村の夜は深く静まり返り、虫の声さえも遠くにしか聞こえなくなった。
「……元貴……?」
布団の中で震える藤澤の声。
驚きと戸惑いが入り混じりながらも、その潤んだ瞳には拒絶の色はなかった。
今まで――副作用に苦しむ藤澤を癒すとき、二人は決して“そこ”には踏み込まなかった。
吐息を受け止め、震える身体を撫で、唇を重ね、手で解きほぐす。
若井も一緒にいた夜もあったからこそ、なおさら「踏み込んではならない」と抑え込んでいた。
けれどそのたびに、大森の胸の奥で渇いた炎がじりじりと燃えていった。
「……また出たの? 副作用……」
ゆっくりと近づいた大森は、静かに問いかけた。
藤澤は首を振ろうとしたが、言葉にならない吐息がこぼれるばかりだった。
「我慢してたの?」
「……っ、だって……これ以上、迷惑かけたくない……から……」
その言葉に、大森の胸が締めつけられる。
それでもなお震える身体、潤んだ瞳、熱を持ちすぎた肌──。
(無理に我慢して、一人でこんなに……)
たまらなかった。
もう、見ていられなかった。
藤澤は大森の吐息を浴び、肩を震わせた。
「……俺、もう……大丈夫だって、言ったのに……」
そう呟く唇は震えていたが、その目は拒んでいなかった。
「違う……俺が、もう我慢できないんだ」
言葉と同時に、大森は藤澤を抱き寄せ、唇を強く重ねた。
藤澤の背が弓なりに反り、押し殺した吐息が甘く零れる。
絡み合う舌が、今までの理性を踏み越えた証のように激しく求め合う。
「んっ……あ……っ、んぅ……んっ……!」
キスが深まるたび、藤澤の声が震える。
唇を離すと、藤澤の頬は赤く染まり、汗で濡れた前髪が額に張りついていた。
「……ずっと、見てきた。涼ちゃんが乱れるのを。若井と一緒に支えながら……俺は、耐えてた。副作用を鎮めるためだって、自分に言い聞かせて……本当は、欲しくてたまらなかった」
吐息混じりの告白に、藤澤の目が潤む。
大森の手がシャツの中へと滑り込み、硬くなった胸の突起に触れた。
「や……っ、あっ、あっ、そこ……っ、弱いの……っ!」
「……ちゃんと……楽にしてやるから」
静かに押し倒す。
ベッドのシーツに指を絡め、藤澤の腰が小刻みに跳ねる。
その疼きを癒すように、大森の手と唇が這い、藤澤の欲の根源を刺激していく。
「ふっ、ぅあ……っ、や、だ……っ、元貴、そんなっ……!」
「涼ちゃん……もう一人で苦しまなくていい。俺が……全部受け止めるから」
村の人々が眠っている背後で交わす背徳的な音に、大森は胸を焼かれるような興奮を覚えた。
そして、二人は境界を越える。
初めて深く繋がった瞬間、藤澤の喉から耐えきれない声が洩れた。
「……っ……あぁぁっ!」
全身を駆け抜ける熱に震え、腕が大森の背中にしがみつく。
大森も余裕を失い、荒い吐息を藤澤の耳元に落としながら腰を動かす。
「……ぁあっ……涼ちゃん……もう、止まれないっ……!!」
「……元貴……もっと……っ、壊れるくらい……」
その囁きに、大森の理性は完全に焼き切れた。
激しさを増した動きに、藤澤の声は震え、涙がこぼれた。
抑えきれない熱がぶつかり合い、布団が軋み、夜の静寂に二人の呼吸と濡れた音が混じる。
「あっ、んっ、……あぁ……だめ……っ、もう……っ!」
喘ぎ声が絶え間なく天井へと零れた。
大森も同じく限界が近い。
「涼ちゃん……一緒に……っ!!」
互いの吐息が絡み合い、同じ瞬間に二人は絶頂を迎えた。
静かな村の夜。
外には誰も気づかぬまま、背徳と渇望に溺れる二人の吐息が重なっていった。
乱れる布団、絡む指先、互いを求め合う音が夜を震わせる。
けれど、その側で。
家の外──少しだけ開いたカーテンの隙間から。
誰かが、その光景を目撃していた。
「……涼ちゃん……?」
それは、若井だった──。
コメント
6件
まさかの若井!? 若井が見てるっていう想像は出来なかった 最後の文見て若井!?っておもってしまったw 展開が読めなくなってきた

このお話の続きが読めるなんて✨ ありがとうございます✨
これは…嫉妬ってヤツっすね…。(どの目線?) えー!尊すぎる…!関係性が…もう…尊すぎる…! 私、この作品推しになっちゃうかもしれません!っていうか、推しです! 次のお話も楽しみにしています!いつも更新ありがとうございます!&お疲れ様です!