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夜、トオルの家のガレージ。トオルは180SXの車高を指で測りながら、「やっぱりサス変えないとコーナーがキツイな…」と呟く。バイトで貯めたお金を数え、後藤の言葉を思い出す。「次はお前が金を貯めてこい。サスでも変えるか」。意を決したトオルは、翌日「オートガレージ・タカハシ」へ向かうことを決める。ユウジに電話で「サス買ったら一緒にC1走ろうぜ」と誘うと、ユウジは「やっと本気になってきたな!」と笑う。
週末、トオルは再び「オートガレージ・タカハシ」に足を踏み入れる。店内にはパーツが山積みで、トオルは目を輝かせながらサスペンションコーナーへ。高橋が「お、桜井じゃねえか。また何か掘り出し物探しか?」と気さくに声をかける。トオルが「そろそろサスペンションを変えようかなと…何かお勧めありますか?」と尋ねると、高橋は「高校生ならこれくらいがいいだろ」と最新モデルの高級サスペンションを勧めてくる。トオルが値札を見て「高いなぁ…でもこれなら速くなれるかな」と迷っていると、背後から低い声が響く。
「高校生相手に随分いいものを買わせるんだな、高橋」。振り返ると、そこには後藤トモノブが立っている。トオルが「後藤さん!?」と驚く中、高橋が「お前かよ、後藤! 何年ぶりだ?」と笑いながら手を挙げる。なんと二人は旧知の仲で、昔は一緒に走り屋たちの車をチューンしていた間柄だった。トオルが「知り合いだったんですか!?」と目を丸くすると、後藤は「こいつは昔から商売上手でな。高いパーツを売りつけるのが得意なんだ」と皮肉っぽく言う。
後藤はトオルと共に店内のパーツを見回り、高橋が勧めた最新サスペンションを手に取るが、「こいつは180SXには硬すぎる」と一蹴。店の奥から埃をかぶった古いサスペンションキットを見つけ出し、「これにしろ」とトオルに差し出す。高橋が「おいおい、何年前のパーツ買うんだよ。そんなんじゃ帝王になれねえぞ?」と呆れると、後藤は静かに反論する。「車との相性が大事だ。最新のパーツが必ずしもベストじゃねえ。こいつはトオルの180SXの重心とマフラーの特性に合う。素人には分からねえだろうがな」。トオルは後藤の言葉に感銘を受け、「じゃあこれにします!」と決断。
トオルは貯めたバイト代でそのサスペンションを購入し、高橋が「まぁ後藤が言うなら間違いねえか。頑張れよ、帝王目指す高校生」と笑って見送る。店を出た後、トオルが「後藤さん、なんでわざわざ来たんですか?」と聞くと、後藤は「高橋に高いパーツ売りつけられてるお前が心配だっただけだ」とぶっきらぼうに返すが、その目はどこか優しい。トオルは「ありがとうございます。一緒に帝王目指しましょうね」と笑顔を見せ、後藤は小さく頷く。
その夜、後藤の手でサスペンションが装着された180SXを、トオルはユウジと共にC1で試す。コーナリングが明らかに安定し、マフラーの音と共に車が軽やかに曲がる。「すげえ…全然違う!」と興奮するトオルに、ユウジが「これならカイトにも勝てるんじゃね?」と煽る。だがその時、赤いFD3Sが後方から迫り、カイトが軽く抜き去っていく。「まだまだだな、桜井!」と挑発する声が響き、トオルは笑いながら「次は負けない!」とアクセルを踏み込む。
トオルはガレージでサスペンションの調整跡を見ながら、「後藤さんの知識ってすごいな…。これで篠原マコトにも近づける」と呟く。後藤は自転車屋で古い工具を手に持ち、「ケンジの車を超えるなら、次はエンジンだな」と独り言のように言う。遠くの首都高の光が二人の決意を照らし、次のステップへの期待感で幕を閉じる。