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俺は船に乗り込む前にもう一度ローの方を振り返る。
「なぁロー、ひとつ聞いていいか?」
「なんだ?」
「さっきお前が俺に頼んだこと。頼んだ理由は俺を共犯者として選んでくれたってことか?」
「……何故〝共犯者〟という言葉を選んだ?」
質問の意図が分からなかったのか、少し怪しげな目で俺を見るロー。俺は一瞬言うべきか悩んだが、ここまで言ったのだ。もう全部言ってしまおうと口を開く。少しの嘘を混ぜて。
「お前は何かを成し遂げようとしてる。それは俺にも分かった。流石にお前の中に秘めている詳しいことは分からないけどな。お前がよく単独行動をするのは、ただ放浪が趣味ってだけじゃないだろ。ハートの海賊団のみんなに危険が及ばないようにしていたんじゃねえの?」
俺はそこまで一気に喋ると、最後に付け足す。
――ま、俺の勝手な妄想と言えばそれでおしまいだけど。
俺は肩をすくめておどけて見せる。するとローはいつもはあまり見せないような、柔らかい笑みをこぼして口を開いた。
「そうだ、と言ったら?」
「んー……そうだとしたら、嬉しいかな」
「うれしい…?」
「あぁ。ローがそこまでの覚悟を決めたってことは、きっと自分自身の命をかけるくらいの決意なんだろうなって思ったからさ。お前の性格からして、一人で戦って、一人で死にそうだし」
もちろん簡単に死ぬ気はないってことは分かってるけど、でもローは相打ちを覚悟してドフラミンゴに挑み、恩人コラソンの本懐を果たそうとしている。
そんなことをしたら、ハートの海賊団はバラバラになってしまうかもしれない。船長であるローがいなくなれば、クルーたちは進むべき道を見失ってしまうかもしれない。原作ではそうはならなかった。だからといって今、そうならないという絶対的根拠はない。俺が日ごろから感じている不安はきっと、俺という存在が、キャラクターたちに深く深く関わったせいだと思っている。だから、原作とは違う展開になる可能性があることも、頭の片隅に置いておかなければならない。
「……だから、俺という存在が少しでもお前の力になれてるなら、俺はそれがすごく嬉しい」
俺が笑顔で答えると、ローは帽子のつばを下げて顔を隠した。な、なんか言ってくれよ……。俺だいぶ恥ずかしいこと言った自覚はあるから、なにか言ってくれないと滑ったみたいで悲しいんだけど……。
ローの反応を待っていると、ローはぽつりと呟いた。
「やっぱりお前の……」
俺が聞き取れたのはそれだけ。他にも何か言ったのは口の動きでなんとなくわかるのだが、声が小さくて何を言ったのかまでは分からなかった。でもなんとなく聞き返すのは違う気がして、俺はローが用意してくれた船の方へ足を運ぶ。
「それじゃあロー、次はロッキーポートで」
「ああ、またな」
ローの返事を聞いてから、俺は船に乗り、そのまま近くの島の方へと動かした。
「…………あ゛~~~~~~!!! 恥ずかしかった!! 自分でも途中から何言ってるかわかんなくなってきてたし!!!」
1人だけの船内で俺は頭を掻きむしりながら叫ぶ。でもロー、引いては……なかったよな? うん、大丈夫だったはず。
「ふー……取り乱すのはこのくらいにしておくか」
俺は船の中にある電伝虫の受話器を取り、番号を打ち込む。
しばらくして、相手が電話に出た。
『誰だ、この番号を知っているのは限られた人間のはずだが』
「……お久しぶりです、社長。俺です、エメリヒ、もといジェイデンです」
俺が名乗ると、受話器の向こうの相手――クロコダイルは驚いたように息を呑んだ。
そして小さくため息を吐いてから再び声を発した。
『何の用だ。お前からかけてくるなんて』
「少し、協力していただきたくて」
俺はこれからやろうとしていることを簡単に説明してから、ある人物の名を口にする。
その名を聞いた瞬間に、今度は大きく舌打ちをした音が聞こえてきた。俺は思わず苦笑いを浮かべてしまう。まぁ、そりゃあそうだよな。
『何故お前がその情報を集めている?』
「大切な友人のためですかね」
しばしの沈黙の後、クロコダイルは俺に協力することを了承した。テメェじゃなきゃ砂にしてる。とのお言葉も頂いた。3年間バロックワークスで真面目に頑張っててよかったデース……。
『そのままテメェは今から言う場所で待ってろ、3日後に合流する』
「わかりました」
俺はクロコダイルに指定された場所をメモ帳に書き留めて通話を切る。
これで俺が単独で頑張るよりは情報が集まりやすいだろう。2年後、物語が新世界に入ってからの知識、俺あんまりないからな。情報は多いに越したことはない。
俺は軽く伸びをして、それから気合を入れなおすために己の頬を叩いた。