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「重岡さん、何か飲み物…飲んでください…」
マネージャーは泣きじゃくっていた重岡にスポーツ飲料を渡すが、彼は首を横に振った。
そこに桐山がやってきて、重岡のシャツの襟元を引っ掴むと、「行くぞ。」と言いながら手術室に背を向けて歩き出す。
「どこ行くん!!!いやや!!!俺はここにおる!!!」
どれだけ泣いても重岡の涙は枯れず、頬を濡らし続ける。
「淳太の傍におる!!! 離せって!!!」
言い切る重岡に桐山はシャツから手を離す。座り込んだ重岡の胸ぐらを掴み上げた。
「お前!ええ加減にせえよ!!!」
桐山の声にマネージャーの肩の方が跳ねた。
「仕事や!!! 俺らが此処におってもなんも出来やん!!! こんな事なって、俺らがフェスに出えへんだことが分かったら、淳太君にとってそっちの方が辛いって解らんのか!!!」
重岡の嗚咽と鼻を啜る音が周囲に響く。
(“淳太くん”…か…)
マネージャーは桐山の言葉を自分の中で反芻していた、何度も“淳太”と呼んでいた桐山がこの期に及んで“淳太くん”というのは重岡と同じ立場(中間より年下)にいるという事を表しているのだろう。お兄ちゃんチームとしてではなく、年の近い友人としての言葉なのだ。
「なぁ!!お前WEST.やろ!!! 他のメンバーがやりたいゆーてんねん!!やるべきやおもてんねん!!! お前は…!―――センターのお前は!! それに“手ぇ貸さへんのか”!!! しっかりせぇ!!!」
桐山の言葉に重岡は唇を引き締めるが、再び情けない顔で泣きだす。
「マネージャーさん…。淳太の事、頼みます…。――俺が運転して会場まで行きます。」
「…はい。」
「何かあったら、すぐ連絡ください。」
「はい!」
マネージャーのその声を聞き、桐山は重岡の手を引き、手術室の前から病院の出口へと向かって言った。
「…。―――。…」
泣き止まない重岡を助手席に乗せ、桐山は黙って運転していた。けれどハンドルを持つ右手の指が信号で止まるたび忙しなく動いた。
「…さっきは悪かったな…、言い過ぎたわ…。」
小さく言う桐山に重岡は首を横に振るう。本来の自分であれば笑いながら『大丈夫や、淳太君なら大丈夫やで…』と言えていたと思う。そう考えると、自分も本当に冷静な状態ではないのだ。ほとんど八つ当たりなのではないかと思えて来て、「ごめんな…」と謝ろうとした時に、小さく重岡から謝罪の声が聞こえ、言葉を飲み込んだ。
「ごめ…。俺…っほんま…、こんな事になるなんて思わへんて。」
「思ってやってたら、どついとるわ。」
ハハッと笑って答えられた。
「ちょっと、ちょけすぎやったけどな…、お前に怪我がなくてよかったやん。」
やれやれという感じに重岡に言うと
「…淳太が、庇ってくれたから…」
その言葉を聞いた瞬間、桐山の体から血の気が引いた気がした。コイツ、知って…
「なんで…こんな事になってんやろ…、俺が淳太をからかわへんだら…こんな事にならへんだのに…むしろ―――俺がおらへんだら…」
その言葉を脳が理解するより早く桐山は左手をうな垂れた重岡の頭に置いて自分に引き寄せた。運転中だが構わない。
「やめろや…そんな事言うな。―――そんなことない。そんなことないって…」
左肩に引き寄せた重岡の額がくつっくと、彼は子供みたいに泣きだした。
「泣くな、ホラ。」
信号で止まって手で涙を拭ってやる。両手で重岡の頬を包む。
「そない泣くと声出んぞ?フェスやで?今日は…?な?楽しみにしとったんやろ?」
涙を拭われた重岡は涙を堪え、プハッと笑った。
「ついたら、みんなおる。―――大丈夫や。」
コメント
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第4話、読み終えました。桐山さんが重岡さんを叱咤するシーン、すごく胸に響きました。「お前WEST.やろ!」の一言に、グループとしての結束と責任、そしてメンバーへの信頼が詰まっていて…。叱りながらも途中で「言い過ぎた」と謝る繊細さ、運転中に泣く重岡さんを引き寄せる優しさ、そのギャップが桐山さんらしくて泣けました。重岡さんの「俺がおらへんだら…」という自責の言葉も切なくて。最後の「大丈夫や」に希望を感じました。次が気になります!