
「……は……」
ゆっくり息を吐く。
「……今日……」
最後に、らんは言った。
「……生きてた……」
その言葉を、
誰も否定しなかった。
遠くで、街の灯りが揺れる。
その中で、
らんは静かに立っていた。
終わりではなく、余韻としての夜。
名前を呼ばれ続ける限り、
その場所に、確かに存在していた。
♡300
コメント
2件
素敵な作品毎度読まさせていただいて幸せなので指定数の倍♡を押す努力しますわ。 例え手が痙攣しても。