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狐十@アイコン変えた!!
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その夜、勇斗は棚の奥から、古びた小さな箱を取り出した。中から現れたのは、繊細な細工の施された、一客のグラスだった。大事に磨かれてしまわれていたからか、長い年月を経てなお、その輝きは失われていない。
「──これ、なんですか」
「昔、大事にしてた人からもらったものでさ」
勇斗はそのグラスを、壊れ物を扱うような手つきで、そっと撫でた。その眼差しには、これまで見たことのない、静かな懐かしさが滲んでいる。
「昔って、どれくらい前ですか」
「んー、二百年くらい前かな。まだ遠くをうろうろしてた頃の話」
さらりと告げられた年月に、仁人は言葉を失った。二百年前という時間の重みが、目の前のグラス越しに、じわりと伝わってくる。自分にとっては歴史の教科書の中の話でしかない、遠い異国の遥か昔を、勇斗は確かに生きてきたのだ。
「もう、その人は、」
「とっくの昔に、亡くなってるよ。人間だったから」
さらりと告げられたその一言に、仁人の胸の奥で、何かが小さく軋んだ。嫉妬する対象ですらない、遠い過去の人物のはずだった。それなのに、勇斗がそのグラスを見つめる眼差しの優しさに、言いようのない疎外感を覚えている自分がいる。
「随分、大事にしてるんですね、そのグラス」
「うん。数少ない、形に残ってる思い出だから」
「俺のことも、そうやって、いつか思い出の品みたいに扱うつもりですか」
思わず零れた言葉に、内心で驚いた。別に責めたいわけじゃなかったし、理不尽な物言いだという自覚はあった。相手は、とうの昔に世を去った人間なのだ。それでも、口から出た棘は、止めようがなかった。
勇斗はグラスから視線を上げ、まじまじと仁人を見つめた。
「え、もしかして、妬いてる? 二百年前の人に」
「──妬いてないです、別に」
「妬いてるじゃん、めちゃくちゃ」
「違います。ただ、なんか、腹立たしいだけです」
「それを妬いてるって言うんだけど」
嬉しそうに笑う勇斗を前に、仁人は反論の言葉を失った。自分でも、この感情がどれほど筋の通らないものか、よく分かっていた。それでも、抑えが利かなかった。
「こんな大昔の話にまで妬いてくれるなんて、かわいいなぁ」
「喜ばないでください、普通に」
「いや、喜ぶでしょ、これは」
からかうように言いながら、勇斗はグラスをそっと棚に戻し、仁人のすぐ隣に立った。その距離の近さに、仁人は思わず身を引きかける。
「──なぁ、仁人くん」
「なんですか」
「その手、ちょっと貸して」
戸惑う間もなく、仁人の左手が取られる。勇斗は、その薬指の付け根を、確かめるように指先でなぞった。
「何を確かめてるんですか」
「まだ、誰の証も付いてないなって」
そう囁くように言うと、勇斗は仁人の薬指を、そっと自分の唇へと運んだ。柔らかく、けれど確かな熱を持って、そこに口づけが落とされる。すぐに、ぴりっとした軽い痛みはしる。握られている手はひんやりと冷たいのに、唇だけはやけに熱かった。
「──っ」
不意を突かれた仁人は、思わず小さく声を漏らした。慣れない接触に、体温が一気に上がっていく。勇斗は顔を上げ、悪戯っぽく目を細めた。
「──つけちゃった」
指の付け根には、うっすらと赤みを帯びた跡が残っていた。キスマークと呼ぶには控えめな、けれど確かな証だった。仁人はそれを、呆然と見つめる。
「こんなところに、痕、残さないでください」
「見えにくいところにしたつもりだけど。嫌だった?」
「……嫌とは、言ってないです」
消え入るような小さな声での答えに、勇斗は満足そうに笑った。仁人は赤くなった顔を隠すように、薬指をそっと握り込む。だが、その跡を消したいとは、不思議と思わなかった。
「これからは、俺の一番新しい思い出は、仁人くんで塗り替えていきたいなって」
その率直な言葉に、仁人は何も言い返せなかった。薬指に感じる、熱さだけが確かだった。
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このエピソードに衝撃を受け、以来るり様のお話を読み漁らせていただいている者です🙇♀️ フォロワー限定の作品も読みたいという気持ちを抑えられず、ついに本日、アカウントを作りました✨ るり様の書かれるストーリーは細部まで作り込まれていて、尚且つ言葉選びもとてもお上手で、、。M!LKへの愛が随所から伝わってきます🫶お仕事の傍らで素晴らしい作品をいくつも執筆されていて尊敬です! 私は受験生なので、るり様の作品を楽しみに冬を乗り切るつもりです!! 応援してます❤️🔥