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「俺は出るべきやと思う。」
濱田の言葉に意見は割れる事はなかった。
「そやな…俺らのお客さんもおるし…」
神山の言葉に藤井も頷く。
「三人でとなると、歌のパートも決め治さないかんな…。スタッフさんに言うてくるわ…」
藤井が立ち上がり、控室から出ようとした時、「あ…流星…っ」と濱田の声がかかる。
「へ?」
「なんか知らんけど、照史が“絶対に誰にも言うなよ”って。」
「……。」
黙りこくる藤井。
「何のこと?流星にだけ?」
神山が藤井の顔を見る。
「照史の弱味でも握ったん?」
小瀧の言葉に藤井は「お…おぅ…、照史が弁当二つ食ってた話しなっ」というと、神山と小瀧は笑った。「またかよ!!」「食いすぎやろ」「照史らしいな」と笑った。
「…」
藤井はゆっくりと控室を出て、扉を閉めた。炎天下の日差しに焼かれる。
ギュッと目を閉じた。
あの時、鉄の柱が二人に向かって降りかかった時、藤井は桐山の後ろについていた。
『シゲ!!!!』
桐山の声に全員がこっちを向いたけれど、一人だけはこっちを見てなかった。
淳太だった。
彼はテントの骨組みに背中からぶつかった重岡が転倒した瞬間に庇うように彼に覆いかぶさったのだ。
そんな中間の頭に容赦なくテントの骨組みは降り注いだ。
あの時…
『淳太!!!』
中間の叫んだのは全てを見ていた藤井だった。
「…そんなん…」
『淳太!!!淳太!!!』
シゲの泣き叫ぶ声、小瀧の真っ青な顔…桐山の手にまで沁みこむ中間の血。
「―――言わへんし…」
(言われへんし…)
まるで全てが映画みたいで、カットがかかればいいのになんて…
全部見てるだけで…遠すぎて何も出来なくて…
「しんどいって…」
重岡は気づいているのだろうか…
自分が庇われたという事を…
「…しんどいって…」
(アイツ…)
『やから、フェスは出る事にした…。』
濱田の電話に桐山は「そうか、そうしてくれ…」と小さく言う。桐山の視界の端には重岡が項垂れた様に病院の長椅子に座っている。
『淳太、どうなん?』
濱田の言葉に桐山は「今、手術してもろてる…、どっちみち傷口縫わなあかんで」と、答える。
『意識戻ったん?』
濱田の言葉に、桐山は重岡に聞かれないようにその場を離れた。
「いや…、俺らが病院ついても、あのままで…。」
『そうか…、やっぱ…無理かもしらん…』
「は?何言うてるん?!」
中間の事かと思いこんだ桐山が声を荒げる。
『いや、ちゃうねん…。スタッフさんがな…、一人いないだけやったら分かるけど、四人おらんのはキツイんちゃうかって…』
藤井が聞いていた答えはコレだった。出るなら最低、桐山と重岡を入れた6人じゃないといけないという。
「そやろな…、さすがに。」
『うん…欠場するか?そんな状態じゃ、無理やろ…。特にシゲは淳太の傍から離れへんて。』
桐山は右肩を壁に押し付け、押し黙った。
「…」
『照史?』
「…いや…。」
ゆっくり桐山が顔を上げた。
「俺が連れてく。」
「照史なんて?」
神山の言葉に濱田は切った携帯を握りしめ、少しだけ小さく言った。
「シゲ連れてくるって。」
「マジか…、絶対荒れるって…」
小瀧の言葉に神山は目線だけで彼を見て肯定した。
「絶対、照史だってシゲを淳太の傍におらせてやりたいやろーでな…」
神山がポツンと言った。
「何より照史が一番淳太の傍におりたいやろ…」
シンメの二人はBADとして苦楽を共にしているのだ。
「まぁ…まぁな?ここは照史に任せよや…」
濱田の言葉に神山と小瀧は静かに俯いた。
「俺、たまに…シンドなるねん…照史見てて。」
静寂を破ったのは藤井の驚きの言葉だった。
「お兄ちゃんチームや、ゆうたかて照史は一番年下やん。なんであそこまで出来るんやろって…」
藤井の言葉に全員押し黙った空気が辛くなったのか小瀧が濱田に笑いながら言った。
「あ、気にせんでええで?濱ちゃん、俺はその感じ好きやで?その、もわわわわんってした感じがええねん!!」
「待って…全然気にしてなかったのに、気になってしもたし、刺さったわ、今の…。」
濱田が胸を抑える演技をするから小瀧は笑いながら「その感じが、ええんや、濱ちゃんは。」と笑う。
「つか、もわわわわんってなんなん?」
「その…その感じヨ。もわわわわんって…」
「解らへんねん…」
二人のコントを尻目に藤井消え入りそうな声で「ごめん…変な事言うたわ…」と控室から出て行った。
「…」
神山はその様子を目で追い、取ってつけたような笑顔で小瀧と濱田のやり取りを見ていた。
コメント
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如月風佳さん、第3話読ませていただきました。桐山さんが「俺が連れてく」と決めたシーン、胸が熱くなりました…。あの時何もできなかった藤井さんの苦しさも、自分を責めてる重岡さんの姿も、それぞれの思いが丁寧に描かれていて引き込まれました。シンメの絆、チームの空気感が本当に伝わってきます。続きが気になります!