『』叶
「」葛葉
叶side
『っごほっ』
最悪。絶対風邪引いた。収録中からなんかしんどいと思っていたけど、今になって咳出てきたし、寒気もするからたぶん熱もあるんだろう。
・・葛葉にうつさないようにしないと。
こんな時でも葛葉の心配をしてしまう自分に呆れる。帰り道のコンビニになんとか立ち寄り、冷えピタだけ買って帰る。
ガチャ
葛葉はまだ帰ってきてないようだ、よかった。
キッチンから水のペットボトルを数本持ち、薬を飲んで自室のソファベッドに横になる。
身体は熱く、冷えピタを貼っているのにすぐぬるくなってしまう。僕は無理矢理目を閉じた。
葛葉side
「たでぃーまー」
玄関の明かりはついているから叶がいると思って声を出す。が、返事は返ってこない。
あいつ、寝てんのか?まだ18時だけど。
電気のついていない叶の自室の前を通りリビングに行く。リビングは電気が着いておらず、叶もいない。が、テーブルの上にいつもは置いていない薬箱が蓋を開けたまま置きっぱなしになっている。
もう一度叶の部屋の前に来る。
ドアに耳をつけてみると、『ごほっごほごほっ』と咳が聞こえる。
・・なるほどな。
俺はもう一度上着を着てドアをノックする。
「叶ー?」
声をかけると
『あ、おかえり』
掠れた声で返事をする叶。
「コンビニ行くけど欲しーもんある?」
『・・僕風邪引いたっぽい』
「知ってる。だから聞いてんの」
『えっ・・じゃあ、ポカリ、、』
「わかった、あとは?なんか食えそーなもんあるか?」
『・・うーん、、冷たいやつならいけるかも』
「おけ、あとお前ちゃんとベッドで寝ろ、俺が帰ってくるまでに移動しとけ、わかった?」
『でも、、』
「うるさい、わかった?」
『・・はい』
叶side
ガチャ
葛葉が出かけて行った。僕が風邪引いてるのなんでわかったんだ?
とりあえずコンビニからなんてすぐ帰ってくるから移動しよう、怒られそうだし。
僕は自身の上に掛けていた毛布を手に持ち、水と冷えピタも持ってマスクをし、よたよたと2人の寝室に移動する。
葛葉のエリアに侵入しないように少し遠慮気味にベッドに潜る。
・・寝心地いいな、やっぱりこのベッドにして良かった。
そんなことを考えながら目を瞑る。
葛葉side
コンビニにつき、叶に頼まれたポカリの大きいのと小さいのを何本かカゴにいれる。
「・・あと冷たいやつ、、」
ボソッと声に出しながら喉が痛くても食べられそうなゼリーやプリン、アイスなどを次々とカゴに入れ、ついでに自分のアイスとお菓子も買ってレジに行く。ぱんぱんなビニール袋を持ちながら帰路に着く。
ガチャ
俺はマスクをしたまま寝室のドアをノックするが、返事は返ってこない。寝ているのだろう。
「叶ー?入るぞ?」
小さな声で言いながらドアを開ける。
マスクをした叶がベッドのずいぶん端っこの方で小さく毛布に丸まって寝息を立てている。
額に汗をかき、冷えピタが半分剥がれているが気づいていないようだ。
叶を起こさないようにそーっと半分剥がれている冷えピタをとり、濡らしたタオルで額をふく。どちらかというと眠りの浅い叶がこれで起きないとなると、よっぽどしんどいのだろう。
新しい冷えピタをそーっとおでこに貼る。流石に冷たさで起きたらしく、
『んぅ、、あ、葛葉、、』
と目を開けた。
「しゃべんなくていいって。ポカリ飲むか?」
『・・ありがと、ごめん葛葉』
「なんもごめんじゃないだろ。ポカリここに置いとくから。あと色々買ってきたから、食べれそうになったらLINEして。俺あっちの部屋にいるから。」
そう言って叶の頭を撫でる。めちゃくちゃ熱い。
叶は熱に浮かされているからか、やや涙目で俺を見て『ありがとう、もうちょっと寝るわ』という。
「おやすみ、もうちょいしたら俺配信するけど、気にせずLINEしろよ」
『・・うん、わかった、ごめん葛葉』
「あとお前、謝りすぎ。ごめん禁止。」
『ごm、、わかった。』
「ふはっ、、お前どんだけだよ」
そう言い俺は寝室を出る。
叶side
葛葉に看病されて薬も効いてきたのかだんだん眠くなり目を閉じる。
(数時間後)
『・・ん』
暗い部屋の中で目を覚ます。おでこの冷えピタはぬるくなり、起き上がって新しいのにつけかえる。葛葉が持ってきてくれたポカリに手を伸ばし飲む。
・・ちょっとおなかすいたな
部屋から出ようと思ったが、葛葉が連絡しろと言っていたことや、勝手に動いたら後でぶーぶー言われそうで、もう一度ベッドに横になる。
アプリを開くと葛葉は当然配信中だ。
配信中の葛葉はとても楽しそうでプレイも調子いいようだ。
・・もうちょっと後でにしよう。
そう思い、葛葉の配信を見る。
1時間ほどそうしていただろうか。
さすがに何か口にしたくなり、葛葉にLINEする。
『配信終わったら、なんか食べたいかも』
そう葛葉に連絡し、また葛葉の配信画面に戻る。画面上の葛葉はテンション高くいつも通りプレイしている。
『・・うーま、いまの』
つい声が出てしまう。今日の葛葉は絶好調でこちらが見てても気持ちがいい。
「いやーーーなんか今日俺うめぇわ!!味方も強かったしなーー!めちゃくちゃ機嫌いいわ今www」
楽しそうに話す葛葉。
「もー1戦いくかー、どーしよーー、勝って終わりたい気もするし。・・あ、ちょっと1回トイレだけ行ってくるわー」
そう言い動かなくなる画面上の葛葉。
ガチャ
「何なら食べれそ?」
ドアがあき顔だけ覗き込んでくるマスクをつけた葛葉。
『・・配信終わってからでいいって言ったのに』
「よくねぇだろ、アイスとか食えそ?」
『うん、アイス食べたいかも』
「わかった、ちょい待ち」
キッチンでガサガサ音がした後、パタパタとスリッパの音を鳴らして戻ってくる葛葉。
アイスのカップとスプーンを持ち、部屋に入ってくる。
「・・お前、配信見てんの」
僕のスマホの画面を見て固まる葛葉。
『うん、お前めっちゃ今日上手いじゃん、見てて気持ちーわ』
「・・だろぉ?!今日調子いーわほんと」
ニコニコしながら答える葛葉。可愛い。
『葛葉、配信戻らないと。ありがとね、わざわざ』
「あーたしかに。」
葛葉はお互いのマスク越しに僕の唇にキスをし、頭を撫でる。
なんだかいつもの葛葉じゃないみたいで、熱とは別にまた顔が熱くなる。
『え、、あ、なんで、、えぇ』
わかりやすく語彙力が無くなる僕を見て満足そうに笑いながら
「じゃ、もー1戦してくるわ」
と言い部屋を出ていく葛葉。
葛葉が出ていった後も僕はしばらくぼけっとしていたが、アイスの存在を思い出し、あわてて起き上がって少し溶け始めているアイスを口にする。するすると喉を通る冷たいアイスが美味しい。
配信に戻った葛葉はまた楽しそうにゲームを続けている。僕はアイスを食べ、ポカリもしっかり飲んでまた横になる。熱はまだあるようで起き上がると少しフラフラする。
スマホを伏せ、葛葉の声だけ聞こえる様にしてまた目を閉じる。睡眠導入にはうるさすぎる葛葉の声を聞きながら、気がつくとまた眠ってしまっていた。
葛葉side
配信も終わり、自室を出て寝室に行く。ノックしたが返事がないのでまだ寝ているのだろう。
あいつ、アイス食ったかな。てかもうすぐまた薬飲まないとじゃね。
そう思い、リビングの薬箱から風邪薬をとり、静かに寝室のドアを開ける。
叶は行儀よく仰向けでスースー寝息を立てている。サイドテーブルに薬を置いて寝室を出る。
シャワーを浴びながらふと、今日どこで寝るか考える。叶の体調を考えればあいつ1人で寝かせた方がいいだろう、じゃあ俺は部屋のベッドで寝るか、、
服を着替えながら、ふと思いつく。
・・あいつも着替えねーと。
あれだけ汗もかいていたのだ、着替えないと汗が冷えて良くないとか聞いたことあるし。
あわてて叶の部屋着を持ち、寝室に戻る。
ドアを開けると叶は起きており、
『あ、葛葉、薬ありがと』
という。
「お前、着替えねーと」
そう言い持ってきた服を渡す。
『あ、そうか、結構汗かいちゃった』
その場で上のトレーナーを脱ぎ始める叶。両手で裾を持ち、上に上げて頭をくぐらせようとしているが髪のゴムでひっかかっているのか上手く通らず、うんうん唸っている。
『・・くずはたすけて、、』
「わかったわかったww」
俺は笑いながらトレーナーを引っ張ってやる。スポッと頭がぬけてボサボサ頭の叶が出てくる。
叶side
着替えをまじまじと葛葉に見られており、なんだか恥ずかしい。
・・そういえば今日葛葉どこで寝るんだろ。
ふと思い口に出す。
『葛葉今日どこで寝るの?』
「あー、部屋のベッドかな」
『え、でもあれ寝心地悪いって言ってたのに、、』
「でもお前は1人で寝たほうがいいだろ、別に一晩くらいあそこでも大丈夫っしょ」
『えーでも、僕が部屋のソファで寝るよ』
「それは1番意味わからん」
『いや、あー、、でもそうか、うつしちゃうしなぁ、うーん』
一瞬一緒に寝れないかなとも思ったが、よく考えたら葛葉にうつすのが1番嫌なのに、僕は何を考えているんだと自分に呆れる。
葛葉はしばらく黙って考えていたが、急に口を開く。
「・・お前がいいなら、俺もここで寝る」
『えっ、、うつっちゃうよ、、』
「うつるなら、すでにうつってるだろ」
『・・そうかなぁ。・・でも僕一緒に寝たかったから嬉しい』
僕が笑うと葛葉は「しゃーねーな」と笑いながらマスクをつけて横になる。
「・・お前端に寄りすぎじゃね?」
『葛葉にうつしたくないもん』
「いや、お前、ベッドの一辺みたいになってるけど」
『いいんだよこれで』
「落ちそうだけど」
『大丈夫だよ』
「さすがにもうちょいこっち来いよ」
『じゃあちょっとだけ』
そう言い僕は数センチだけ真ん中に寄る。
「ほぼ変わってねーじゃんww」
葛葉は笑いながら毛布ごと僕を自身の方に引き寄せる。
『・・これじゃあいつもと一緒じゃん』
「これでいいだろ、マスクしてるしへーきだろ」
『・・もう。ハグはしないからね。』
「別にしてくれって言ってねーし」
そう言いながら僕の毛布の中に葛葉の手が伸びてきて僕の手を握る。
「これは大丈夫だろ」
『・・葛葉って結構僕のこと好きだよね』
「・・悪いかよ」
『ううん、嬉しい』
そう言い僕も葛葉の手を握り返す。
お互い上を向いているが、手から葛葉の体温が伝わり不思議と安心する。
『おやすみ』
「おやすみ」
僕らは眠りに落ちた。
(翌朝)
『・・うーーん』
目を覚ますとだるさも熱感も無くなり、体が軽い。
『葛葉、僕治ったっぽい!・・葛葉?』
横を見るとなにやらハァハァ言っている葛葉。
「・・うつったっぽい」
『・・・』
ピピッ
38.4度
『・・・』
「・・・」
『葛葉、ポカリと薬持ってくるわ』
「・・頼むわ」
おしまい
コメント
3件
最高に大好きです;;;;