テラーノベル
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プロローグ
その日、私は三十四回目の人生を迎えた。
目を覚ました瞬間、天蓋付きのベッドと、刺繍だらけのカーテンを見て、すべてを察する。
(……はいはい。知ってる知ってる)
ため息すら、もう新鮮味がない。
ここは乙女ゲーム『プリズム・クラウン』の世界。
そして私は――
ヒロインをいじめ、王子に断罪され、国外追放か処刑で終わる悪役令嬢。
名前はアイリス・フォン・ルーヴェン。
十七歳。公爵令嬢。
そして何より最悪なのは。
(今回も、また“ここ”からか……)
鏡に映る自分の顔が、やけに冷静だったことだ。
初めてこの世界に転生したときは、泣いた。
二回目は叫んだ。
五回目で絶望して、
十回目で諦めて、
二十回目を越えたあたりから、私は悟った。
――ああ、これ、逃げるゲームじゃない。
潰すゲームだ。
「お、お嬢様……ほ、本日は学園の入学式でございます……」
メイドの声は、なぜか必要以上に緊張していた。
しかも、気のせいか一歩下がっている。
(ああ……これも、知ってる)
私は反射的に手を上げた。
「え、ちょ、待って。
何もしないわよ?」
メイドはびくっと肩を跳ねさせ、勢いよく頭を下げた。
「も、申し訳ございません!」
(……してないのに謝られてる)
三十四回人生をやり直して、はっきり分かったことがある。
私はどうやら、
存在するだけで人を怯えさせる才能があるらしい。
悪役令嬢としては優秀かもしれない。
でも、人としては――正直、向いていない。
ドレスの裾を整えながら、私は小さく息を吐いた。
三十四回もやり直して、
ようやく分かったことがある。
私は、悪役令嬢に向いていない。
だから今回は、
破滅ルートを“踏まない”ことにした。
潰すべき場所は、もう知っている。
コメント
1件
これからどーなるのか楽しみにしてるッッ✨ 今回の新作もめっちゃ面白かった!!