ーこれは遥か昔の話ー
この戦場と呼ぶには相応しい場所を
作り上げたのは尊敬相手であり恋心を
抱いている主、mainだ。
依頼、としてこの場所は戦場にさせたのだが…
仕事にしては主はとても楽しそうだ。
人々の叫び声が聞こえる中1人楽しく
愉快な鼻声をあげて。
背景が無ければただの無邪気な幼女なのだろうが…
これを見てしまうと常人のなら腰が抜け、
周りと同じく叫び声をあげるのだろう。
そもそも主はあぁ見えても
中身は全くの幼女ではないしな。
「ん、どうしたんだい、実験台」
そう、俺に笑顔で話しかけ。
服装も相まって狂気の笑みにしか見えない。
のだが先ほども言った通り
俺は主に恋心を抱いている。
どう抵抗したとしても恋心は揺るがないのだ。
「いや、なんでもないぞ。」
俺はこうやって誤魔化すことしか
できないのだ。
俺のこの力
もこの恋心も全て主に作られたもの
なのだから。
「…あれ、生き残りじゃないかい? 」
「何も見えないが」
……あ?
何かモゾモゾと動いてるダンボール、?
そう気づいた時には主はもう
そのダンボールに近づいていた。
「あ、ちっさい骨型モンスター。」
「俺が処分しておくか?」
そう気を引くために言ってみたら
主は首を横にふり
「連れて帰ることにするかな、
色々と実験する。」
俺だけじゃ不満足なのか…
嫉妬、というものなのか軽く恋心が
ずっしりと重くなったような気がした。
「ほら、館へ帰るよ。」
「分かった、」
そう先ほどよりも元気なさげに
主に言う。
主は相変わらず笑顔で俺の頭を撫でた。
「元気出してよ、誰が来ようと
君が1番だよ」
…敵わないなぁ。
ー館にてー
「実験台、そこら辺の道具全部
持ってきて。」
実験中は真剣な眼差しでぐちゃぐちゃに
なった”元”敵を見つめるのだ。
そういう残虐的な一面が無ければ
普通の可愛いやつなんだが…
「よーし!実験台!あとは放置したら
僕の物だよっ!!」
ガチャン、と何処からか音が鳴った。
それに主は心当たりがあるようで
少し顔を歪ませた。
「あ、あれ?まだ洗脳されてないはず
なんだけ」
何かを言いかけた後、主は無言になり
奥へと進み始めた。
俺は何一つ理解できない、主の道具だ。
何一つ理解できないから何一つ行動なんて
出来やしない。
「なぁ、主。何してん」
「うるさいですよ、名前不明さん?」
奥は真っ暗。そこから声が聞こえ、
ガチャンと何回も音が鳴り、
硬いものに何かをぶつけているような
音が混ざり合っている。
そして小さく主の声も。
「お前さん…そんな暗いところに
行って何してんだ?」
「さぁ。それにしてもこのチビは一体?
何回殴っても蹴ってもぶつけても
微動にしないんですが」
チビ…きっと主のことだろう。
主はその時薬を飲んでいたこともあり
傷一つつかないようだ。
「チビとはなんだい、今日から僕の
メ イ ド さ ん ?」
笑顔という圧をかけているようで、
いつもの何倍も力強い声色だ。
「さて。記憶を消そうか。」
「貴方に私の記憶を?
ハッ、笑わせますね」
きっと本当に思っていたのだろう。
こんなチビに記憶を消されない、と。
その後、1時間もしないで記憶が消されて
いることも知らずに。
「…主様、主様!」
そう僕に言ってきたのは紛れもない
あの雑魚だった。
あの実験台でも僕に傷1つはつけれると
言うのに。このメイドも強くしたはず…
なのだが。
「どうしたんだい?Maid。」
「紅茶をもってきました!」
随分と元気だ。
いつこの元気が無くなるのか…
「あぁ、ありがとう。
君は気が利くね」