テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#ロマンスファンタジー
百はな🍑
827
上野文
6,922
ここ
212
#探偵
橘靖竜
5,576
「リハビリ学級」という名の陸上部への強制入部を言い渡された僕は、全身の関節を鳴らしながら命からがら教室へ戻ってきた。
すでに6時間目のチャイムは鳴り終わり、放課後のチャイムが響いている。
だが、この学校の放課後は、僕の知っている「部活どうする〜?」みたいな甘酸っぱい空気とは程遠いものだった。
「サピエン! 帰宅部なんて許さねぇぞ!」
教室のドア(※午前中に破壊されたままなのでただの大きな穴)から、ドタバタと何かが雪崩れ込んできた。
見ると、派手なユニフォームを着たアザラシが、床をベチバチベチバチとものすごい音を立てながら腹ばいで猛ダッシュしてきている。摩擦熱で床が焦げそうだ。
「水泳部に入れ! 今なら入部特典でイワシが一箱つくぞ!」
「いらねぇよ! っていうか床、傷ついてんだろそれ!」
すると今度は、天井のエアコンの吹き出し口からスッと人影──いや、鳥影が降り立った。漆黒の羽毛をまとったカラスだ。学ランを羽織り、鋭い目つきで僕を睨みつける。
「サピエン……将棋部に来い。我が部の『飛車』はお前の二足歩行の機動力を求めている」
「将棋って盤の上でやるやつだよね!? 人間を駒にするタイプのデスゲーム始まろうとしてる!?」
教室内は一瞬でカオスと化した。
陸上部、水泳部、将棋部(物理)、そしてなぜか「人間観察部」を名乗るペリカンが、大きなクチバシをカパカパさせながら僕を呑み込もうと狙っている。
「おい、やめろよお前ら。サピエンが困ってんだろ」
雑音を切り裂いて、低い声が響いた。
見ると、教室の隅で優雅にバナナを皮ごとむいていたゴリラ──朝、隣の席で荒い鼻息を吹きかけてきたゴリラ・ゴリラ・ゴリラことゴリ先輩(仮)だった。
ゴリ先輩は悠々と立ち上がると、胸をポコポコと軽く叩いた。ただの威嚇のはずなのに、教室全体に微震が走る。
「サピエンは俺と『帰宅部』の頂点を目指すんだよ」
「帰宅部って頂点目指すような部活だっけ!?」
「おいサピエン、行くぞ」
ゴリ先輩はそう言うと、僕の首ぐさをひょいと猫のように持ち上げた。
「あ、ちょっと! カバン! カバン取らせて!」
「不要だ。漢(オトコ)は身一つで帰る」
僕はゴリ先輩の巨大な腕に抱えられたまま、破壊されたドアを突き抜け、廊下を爆走していった。
窓の外を見ると、グラウンドではダチョウが100m走で音速を超えようとしており、池ではウナギが優雅に水球のゴールキーパーをしていた。
……まあいいか。
今日も生きて帰れそうだし、明日はせめて、遅刻しないで学校に来よう。
コメント
1件
第4話、めっちゃ面白かったです🤍 ゴリ先輩の「帰宅部の頂点」、もうその発想が大好きです。アザラシの床ダッシュとかカラスの将棋部(物理)とか、一瞬でカオスになる教室の風景が鮮やかに浮かんできました。主人公の「まあいいか」って達観した諦観が、この世界に馴染みつつある感じでじわじわきます。明日も生きて帰れるといいね……応援してます🥀