今回はファンタジー色の強いお話になっています。
「」葛葉
『』叶
叶side
もうすぐ葛葉の誕生日だ。今年はどうしよう。僕の誕生日はいろいろと準備してくれてたし、僕も何かしないと。
何か欲しいものとかあるかな、葛葉が帰ってきたら聞いてみよう。
(葛葉帰宅)
『あ、おかえりー』
「たでぃーまー」
『葛葉さぁ』
「ん?」
『もうすぐお前の誕生日じゃん。何か欲しいものとかある?』
「・・あーそれなんだけど、、」
葛葉は少し下を向いて俯く。
『・・葛葉?』
「なんか家族が1回顔見せろってうるさくて」
『家族って、、あ、魔族の??』
「そ」
『えっじゃあ葛葉魔界に帰っちゃうの?』
「いやちょっとだけな、なんかパーティーするとか言っててさ」
『・・・それは帰らないと、葛葉。ご両親もお兄さん達も会いたがってるんだよきっと。』
僕は少しだけ落ち込みながら、声色にはなんとか出さずに葛葉に言う。
・・そうか、今年は葛葉の誕生日祝えないんだ、まぁ仕方ないな。葛葉には家族がいるんだから、、、
「・・いやでもちょっと問題があって」
『問題?』
「・・魔力がねーのよ」
『魔力、、』
「魔界に帰るための魔力がなくて、帰れねぇ」
『えっ、、どうするの?』
「だからブッチしようかなって」
『いやいやいやいやダメでしょそんな!』
「でも無理だし」
『どうしたら魔力が回復するの?』
「血を飲む」
『・・・』
「・・・な?無理だろ?」
『・・くの』
「え?なんて?」
『僕の、飲んだらいいんじゃない?』
「・・はぁ?!?!お前のなんて飲めるわけねーだろ!血抜くことになるんだぞ!」
『でも全部じゃないでしょ?』
「いやまぁ、そうだけど、でも」
『いいよ、僕の使ってよ。不味かったら悪いけど。』
「いや、お前のはたぶん美味い。ってそういう話じゃなくて、お前マジで言ってんの?」
『うん、僕本気だよ。ちゃんとご家族に会った方が良いと思う。』
「・・・」
『・・・』
「・・なぁほんとにいいのか?」
『いいよ』
「・・じゃあ、お前も連れてくか、、」
『・・・え?』
「いや、お前の血飲んで俺だけ行くのなんか悪いじゃん、お前も一緒に行ったらいいかなって」
『待って待って待って、、、そもそも僕魔界で息できるの?』
「おい、魔界をなんだと思ってんだよw結構普通だぞ、なんか城とかばっかだけど」
『いや、でもその、お話とかできないし、、』
「あーそれは、大丈夫。人間界の言葉で話してもあっち行ったら勝手に翻訳されて相手に伝わるから。」
『なにその便利な機能、、、』
「けっこー堅苦しいから、嫌だったら無理はしなくていいけど」
『・・行っていいならちょっと行ってみたいよ』
「じゃあ決定な。お前今日からほうれん草生活な」
『貧血対策ねwww』
(誕生日当日)
「叶、本当に良いんだな?」
『うん、いいよ』
「ちょっといてーぞ、我慢しろ、、」
カプッ
『・・っ』
「大丈夫か?!」
『大丈夫、なんか別に痛くないや』
そう告げると葛葉は僕の首筋から吸血している。
数分そうしていただろうか。
「ふぅ、これで大丈夫。叶へーきか?」
『僕は全然大丈夫だよ。』
僕はそう言いながら葛葉に噛まれたところを鏡で見る。絵本の中の吸血鬼のように、本当に小さな刺し後が2こ僕の首筋に並んでいる。
「それじゃ、行くぞ。」
『え、行くってどこから』
「ここからに決まってんだろぉ?」
葛葉はそう言うと僕を抱き上げ、窓から夜空に飛び立つ。冬になりかけの寒空に浮いている僕達。バサッバサッと羽ばたかせながら飛んでいる葛葉。
僕はもう何が現実で何が夢なのかわからない感覚に陥っていたが、僕を抱き抱える葛葉の手が温かくて不思議と心地良い。
気づけば周りの空がさっきと打って変わって真っ暗になってゆく。
「もーすぐだから」
『えっ、あ、もう、、』
バサバサっ
トンっ
葛葉は華麗な足音で着地したかと思うと僕をふわっと降ろす。
周りを見渡すと地面は赤いが、植物のようなものも生えているし、湖みたいなものもあるし、意外と人間界と変わらないようだった。
「行くぞ、俺ん家ここだから」
そう言う葛葉の方を見ると、歴史の教科書でしか見たことないレベルの大きな城がそびえ立っていた。
『・・おまえ、、これ、家なの、、』
僕は呆気にとられて呆然と立ち尽くす。
「まぁ一応。ラグーザ家って案外でけぇのよ。」
そう言いズンズン進んでいく葛葉に慌てて着いていく。城の門の前まで来て、葛葉は
「あ、やべ」
と言いボンっと音がする。次の瞬間、僕も見たことがある魔界の正装とやらに変身していた。
そして僕をまじまじと見て、
「・・お前も変身した方がいいな」
と言い、またボンっと音がしたと思うと、僕の服装も葛葉の服装の色違いのような正装らしきものに変わっていた。
「・・似合うじゃん」
『そ、そう?』
なんだか非現実なことばかりが起きて頭がついていかない。ふと自分の体をみると、髪が腰あたりまで伸びてハーフアップのような髪型になっていることに気づく。
『髪型も変わってる、、』
「あー、こっちだと基本長いのがデフォだから」
『へ、へぇ』
「それじゃ、行くぞ。ん。」
そう言い手を差し出す葛葉。
僕は意味がわからずボケっと突っ立っていると、葛葉は僕の手を取り、エスコートするように城に入っていく。
庭園を抜けて、大きな建物の入口まで到着した時だった。
葛葉は大きく深呼吸したかと思うと、
「大変遅くなりました!アレクサンドル・ラグーザ、ただ今到着致しました!」
普段の葛葉からは考えられない声量でそう口にする。
すると中から
?「おぉ!待っておったぞ!」
「父上、お久しぶりでございます。」
?「サーシャ!遅かったじゃあないか!」
「兄上もお元気でしたか。」
?「サーシャ、人間界はどう?ちゃんとごはん食べてるみたいね、前来た時より元気そうよ。」
「母上、私は元気にしております。」
母「ところで後ろの殿方はどなた?」
「この方が私のパートナー、叶です。」
『はっ、はじめまして。叶と申します。人間界でくz、、サーシャといつも仲良くさせて頂いてます。』
父「おお!!君が叶くんか!サーシャから話は聞いておる、ずいぶんよく面倒を見てくれているようではないか。」
兄達「叶くん、サーシャとずっと一緒にいるの大変でしょう、こいつ気分屋だから。」
「兄さんっ!!」
兄達「あー悪かった、悪かったって!怒るなよサーシャ。」
家族に囲まれてニコニコ笑う葛葉。
正装もあいまって、普段のだらけた葛葉からは想像できないような姿に思わず見とれてしまう。
父「もうパーティーの準備はできておる、サーシャも来たことだ、さぁ始めよう。」
人間界では見たこともない食べ物や植物に僕は興味津々でキョロキョロする。
「叶、あんまり俺から離れるな」
『あっごめん』
「たぶん、ここの飯、お前は食えないと思う。」
『そうか、美味しそうなのに残念』
「そうか?お前の作る飯の方が100倍美味そうだぞ」
『ふふ』
僕は笑いながら花瓶に生けられた綺麗な花のようなものに手を伸ばす。
「あっ!お前っ!」
『ん?・・うわぁっ!!!』
手を近づけると花のようなものが茎を伸ばして僕の人差し指にまとわりつく。
「大丈夫か?!」
『うん、なにこれ、、』
「そいつはそーやって巻きついて、どんな奴か判定する。嫌な奴と思われたらめっちゃ締められる。」
『えっ?!』
花「・・・」シュルシュル
茎が引っ込んで僕の人差し指は解放される。
『・・なんか気にいられたみたい』
「ははっさすがだなお前」
そう言い葛葉が笑う。
2人で談笑していると、葛葉のお父さんがやってきて葛葉に話しかける。
父「サーシャ、久しぶりだから1曲踊ったらどうだ」
「いえ、父上。今日は、、」
父「遠慮するでない、今日はお前のためのパーティーだぞ」
「・・わかりました。」
そう言い、葛葉は歩き出す、、
かと思ったらくるっと振り向いて右手を僕に差し出す。
「失礼ですが、僕と踊って頂けますか?」
あまりにもその所作が綺麗すぎて僕はぼーっと見とれてしまう。
父「おお!!いいではないか!叶くん、ぜひサーシャと踊ってやってくれ。」
「いや、僕、踊りなんて、、」
そう言いかけた時、耳元で葛葉が囁く。
「大丈夫、俺の言う通りに動けばいいから、俺を助けると思って、頼む」
『・・わかりました。』
僕が葛葉の手に自分の手を重ねると、葛葉はフロアの中心まで僕をエスコートする。
曲が流れ始め、葛葉が僕の手と背中に優しく手を回し、また耳元でささやく。
「1.2.3のリズムで右、左、右に動け、それでなんとかなる」
僕は言われた通りに動かす。
・・たしかになんとなく踊れているような気がする。
「次でお前の右手を持つから回れ」
言われた通りにしていると周りから拍手が沸く。
「お前けっこー上手いじゃん」
葛葉にも褒められ、なんだか恥ずかしくなってくる。
曲が終わり真っ赤な顔の僕の手を引いて部屋の隅に寄る葛葉。
「あとは色々挨拶まわりだけして終わり。あとちょっとだから。」
そう言い、僕の手を引く葛葉。
『えっ僕も行くの?』
「あたりめーだろ」
?「お初にお目にかかります。アレクサンドル・ラグーザ様。〇✕家、次男の〇〇〇でございます。」
「こちらこそお初にお目にかかります。本日はわざわざおいで頂きありがとうございます。こちらは私のパートナー、叶です。」
『こ、こんにちは』
?「まぁなんて凛々しいお方なのでしょう。このような方を人間界でお見つけになるとは、やはり流石でございますね。」
「お褒め頂きありがとうございます。では。」
こう言った会話を10回以上繰り返し、また部屋の隅に戻ってくる僕達。
「・・あーーーー疲れた、」
『葛葉、おつかれ。でもほんとすごいね、いつもの葛葉じゃないみたい』
「もー少ししたら帰っから。あとちょっとの辛抱だから、わりーな、叶。」
『全然。僕はむしろ楽しいよ。少し緊張するけど。ていうか、葛葉もう少しこっちにいたら?せっかく久しぶりに帰ってきて、ご家族とも会ったんだしさ。』
「いや、もういいわ、息が詰まって死にそーなんだよ」
『でも昔はずっとここにいたんでしょ?』
「ガキの頃はやんちゃしててもへーきだったけど、大人になってからはこういう所作を身につけさせられるからきちーんだよ」
『なるほど』
「俺は断然人間界が良い」
『ふーん』
そんな話をしていると、パーティーもひと段落し、葛葉はまた家族に挨拶をして入口に置かれているグラスに入った赤い飲み物を口にする。
ごくごくっと一気に飲んだかと思うと、
「叶、帰るぞ」
そう言いふわっと僕を持ち上げ、城の窓から夜空へ飛び立つ。
風を切りながら羽ばたく葛葉に抱えられながら下を見ると、葛葉のご家族が窓から手を振っている。なんだか微笑ましくて僕も手を振り返してしまった。
トンっ
ガラッ
自宅の窓からまた部屋に入る。
「あーーーーつかれたぁぁぁああああ」
そう言い、ぼふっとソファに倒れ込む葛葉。
僕はまだ先程までの体験が夢のようでぼーっとしてしまう。
鏡を見ると、まだ葛葉がしてくれた変身の姿のままで、我ながらつい見とれてしまう。
ボンッ
大きな音がしたかと思うと、葛葉も僕も元々の格好に戻っていた。
「あー、解けちまった」
『ほんとだね』
「お前も気疲れしただろ?」
『いや、僕はすごく楽しかったよ、なんかもう夢の中みたいで』
「・・そんならよかったけど」
『あと葛葉が死ぬほどかっこよかった』
「・・なんだよそのいつもはかっこよくないみたいな」
そう言い、僕の膝に頭を乗せて下から少し睨む葛葉。
『かわい・・やっぱりこっちの葛葉の方がいいわ』
「・・んだよそれ」
僕は頭を下げて葛葉にちゅっと軽いキスをする。
「・・急だな」
少し赤くなる葛葉。
『あ、魔界でキスしたら良かった?』
「ちがうそういう意味じゃない」
『次行ったら覚えとこっと』
「覚えてなくていいから!」
照れる葛葉の頭をぽんぽん叩きながら笑う。
「あーーー誕生日なのに疲れて終わったわ」
『・・葛葉、僕が何も用意してないと思う?』
「えっ?!マジ?!」
『ちゃんとお前が好きなハンバーグ作ってる、あとケーキもある、プレゼントは明日一緒に買いに行こ』
「・・お前天才かよ!!!!」
『葛葉もあっちで何も食べてなかったもんね、お腹すいたでしょ』
「もーまじぺこぺこ」
『じゃああっためてくるから待ってな』
(食事中)
「うーーーーまっ!!!!うますぎだろ!!」
満面の笑みでほっぺを膨らませながらモグモグハンバーグを頬張る葛葉。
『ふふ、良かった』
「やっぱ叶のメシが1番美味いわー」
『そう?ありがと、でもなんか僕今日ほんとに素敵な体験したなー』
「・・素敵か?」
『うん、だってもう全部が現実じゃないみたいだった』
「・・んーまぁ、でも俺も叶を紹介できてよかった、かも」
『てかご家族に僕のこと言ってくれてたんだね』
「・・まぁ、ちょっとは」
葛葉side
「ふーーー食った食ったぁ!!!」
ハンバーグもケーキも食べて腹がいっぱいになる。
叶はカチャカチャと皿洗いをしている。いつも皿洗いは俺の仕事だけど、今日は誕生日だからと叶がやってくれているのだ。
歩いて叶の背中にぎゅっと抱きつく。
『ん?どしたの?』
「いや、別に。気分。」
『そっか。・・お兄さんも葛葉のこと気分屋って言ってたね』
「ほんとにあいつらはよけーなことしか言わねぇ」
『ふふ、、でもちょっと羨ましいなって思ったよ、僕にはああいう家族はいない、ていうかわからないから。』
そう呟く叶の背中が少し小さくなった気がした。俺はさらに強く抱き締めながら
「・・じゃあたまに俺ん家に行こーぜ」
『えっ』
「お前もラグーザ家を実家と思ったらいいんじゃね」
叶side
思いがけない事を言われ少し驚いたが、頭の中には最後に窓から手を振っていた葛葉の家族の姿が思い浮かぶ。
・・そういえばあの時、自分の家族でもないのに、なんか少し心があたたかくなったような気がしたんだった。
『・・そうだね、僕もたまにお邪魔させてもらおうかな』
「ん、でもたまにな、たまに。疲れるから。」
『僕結構楽しかったけど』
「なんでお前の方が疲れてねぇんだよ」
そう言い葛葉は頭をグリグリと僕の背中に押し付ける。
そうこうしているうちに洗い物も終わり、背中にいる葛葉と向き合う。
今度は正面から抱きつく葛葉。
『・・今日甘えん坊だね?』
「・・違う、疲れただけ」
『ふふ、エスコートしてくれる葛葉かっこよかったよ』
「やめろ思い出すな」
『もう僕全部覚えてるもん』
「やめろって」
『あとあのお花に気に入られたの嬉しかったな』
「あー・・・お前ダンス上手かったな」
『え、そう?』
「ん、たぶんみんな驚いてたと思う」
『いや、僕ほんとにダンスとかやったことないけど』
「ま、俺の教え方が良かったんだろうなぁ!!」
そう言い葛葉は僕を窓際に引っ張る。
月の明かりが窓から差し込み普段よりも明るく感じる。
「・・失礼ですが、僕と踊って頂けますか?」
葛葉はにやっと笑い、僕にお辞儀をしたあと手を差し出す。
『・・ええ、喜んで』
僕は葛葉の手をとりそう言う。
マンションの部屋で踊る僕たちを月の光が優しく照らしていた。
おしまい
コメント
8件
ラグーザ家に戻るユメショなんて全然なくてちょうど見て見たかったのですごくてぇてぇを感じられました!
本当に大好きです;;;; Knkz作品結構ありますけど、そん中で一番yさんの作品が好きです❕❕今回も素敵な作品をありがとうございます🙇♀️🙏
ほんとに設定神がかりすぎ!!くろのわてぇてぇ🥰🥰