声の余韻
通話が、
切れた。
画面が暗くなっても、
しばらく、
スマートフォンを耳元に残していた。
もう、
声は聞こえない。
それなのに、
耳の奥が、
まだ少し、
熱を持っている。
ベッドに潜り込む。
布団の中。
部屋は暗いのに、
身体だけが、
妙に温かい。
冷ますつもりで、
目を閉じる。
でも、
だめだった。
思い出してしまう。
声。
間。
言葉の選び方。
そして、
あの約束。
行ってらっしゃい、と。
おつかれさま、を。
二人だけの、
小さな取り決め。
誰にも知られない。
誰にも見えない。
それなのに、
確かに、
存在している約束。
胸の奥が、
きゅっと、
締まる。
会いたい。
そんな言葉、
まだ言っていない。
言うつもりも、
なかったはずなのに。
気づけば、
思いが、
膨らんでいる。
声を知ってしまったから。
声が、
近すぎたから。
布団の中で、
小さく息を吐く。
身体が、
少しだけ、
火照っている。
触れていない。
何もしていない。
それでも、
確かに、
熱がある。
明日。
朝になったら。
きっと、
LINEが来る。
おはよう、の代わりに。
行ってらっしゃい、が。
それを想像するだけで、
胸が、
軽くなる。
目を閉じる。
眠らなきゃ、
と思う。
でも。
朝が、
楽しみすぎて。
なかなか、
眠れなかった。






