テラーノベル
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第16話「楽しいと思える日を」
朝。
カーテンの隙間から、柔らかい光が差し込む。
「……まぶし……」
らんが、ゆっくり目を開けた。
体は重い。
でも、苦しさはない。
「……今日は……」
小さく息を吸って、
「……楽しい日に、しよ……」
そう呟いて、起き上がる。
「おはよ、らん」
なつの声。
「……おはよ……」
「今日さ」
なつが、少し楽しそうに言う。
「完全オフにしようぜ」
「……オフ……?」
「観光。写真。食べたいもん食べる」
「仕事の話、禁止」
「……いいの……?」
らんが戸惑うと、
「いいに決まってる」
いるまが即答する。
「今日は“生きる日”」
その言葉に、らんは少し笑った。
「……大げさ……」
「でも、嫌いじゃないだろ」
「……うん……」
街を歩く。
人混みは少し怖いけど、真ん中には行かない。
「らんくん、これ」
こさめが、ジュースを差し出す。
「……ありがとう……」
一口飲んで、
「……甘い……」
「でしょ?」
「ふふっ、」
みことが笑う。
「顔、ちゃんと“楽しい”って言ってる」
「……ほんと……?」
すちが、スマホを向ける。
「ほら」
画面に映った自分は、
確かに、少しだけ柔らかい顔をしていた。
「……変な顔……」
「それがいいんだって」
小さな公園。
ベンチに座って、風を感じる。
「……さ……」
らんが、ぽつりと言う。
「……楽しいって……」
少し考えてから、
「……忘れちゃいけないものだと思ってた……」
「……今は?」
なつが聞く。
「……今は……」
空を見上げる。
「……作っていいものだって……」
「……思える……」
その瞬間、胸が少しだけ軽くなった。
「……は……」
深く、ゆっくり息を吐く。
誰も、何も言わない。
それが、心地いい。
夕方。
写真フォルダには、どうでもいい写真がたくさん増えていた。
ブレた景色。
変な角度の顔。
笑ってる途中の一瞬。
「……これ……」
らんが、スマホを見ながら言う。
「……全部……」
少し照れながら、
「……楽しい思い出……だ……」
「だな」
「だよね」
「でしょ」
みんなが、当たり前みたいに答える。
らんは、胸に手を当てた。
——終わりを意識してもいい。
——でも、それだけじゃない。
「……また……」
小さく、でもはっきり。
「……楽しいの……作ろ……」
その言葉は、
今日いちばん、未来を向いていた。
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