テラーノベル
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朝の5時。
廊下には静かな足音が響いている朝なので少し薄暗く、しんみりとしていた。
俺は書類を抱え、執務室へ向かって歩いている最中だった。曲がり角を曲がった時…
「…」
目の前にはみどりがいた。一瞬だけ目が合うが、お互い気まずくて話さない。
「…」
「…」
俺は視線を逸らし、横を通り過ぎようとする。
その時、抱えていた書類が腕から滑り落ちてしまった。本当に最悪。
「……」
紙が廊下いっぱいに散らばった。
「はぁ……」
しゃがんで書類を1枚1枚拾うと、みどりも何も言わず一枚ずつ紙を拾ってくれた。
やがて、最後の一枚を拾い終え、みどりは書類を揃え、俺に渡してくれた。
「…はい」
「……ありがと」
「……最近」
不意にみどりが口を開いたので俺はびっくりして顔を上げた。
「ちゃんと寝てるノ?」
思ってもいなかった言葉だった。
「……え?」
「目の下ひどかったから…」
俺は思わず苦笑した。
「人のこと言えねぇだろ」
その言葉に、みどりも少しだけ笑った。
「……まぁね」
きょーさんがいなくなってからちゃんと交わした会話は初めてだ。
「……じゃあ」
みどりは背を向けて歩き出した。
数歩進んだところで、俺は呼び止めた。
「……みどり」
みどりは振り返らなかった。
「……ありがと」
今度の”ありがとう”は、書類を拾ってくれたことだけじゃなかった。
みどりもそれを分かっていたと思う。
「……うん」
まだ昔みたいには戻れない。きっと、すぐには戻らない。それでも。あの日から止まっていた時間はほんの少しだけ動き始めていた。
それから1ヶ月がたった。
王城の窓から、柔らかな光が差し込んでいた。総統室には、紙をめくる音が響いている。以前なら山のように積まれていた書類も、今は少しだけ減っていた。
復興はゆっくりと進んでいる。
「……ふぅ」
俺はペンを置き、窓の外を見た。
人々の笑い声が聞こえる。子どもが走り回っている。城壁も少しずつ修復され、焦げた景色は、新しい色を取り戻し始めていた。
その時。
コンコンっと、扉がノックされた。
「どうぞ」
入ってきたのはコンタミだった。
「仕事中?」
「一応」
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少しだけ笑う。
1か月前なら考えられなかった笑顔だった。コンタミは机の前まで歩いてきた。
「復興も落ち着いてきたね」
「……そうだね」
「だからさ」
「向こうの世界、行かない?」
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次回最終回
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コメント
3件

ちょっとづつ関係が修復してきてる感じが伝わって 良かったです︎︎👍次で最後なのは寂しいですが、待ってます☺️
あおいです🌷 朝の薄暗い廊下で、たった一言「ちゃんと寝てるノ?」から始まるやりとり、すごく好きです。気まずくて目も合わせられなかった二人が、書類を拾うという小さなきっかけで、少しだけ通じ合える。二度目の「ありがとう」が、書類のことだけじゃないって分かるのが胸にきました。そして1ヶ月後、コンタミさんからの「向こうの世界、行かない?」——復興が進む今だからこその選択。次回が最終回、どう決断するのか気になりますね。