注意
キャラ崩壊、モブが喋る、何でも許せる方向け。晒し行為はお控えください。
リクエスト頂いた、恋人に対しては激甘なruさんを書いたつもりですが、それ程甘々してないし、どっちかって言うと周りに冷た過ぎて比較的甘く感じるって感じになっちゃいました。
最初に頭に思い浮かんだのはriくんの言うことに全部 そうやね。って軽く笑いながら肯定する姿だったんですけど、話には盛り込めませんでした。
rumnかruriとの事でしたので、今回はruriにしました。 解釈違いだったら申し訳ない。
とある昼下がり、ヒーロー本部内を歩いていると 角に差し掛かった時、通路の隙間から青の羽織がなびくのを見た。
「お、お疲れ様です! 白狼様!」
ピンと背筋を伸ばして、通路に響く程の声をあげた。けれど、白狼事小柳は一瞥もくれず、そのまま歩みを進める。
しかし、ここで押し負けてはいけないと噤んだ口を開いて声をあげた。
「…あっあの! よろしければ剣術の稽古をっ…!」
前を歩く彼を追いかけるように肩に手を伸ばした。後少しで触れると言った所で、彼が振り返り、鋭く刺されるような眼で睨まれその手は止まる。
固まったように動かなくなった自分を見て、フンと鼻を鳴らした。
「失せろ。」
冷たく端的にそう発すると、再び歩み出す。足はもう一歩も動かなかった。
「可哀想やない?さっきの人。」
いつからか、隣に立っていたカゲツが声を掛ける。小柳は立ち止まって眉間にシワを寄せた顔を向けた。
「…知ったこっちゃないな。」
興味など無いと頭を振って腕を組む。カゲツはふーん…と呟いて、まぁ確かに。と髪をいじりながら言う。
「あれでしょ、伊波に稽古つけとるとこ見られて 最近自分もしてって言う奴ら増えたんやろ。」
そう問えば、小柳は返事の代わりにはぁと大きく溜息を吐いた。
「してやったら?どうせ暇やろ。」
「………才能無い奴に教えた所で、意味が無いだろ。」
相変わらず人嫌いなのか、初対面から完全拒否だ。西の人外って、どいつもこいつも面倒くさい性格をしている。
まぁ、でも 今ここで一人の要求を承諾すると、もっと稽古をしてくれと言う人が増えていくかもしれない。それを加味すれば、小柳の判断も正しい物と言えるだろう。カゲツは顎に手を当て、ほわほわと考えていた。
瞬間、ふと小柳の眉がピクリとあがった。カゲツはどうしたのかと、小柳の目線の先を向く。
エントランスの方、真ん中当たりに伊波が突っ立っていた。きょろきょろと当たりを見渡していて、何か探しているのかとカゲツは首を傾げた。すると、伊波もこちらに気づいたのか急ぎ足で向かってくる。
「やっと見つけた! 物渡すだけでこんな手間かかるなんて…。」
走ってきた伊波は小柳の前に立つと、手にした茶封筒をパンパンと軽く叩いた。
「あれ、カゲツもいんじゃん。」
「お疲れ。 なんか大変そうやね。」
小柳の背中にいたカゲツに気づいた伊波は、そうなんだよぉーと眉をひそめる。
「どっかの白狼がさぁ、ずっと断ってる任務があるらしくて、依頼してる側もずっと依頼してくるもんだから早く受けて解決して来いって。」
じとっと小柳を睨みながらそう言う。伊波はそれにっ!ともっと声を大きくしてぐっと前のめりになる。
「1番意味わかんないのがさぁ! オレから言えば絶対受けるとか、適当言われて押し付けられたんだよね。素直に本人に会うの怖いって言えばいいのにさ。」
「……へぇー」
先程まで無表情だった小柳の口角が少しあがる。
「生意気な事を言う奴もいたもんだな。」
「だよね~。」
言葉の節々から微かな殺気が漏れでいる。カゲツは顔を顰めたが、伊波は冗談だと思っているのかヘラヘラと笑っていた。
一通り笑った伊波はふいに、茶封筒を小柳の胸に押し付ける。
「まぁ、とくにかく。なんでずっと断ってんのか知んないけど、オレもついてってやるからさ。一緒に行こ。」
そう軽く微笑む。小柳は目を見開いて、押しつけられた茶封筒を恐る恐る掴む。
伊波はめいいっぱい笑って、茶封筒から手を離した。
暫く唖然としていた小柳だが、顔を背け軽く微笑む。
「…しゃーないな。折角二人きりなれる機会なん ……」
「あっ、カゲツも一緒に来る?」
なんて言われれば、直ぐ様小柳は振り返りカゲツを睨んだ。獲物を狩るような、ガン開いた目、思わず肩が飛び跳ねる。
「えあっ!? あっ、いや…僕はぁ……その日は他に任務あるし……ごめんっ!」
一歩引いたと思えば白い煙がボンッと現れ、カゲツは姿を消す。
「……まだ日程言ってないんだけどな。」
忙しいのかもね。と上目遣いでこちらに笑いかける。そろそろ、伊波には鈍感にも度がある事を知ってほしいが。溜息をはいた後、小柳は満更でもなさそうな顔をした。
今日は前に約束した小柳との共同任務の日。辺鄙な集落へ向かう為、移動手段の提供を申請しに本部の人に書類を届けに行っていた。届け終わった矢先、ガタイの良い大男に壁ドンされた。ちらちらと男の顔と真横の手の平を見比べては、額に汗が流れる。壁めり込んでんだけど、怖。
「……つまり、ロウに丸っ切り相手にされないから、オレがロウにお前の稽古を頼んで来いって事?」
「白狼様だ。」
「………」
図体の割には 臆病なのか、少し睨まれたぐらいでそんなに怯えるなんて。
壁ドンされた時よりは恐怖心は薄れる。ただ、今はデバイスもオトモも会議室に置いてきたままだ。多分、今タイマン張れば絶対負ける。しかし、伊波には相手の要求を飲むつもりは一切なかった。
「ごめんけど、自分の事は自分でやりなよ。それに、相手にされないのは、お前に剣の才能が無いんじゃない?」
少し嘲笑って告げれば、バンッ!!と真横にあった手の平を拳に変えて壁を先程よりもへこます。咄嗟に腕で顔を覆い、破片が腕を弾いた。
「………剣じゃなくて拳の方が ―」
「黙れッ!!」
唾が飛んだ。
「そもそもっ、なんでお前のような奴が 白狼様の傍にいられるんだッ!?」
そんなことを今更言われたって、特に答えようもない。ディティカの人選をしたのは上層部だ、そこに伊波はなんの関与もしていない。
「ただの研究者かぶれの一般人がッ!本当は、俺が彼の隣に立つ筈だったのに…!!」
「出来っこないよ。」
べっと舌をだして挑発した。悪い癖だ、相手を怒らせれば痛い目を合うのは自分なのに、負けず嫌いで、どうしても張り合ってしまう。
男は顔を赤くさせて、拳を握りしめ 振りかざした。無意識的に目を瞑り、もう一度腕で顔を覆う。
来るだろう衝撃に備えるが、中々それは来ない。恐る恐る目を開けると、男の拳は既の所で止まっていた。
「こやっ……なぎ…」
隣を見れば、男の腕を掴みギチギチと音を立てている小柳の姿が見えた。助けに来てくれたという嬉しさから名前を呼ぼうとしたが、あまりの顔面の圧に尻すぼむ。
骨の軋む音はだんだん大きくなり、男は苦しんだ声をあげた。男の腕を持ち上げて、身体ごと廊下へ放り投げる。腹に一発蹴りをいれて、男は尻もちをつく。
「失せろ。 二度と俺の前に顔を見せるな。」
そう思いっ切り睨んでやれば、男はおいそれと逃げて行く。
「ありがとね。」
後ろからそう声を掛けると、覇気のなくなった顔を向けられた。
「もうちょっとで顔面にこぶが出来るとこだった。」
ヘラヘラとしながら頬を指差す。小柳はあまりいい顔をしなかった。数歩こちらに近づいてきて、額に手の平を置くと前髪を持ち上げられオールバックにされる。
「怖かったんだろ。」
「な訳。」
間髪入れず答える。ちょろんと手の平に収まらない前髪が視界端に浮かんだ。
「俺が来た時は大層嬉しそうだったけど。」
「…誰だってヒーローが助けに来たら嬉しいもんでしょ。」
「はっ、そうだな。」
軽く微笑むと、伊波の頭を乱雑に撫でた。だから怖くなかったって。と伊波は小柳の手を払い除ける。ので、行き場の無い手は後頭部に添えられた。
「なんだと思ってる?オレの事。」
「まだガキ。」
「お爺ちゃんから見ればそうかもねっ!」
お爺ちゃん、と言うワードが癪に触ったのかパチンッと無言でデコピンされた。軽い物だが、ヒリヒリと痛む額を抑えて負けじと伊波は小柳を指さした。
「やーい、効いてやんの。」
「コイツっ…前言撤回、クソガキだわ。」
やんや やんやしていると、スマホのアラームが鳴り、任務開始時間を告げている。
「時間だ。 本部前に車用意してくれるらしいよ。」
「なら、早く行くぞ。」
踵を返して、小柳は出口へ向かう。が、急に振り返った。
「そういや、これ。」
ほらよ。と投げられた物を受け取る。手の内の物を見ると、それはヒーローデバイスだった。
「忘れ物だ。」
「……珍しく気が利くじゃん。」
「一言余計なんだよ。」
伊波はクスクス笑いながら、小柳の隣に並ぶ。小柳に対して、こんな軽口を叩いても、我儘を言っても、挑発的な態度よとっても、笑って許して貰えるのは伊波だけで、小柳が普段の言動からは信じれない程過保護になるのも伊波だけだ。
コメント
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めちゃめちゃいい...!クソガキいなみそ可愛い...