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「」せりふ ()こころ
桃 side .
ドン、ドン、と玄関のドアが内側まで歪むような、暴力的な衝撃音が古い平屋を大きく揺らしていた。
『ドアを壊すぞ! なかの者は静かに抵抗をやめなさい!』
外の大人たちの焦りを含んだ怒鳴り声。
けれど、ベッドの上に重なり合う俺たちの耳には、そんなものはもう遠くの雷鳴ほどにしか響かなかった。
「らんらん……。準備、できたよ」
すちが、二つの光に反射して輝く鋭利な道具を取り出した。
「ありがと、すち。これから、本当に二人きりになれるんだね」
「うん。誰にも邪魔されない、俺らだけのセカイへ行けるよ」
俺はふふ、と喉を鳴らして笑い、すちの首に両腕を絡め、自らの唇を深く重ねた。
トマトスープの甘酸っぱさが残る口内を、すちの舌が狂おしいほどの熱量で蹂躙していく。
「ん”ぅ、……すち、っ”、あ……ッ♡」
キスを交わしながら、俺はすちの服のボタンを自ら乱暴に引きちぎり、シーツの海へと放り投げた。
すちもまた、俺の白いシャツを優しく、けれど飢えた獣のような渇望を剥き出しにして、肌から引き剥がしていく。
外では警察がドアの鍵を力ずくで壊そうと、工具の甲高い金属音を響かせている。
そんな現実の崩壊の足音を、二人はむしろ自分たちの愛を最高潮に燃え上がらせるためのファンファーレのように受け入れて、最後の、激しい肉体の衝突の中へと身を投じた。
「らんらん……! らんらん……っ! 愛してる、誰にもお前を渡さない、俺の命もらんらんのもの……っ♡」
すちが狂ったように俺の名前を呼びながら、俺の身体のいちばん奥深くへと容赦なく、深く、激しく突いてくる。
「ん””ぅ、”“ッっ、ぁ”“ッ、”っぁ、すち、すちぃ……っ♡♡」
脳の芯まで突き抜けるような、強烈な快感の衝撃。
恐怖はとうに死に絶え、全身の細胞が、すちという名の怪物を迎え入れる悦びだけで破裂しそうになる。
真っ白なシャツを乱れさせ、汗ばんだ肌を擦り合わせながら、俺は何度ものけぞり、すちの広い背中に、消えない痕をつけるように強く爪を立てた。
「はぁ、っ、おれらを引き離せる奴なんて……誰もいない、ね……っ、あ、あはっ、あぁッッ♡」
濃厚な愛液の匂いと、お互いの命を刻み込むような淫らな喘ぎ声が、狭い寝室をドロドロに満たしていく。
すちは涙を流しながら、俺を壊すほどの力で何度も最奥を突き、俺はその怪物の頭を強く抱きしめて、お互いを破滅の底へと引きずり下ろし合うように激しく腰を揺らした。
ガン、と一段と大きな衝撃音が響き、玄関のドアが半分ほど破られる音がした。
けれど、俺たちのセカイは、もう誰にも壊せない。
すぐ傍らに置かれた二つの刃物を、俺たちは濁った、けれど世界でいちばん幸福な笑顔で見つめ合いながら、最後の愛欲の波の中で、お互いの存在を激しく貪り合い続けた。
静寂を切り裂くような衝撃音が、古い平屋の空気を震わせていた。
外からの呼びかけは、もはや別世界の出来事のように遠く、二人の意識には届かない。
部屋の中に漂うのは、終わりを悟った者たちだけが共有する特異な静謐さだ。
ベッドの上で向かい合う二人の視線の先には、互いの存在を永遠に刻み込むための決意が宿っている。
手に取られた鋭利な道具が、薄暗い室内で冷たい光を放つ。
それは外界との決別を象徴し、二人だけの領域を完結させるための儀式のような意味を持っていた。
「これで、もう離れなくて済む」
震える声で交わされる言葉は、悲劇的でありながら、どこか救いを求めているようでもある。
互いの指先が触れ合い、温度を確かめ合う。
重なり合う鼓動は速く、しかし確実な足取りで破滅へと向かっている。
外では、扉を隔てた現実が崩壊の一途を辿っていた。
法と秩序を象徴する金属音が響き渡る中、おれらはその音を背景に、最後の抱擁を交わす。
汗と涙が混じり合い、白いシャツが乱れていく。
激しい感情の昂ぶりの中で、お互いの名前を呼び合う声が、狭い寝室に響いては消えていく。
その瞬間の感覚は、恐怖を超越した恍惚に近いものへと昇華されていた。
命の火花を散らすような、あまりにも短く、あまりにも激しい時間の共有。
ついに最後の障壁が破られる予兆が訪れる。
しかし、二人の瞳にはもはや絶望の色はない。互いの胸に覚悟を突き立てるその瞬間、この世で最も幸福な、そして最も残酷な笑顔が交わされた。
【っ】
episode 23. fin_
不未 No.4
7,629
コメント
4件
いや、もうく~ちゃん最高👍好き() 何を食べたらこんな尊いものが書けるん? ちょ、一旦く~ちゃんの家特定するわ(?)(しません)
🌾失っ いや~、もうね、すこぉぉぉぉぉぉ このね、文章力がすごすぎてね、今打ち上げられた魚みたくなってる(( 翠桃ぉぉぉぉぉ 好きだぁぁぁぁぁぁぁぁ ふぅ… …朝ごはん食べるか。
読了しました……いや、これはもう、凄まじい密度の一話でした。警察の破壊音が刻々と迫る中で、すちとらんらんがひたすらに「二人だけの世界」を完結させていく。現実の崩壊と愛の絶頂が完全にシンクロしていて、読んでいて心臓が掴まれるような感覚がありました。特に、刃物を「世界でいちばん幸福な笑顔で見つめ合う」ラストの構図が美しくも恐ろしくて、忘れられません。